2話 冒険者ギルド
「小僧、お前がどうして冒険者になりたいのかは知らないが明らかに力不足だ。
冒険者になったところで直ぐに死ぬだけのやつを冒険者にするわけにはいかないんだよ」
「ま、待ってください!僕がどうして力不足ってわかるんですか。僕の力を何も見ていないでしょう」
このまま冒険者になれなかったら元の世界に戻されて事故死になってしまう。
頼むから黙って冒険者にさせてくれ。
「レベルだよ。レベルが上がれば各ステータスも上がる。レベル1なんて生まれたての赤ちゃんぐらいなもんだ。普通に生活していてもレベルは上がっていくんだからな。つまりお前は生まれてすぐに冒険者になろうとしてるのと同じなんだよ。誰が考えても力不足だ」
レベルなんて知るかよぉぉぉぉぉぉぉ
あのクソ女神それぐらい考慮しとけよ!
なんとかこの場を凌がないと転生そうそうゲームオーバーだ。
「そ、それは僕の家に代々伝わるレベル制限を行ったからです!」
「「「「「え?」」」」」
冒険者ギルドにいた俺以外の人が全員疑問符を浮かべた。
「僕の家には代々レベルが上がるのを抑える方法が受け継がれています。
その方法は親族以外には教えられませんが、そのためにレベルが上がっていないだけで体力的にはそこまで劣っていないんです!」
「そんな方法があるなんて聞いたことがないぞ。それにそもそもレベル制限をする必要がどこにあるんだ?」
「うっ、そ、それは......」
まずい、ここで言葉に詰まったら嘘だとバレる。
「確かにどのステータスを見ても成人男性ほどの数値になっています」
いつの間にかカウンターで再び腰掛け水晶を見ているリーリャが答えた。
ナイスフォローだ!
「レベル制限ではレベルは上がらないもののステータスは上昇します。レベルが低くてもステータスが低くなければ問題ないですよね!」
俺でも平均的なステータスはあるんだな。
「それは本当かリーリャ」
「はい。ステータスだけ見るといたって平均的な成人男性です」
「確かにそれなら力不足ではないが、しかし.......」
「どうしたんだお前ら。騒がしいから来てみればなんの騒ぎだ」
「ギルド長それが少し困ったことがありまして」
ギルド長と呼ばれる30代後半ほどであろうタンクトップ姿で筋骨隆々の男が奥の扉から現れ、その太い声で全員の視線を一括した。
「なるほど、そんなことがあったのか」
リーリャより説明を受けたギルド長は顎に手を当て考えるなり、ポンと掌を叩き俺を指差した。
「俺はアルフォード=メリットだ。君は冒険者に本当になりたいのか」
「はい」
「よし、リーリャ冒険者登録してやれ」
アルフォード。どうやら話のわかる奴のようだ。
「本当にいいのかいアルフォードさん」
ガルシアが反対するかのように問いかける。
「何が問題あるんだ。レベルはともあれステータスは平均程度あるんだろ?それにギルドから冒険者登録したい者の意思をおなざりにすることはできない。レベル制限のやり方にはちと興味があるがまぁそれは置いておくとしよう。ガルシア、そんなに心配ならお前が面倒見てやるんだな」
そう言い残し足早に去っていくアルフォード。
嵐のような男だ。
「アルフォードさんが言うなら仕方ねぇ。困ったことがあればいつでも俺のところにこい。本当は一緒に行動してやりたいんだが生憎これから遠出するもんでそうもいかなくてな。また2週間後には戻って来る予定だがそれまでにくたばるんじゃねぇぞ」
ガルシアは本当に俺を心配してくれているようだった。
冒険者登録を止めてくれたのも俺を本気で心配してくれるからこそだったのだろう。
ガルシアへの好感度が20上がった。
「アリルさんこの度は度重なるご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」
騒ぎは収まり皆ちりじりに去ったあとリーリャは深々と頭を下げ俺に謝罪した。
「気にしないでください。僕にも非はありますので」
というか間違いなく俺のせいだよな。
いやあのクソ女神の。
「ご好意感謝します。それでは冒険者登録を再開させていただきます。
まずはこちらをお受け取りください」
そういうとリーリャは俺の前に手のひらサイズのカードを置いた。
「こちらはギルドカードと呼ばれ、所有者の名前、レベル、冒険者ランク、貢献ポイント、各ステータスを表すものになっております」
改めてカードを見てみると確かに文字が記載されている。
アリル=ライオット
レベル1
Eランク3021位
貢献ポイント(0)
体力D- 筋力D 防御力E+ 俊敏性D 魔力C-
「ギルドカードは受付にて魔力水晶に触れていただきますと更新される仕組みになっています。
また他人のギルドカードを許可なく覗く行為は我々職員も登録時などの本人確認以外はタブーとされており、もめ事の火種になりうるのでご注意ください。
次に冒険者ランクについてです。冒険者ランクはE〜Sまで存在し、各ランクごとに順位が存在します。只今Eランクには3021名の冒険者が存在し、アリルさんは3021位となっています。Cランク以上の冒険者になられますと毎月各順位に応じて冒険者ギルドより毎月資金が支給されます。冒険者ランクを上げるには各ランクの上位10%に入る必要があります。今のアリルさんですと302位以上になりますとDランクへの昇格権利が与えられます。昇格するかしないかは本人の自由です。ここまではよろしいでしょうか」
「貢献ポイントとというのは魔物を倒したりしたら付与されるんですか?」
「説明させて頂きます。貢献ポイントとは冒険者ギルドへの貢献度に対して付与されるものです。主に依頼の達成や素材の売却によって貢献ポイントを得ることができます。貢献ポイントは依頼難易度、依頼状況、依頼達成日数、その他の要素を全て加味して決定されます。ランク内の順位は月に1度冒険者ギルド本部で行われる会議により貢献ポイント、達成依頼難易度、実力、評判など様々な要素を加味して決定されます」
Sランク1位になるには貢献ポイントも大事だが実力も必要ってことか。
「次に依頼についてです。依頼は達成することで報酬と貢献ポイントを得ることが出来ます。依頼にも難易度がE〜Sまで存在します。冒険者ランクがEランクの方はDランク以下の依頼のみ、Dランク以上の方は全ての依頼を受けることができます。依頼は冒険者ギルド入り口より向かって左側の掲示板に貼り出されていますのでそちらよりお選びいただき、こちらに依頼をお持ちください。
最後に違反行為について説明いたします。
冒険者において違反行為を犯しますと登録抹消、違約金の支払い、最悪の場合討伐隊を組み指名手配などの罰が与えられますので必ず違反しないようにお願いいたします。
違反行為は大きく分けて3つです。
1つ、他の冒険者への悪質行為。
2つ、冒険者ギルドへの敵対行為。
3つ、1ヶ月以上の活動停止。
3つ目に関しましては貢献ポイントを1以上獲得された日より1ヶ月以上の不活動の場合にのみ、登録抹消措置が取られます。事前に不活動申請をして頂ければ最大1年間の不活動が認められますので、怪我などの理由がある際にはそちらをご利用ください。
以上で説明を終了しますが何か質問はありますでしょうか?」
「大丈夫です!ありがとうございました」
これ以上説明を受けても頭がパンクしてしまう。
分からないことがあればその都度だ。
「それではアリルさん頑張って下さいね」
冒険者ギルドの受付嬢であるリーリャは優しく微笑みながら俺に言った。
これから俺の冒険者人生が始まる。
絶対にSランク1位冒険者になって屈辱を味あわせてやるから待ってろよあのクソ女神。