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近くても、遠い。  作者: 武藤ゆたか
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第2章

 近所の植木鉢に花が咲いていた。いつもはきにしないが、

その時は立ち止まってみていた。きれいだ。

会社からクタクタになって帰宅すると、子どもたち

が「おかえりー」とよってきた。「ただいま」と

言って居間でごろっとなった。テレビは人身事故と

汚職と中東の戦争を伝えていた。

僕はノンアルコールビールをぐいっと飲むと

自分の部屋に向かった。いま中東には

戦争向きのロボットが盛んに投入されていた。

このロボットは地雷でふっとんでも、すぐに

修理ができて、人口知能で学習して、

どんどん鋭い動きをするようになっていた。

僕は本を開き、ぼーっと本を読んでいた。

地球の歴史の本だった。いつの時代も汚職と戦争

ばかりだった。いや、そこには人間がいて、

多くの判断があり、多くのお金が介在した

はずだった。歴史はいつもなんらかのインスピレーション

を与えてくれる。古代ローマの栄光と衰退は

特に示唆がある。

と考えていたら、「こんこん」とドアがなった。

ロボットだった。

「よう、どうした?」と聞いたら、

ロボットは「元気なさそうなので、みにきました」

という。「大丈夫だよ」と応えると

「じゃあ、行きますね」

と階段を降りていった。

人間は進化しているのだろうか。僕はちょっと疑問を

感じていた。

 子どもたちは元気に育っている。

だが僕は高等教育まで育てる自信がなかった。

高等教育の学費はどんどん上がり、奨学金を

もらうしか手はなかった。

動画サイトで、カリキュラムは見れるものの、

なるべく行かせたかった。

妻は共働きで精一杯働いていた。これ以上は難しい。

将来に少し不安がありつつも、僕らは生きて生活を

していた。


あるとき、僕はロボットと食事をしていて、

いきなり、トンカチとスパナでロボット

をなぐりはじめた。なにか無性に壊したく

なったのだ。「なにをするんですか」

「なにをするんですか」とロボットは

つぶやいたがぼくは、ガツ、ガツ、と壊していた。

CPUのチップまでたどり着いたとき、

そこには「110311」と書かれていた。

そのチップをトンカチで砕いた。

そしてロボットは静止した。


性格のいいロボットで、よく調整されていた。

だが、ぼくらの家庭は常に観察され

データーに保存され、送られていた。

だからといって壊したわけではない。

「ただ壊したかったのだ」

僕はそのロボット「110311」を庭の土に埋め、

線香をあげた。そのロボットは死んだ。正式には

停止した。

息子が聞いた。「パパ、いいロボットだったね」

僕は答えた。「新型はいくらでもできるさ」

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