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七国春秋  作者: 弥生遼
浮草の夢
647/964

浮草の夢~25~

 その日一日の源冬は多忙を極めた。戦の後ということもあり、論功行賞などの様々な仕事が山積されており、その日の政務が終了したのは夕暮れ時であった。

 表宮にいる間、女のことを忘れていた源冬であったが、奥宮に戻ってくると欲情が蘇ってきた。

 「今日は公妃と共に食事をしたい。そう伝えてくれ」

 源冬は高薛に命じた。目的は紅公妃ではない。紅公妃がここに来れば秋桜も付いてくる。それが目的であった。当然ながら高薛も、そして紅公妃もそのようなことは承知している。すでに高薛から秋桜を召すことを聞かされた紅公妃は、自分が源冬に呼ばれるであろうことを予期しており、夕食を取らずにいた。間もなくして紅公妃が秋桜ともう一人の侍女を連れて姿を現した。

 「まぁ、主上。お招きいただき光栄ですわ」

 「公妃には留守の間苦労をかけたからな。ま、その慰労だ」

 源冬は紅公妃と会話しつつも、目は入口の扉付近で待機している秋桜に目をやっていた。

 『本当に良い女だ』

 食事が進むと、秋桜は紅公妃に給仕するために近寄ってきた。秋桜は決して源冬の方を見なかったが、源冬は終始秋桜のことを目で追っていた。

 さして楽しくもない食事が終わると、紅公妃が辞去しようとした。

 「余はこれより湯に入る。そこの者、供をせよ」

 源冬は秋桜を指さした。当の秋桜はびっくりしたように目を丸くし、えっと小さな声を漏らした。

 「秋桜、お供しなさい」

 紅公妃は命じるように言った。主人である公妃に命じられれば、否とは言えるはずもなかった。


 秋桜は源冬と浴室で二人きりとなった。紅公妃から声をかけられた時、そういう予感はあった。しかし、いきなり浴室に誘われるとは思っていなかった。

 すでに源冬は裸体となっていた。確か源冬は今年ですでに五十歳になったはずである。初老といってもいい年頃なのに、体は非常に引き締まっていた。

 「お前も脱ぎなさい」

 源冬は浴場にはいっても侍女の衣装を着ている秋桜に命じた。命じたとなれば断ることはできない。秋桜は羞恥を感じながらも衣装を脱いだ。その間、源冬は品定めするように秋桜を見つめていた。

 脱いだ衣装を脱衣室に持って行って戻ってくると、源冬は湯船に漬かっていた。秋桜が浴室の隅で待機しようとしていると、

 「入りない」

 源冬は再度命じた。流石に秋桜は躊躇った。主人と同じ湯船に入るなんてとんでもなかった。

 「ですが……」

 「構わぬ。余が望んでいるのだ。入りなさい」

 源冬はあくまでも優しげであった。秋桜はそれでも躊躇いはあったが、命じられるまま湯船に入ろうとした。足先が温かい湯に触れた時であった。源冬が湯を押しのけるよういして立ち上がり、秋桜の手首をつかんだ。

 「あっ」

 と言う間であった。源冬が力強く秋桜の体を引き寄せた。気が付けば源冬に抱きすくめられていた。

 「抗うなよ」

 そう発せられた源冬の口が秋桜の唇を塞いだ。それから源冬の手が秋桜の臀部を撫でまわし、胸をまさぐった。覚悟をしていたこととはいえ、実際に男性に体を触られるのは初めてであり、恐怖に体が硬直した。

 「怖いか?」

 源冬の声は優しかった。静国の頂点に立つ男だけにもっと恐ろしく、無理やりかつ乱暴に自分を抱いてくると思っていたのだが、源冬の扱いは丁寧であった。

 「はい……」

 秋桜は正直に答えた。決して源冬が怖いわけではなく、これから行われることへの恐れでしかなかった。

 「初めてであったな。優しくして進ぜよう」

 源冬の太い指が秋桜の体を這っていった。丹念な愛撫が恐怖を薄めていき、体を溶かしていった。気が付けば秋桜は浴槽から担ぎ出され、休息用の長椅子に寝かされていた。

 「力を抜くがいい」

 その言葉が合図であったかのように源冬のものが秋桜の体内に入っていった。

 激痛が秋桜を襲った。堪らぬ激痛であり、股下から腹にかけて熱湯をかけられたように熱くなっていった。

 『泣きたい……』

 とも思った。しかし、ここで泣けば、養父である頓淵啓に迷惑がかかるのではないかと思い、涙を流すことを我慢した。

 源冬が秋桜の体の上で激しく動いている。その姿がやがて自分のために頑張っているものだと思い始めてくると、痛みが消え去っていった。そしてそれが快感へと変化していった。

 「ん……んん」

 「ふふ……良くなってきたか。愛い奴だ」

 浴室で一度発散させた源冬であったが、そのまま寝室に秋桜を連れて行き、一晩中秋桜を愛し続けた。

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