日常の終わり3
チュンチュン
キューポラ上に乗った、鳥の声とともに目をさました。やはり、世界は変わっていなかった。
ただ変わっていたのは、昨日死んでしまった兵士を助けた女性兵士が丁重に土に埋め墓を作っていた。
僕もキューポラから出て、戦車側面についているスコップを取り彼女の元へ向かった。
ポンポンとか肩を叩き
「もう大丈夫ですか?」
と聞くと
「君か、私を助けてくれたのは、その時はありがとう一応平気だ。」
「そうですか、それは良かったです。あ、名乗り遅れました。僕の名前は東雲 神威って言います。」
「私はアルベルツ・エーデルだ。エーデルと呼んでくれ。」
「エーデル・・・いい名前ですね。」
「私は・・・この名前が嫌いだ。」
「え、どうし」
聞こうとしたところで割り込むようにエーデルが言った。
「すまないが、手伝ってくれるか流石にひとりでは辛い。」
「・・・そうですね。分かりました。」
ーーあれ?なんか目線がいつもより高いような。
それにあまり疲れないぞ・・・まぁこの世界に来てから色々と起きてるし、これといってなにかある訳でもないしまぁいいか
「すまないな。手伝わせてしまって、本来なら私ひとりでやるはずなのだが」
「まぁ気にしないで、死体をそのままにするわけにもいかないですし。」
「そう言ってくれると有難いよ。そう言えば君はどこから来たんだ?」
「日本という国から来ました。でも、ここがどこか分からなくて。」
そう言うとエーデルはスコップを地面に突き刺し、溜息をついてからこう言った
「君、ここがどこなのかも知らずにいるのか?」
「えぇ、まぁ色々とありまして。」
「まぁ深くは触れないでおくよ、ここはさっきみたいな怪物がいる。ブラッディ・アイランド血塗られた島さ」
「血塗られた島・・・そう言えばエーデルさんはどこ出身なんですか?」
「私はシュロース帝国という所だが」
「そうですか。」
「なにか問題でも?」
「いえ、そういう訳では」
「そうか。まぁこれ以上話すならみなの墓を作ってからだな。このままだといつまでかかるか。」
「分かりました。」
ーー埋めていると時に思ったのが、人種もバラバラ皆生まれた国も違う感じだった。
それに、なぜ言語が同じなのだろうか・・・しかも聞いたこともない国名だ。それに帝国?そんなものはもう無くなったはずなのに。
そうこう考えながら作業をしていると全員の埋葬が終わった。
そして、墓に向かってエーデルは敬礼をした。
エーデルは隠していたがすこし涙を流しながら敬礼をしていた。
「よし、終わったな。もうすぐで暗くなる、話すなら戦車の中でにしよう。」
そう言うと戦車の方へとツカツカと歩いて行ってしまった。僕に顔を見せないように。僕は戦車に行く前に敬礼をして、エーデルの後を追った。
戦車に入るとなぜか安心した。まぁこれに関してはきっとやられていった戦車達はみな装甲の薄い軽戦車や中戦車ばかりで、このティーガーは重戦車の中でも装甲が厚いのもあり信頼できるからであろう。しかし、兵士が持っていた銃もバラバラ、戦車もバラバラ種類が違いすぎる。本来なら同じにして弾の共用などをすると思ったが、ここまで違うと不利な気もする。
「君は日本から来たと言ったなあの時は聞かなかったが、日本とはどこにある国なんだ?」
そう言われると世界地図を渡され本来なら日本であるところを指さした。
「そこは、ジパングという名前だが。」
ーージパング?一体いつの呼び名だよ。
「そうですか。ジパングと言うんですか。」
「それと君はここを知らないと言ったが、ならどうやってここまで来た?」
「それが、おかしな話だと思われるかもしれませんが。」
「ん?なんだ、言ってみろ馬鹿にはしないさ。」
「それがですね。」
神威は、ここまでの経緯と自分が元の世界では何者であるかなど洗いざらい話した。
「フフ、ハハハハハ」
「馬鹿にしないって言ったじゃないですか。」
「馬鹿にしないとは言ったが、笑わないとは言ってないぞ。」
まぁこうなることは予想はできていた。大体の本などでも異世界に行った後にその世界の人に話すと笑われる。定番の話だ。
「で、君はまだ16歳だという事か、もう20こえてると思ったぞ。」
少し笑いながらエーデルはそう言った。
自分は自分の姿を見ようと何かないか探した。
「使うか?」
エーデルが折りたたみ型の鏡を手を伸ばしてこちらに差し出していた。
「どうも」
そう言ってエーデルの手から鏡を取り自分の顔を見てみると自分が自分ではないような気がした。最後に見た自分の顔から少しではあるが変わっていたのだ。
「これが、僕の顔!?20どころか25いってるんじゃないかって顔じゃないか!」
「だからさっきもそう言ったろ?そう見えるって」
エーデルが笑いをこらえながら言う。
ーー冗談じゃない4年から9年ほど飛び越しているじゃないか。その間の時間はどうした!?なぜこうなった。疑問が増すばかりだ。
「そんなに深く考えても意味が無いぞ。わかる時にはわかるんだ。今は今の自分を受け止めることだな。」
ーーそうだ、元の世界に行けば元に戻るかもしれないし、今の自分を受け入れ、元に戻る方法を見つけることが正しい判断だろう。
「そうですね。まずはどこか人のいるところで情報を集めないと」
「それなら明日ここから南に20kmぐらいの所に私の基地があるそこに行こう。」
「20kmか・・・歩くにはそれなりの装備があった方が良さそうですが・・・」
「何を言っているんだ。私たちが乗っているこれはハリボテじゃないんだぞ?」
「これ動かし方も知らないし、燃料も入っているのやら」
「燃料が入っているかは確認した。満タンだ、今じゃ満タンに燃料の入った戦車も珍しい。それに私はこいつを動かせるぞ。だから、君はあの時みたいに敵が出たら倒してくれればいい。」
「は、はぁ・・・」
あれがマグレだったなんて言えるはずも無かった。
「取り敢えず今日は寝て明日の早朝にはこいつで向かうぞ。」
「はい。」
僕はエーデルが寝るのを待った。
そして、砲塔のどこかにマニュアルのようなものがないか探してみると。ご丁寧に砲塔の側面に封筒に入れて貼ってあった。剥がして中を見てみると、主砲の使い方から動かし方、こいつの性能も書いてあった。しかも、日本語で。
「なんだこの性能、ティーガー戦車なんてもんじゃないぞ。まるで現代戦車みたいな性能してやがる。」
取り敢えず砲の動かし方、主砲の撃ち方などを覚え少し考え事をした。
ーー世界地図を見た感じでは、形とかは全く同じだっな。でも所々国名が違った。アメリカはラーデン王国という名前になっていた。ロシアやフランス、イタリアなども名前が違う。まぁこれはこの世界と元の世界の差だから仕方が無いのだろう。取り敢えず明日のため眠るとしよう。
そして眠りについた。
どうも作者のかるびぃんです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
とうとう次回ティーガー始動!
楽しみにしててくれたら幸いです。