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その弐

「見えてきたよ、テティス。」


目前に見える、茶褐色の星、惑星フロージ。


別名、開拓者と犯罪者の星。元々、人が住める環境では無かったのだが、『バス


テト』と言う鉱物が出ると噂され、我さきにと人々が集まってきた。だが、時が


経つにつれ、純度の高い鉱石は採掘されなくなる。


すると人々はこの星を離れ、残されたのは廃墟と廃坑。そこに目を付けた犯罪者


達は、自分たちの住処にしている訳である。


ちなみに、『バステト』とは、この世界で最も希少価値の高い鉱物である。1等


級から3等級まで分かれており、純度の高さで取引される。


当然、純度が高ければ高いほど高価になる。宇宙船で、彼女たちが見ていた物が


これ。


御多分に漏れず、ガイアとテティスもこれを狙っている。もちろん、非合法で。


「それじゃ、離陸態勢に移行して。」


「おっけー」


ガイアは、操縦桿を握しめる。やがて、大気圏突入時の激しい振動を抜け、彼女


たちを乗せたヒュペリオン号は、無事に惑星フロージに到着した。


「ふぅ、どうやら今回も無事到着したわね。」


テティスが、ポツリと小声で呟いた。だが、それをガイアは聞き逃さない。


「ちょっと、今、なんて言ったの?」


「あーら、聞こえちゃったの〜ごめんなさいね、ガイアちゃん。」


少し小馬鹿にするように、テティスはガイアに向かい、指先を口に当てながら、


ほほほ、と笑った。


「オレが改造した、ヒュペリオン号は大気圏突入位で、壊れないわよ。」


「そうかしら〜毎回ヤバイ音してるんだけどなぁ〜」


そんな事はガイアも解っている、なんとかしなくちゃ、と思っている。テティス


に指摘されたものだから、次の言葉が出てこない。


彼女は頬を膨らませて、目尻に涙を貯めて抗議の表情をする。口喧嘩では、テテ


ィスに敵わないから。


「あーもー、そんな顔しないでよ。私が悪かったから、機嫌直してよ。」


「別に、怒ってないもん。」


全くこの子は、と思いながらも、妹分のこういった所がたまらなく愛おしい。


「気を取り直して、賞金首を探しに行くわよ。」


ガイアの頭をなでて、にこやかにテティスは微笑む。ガイアはこれが堪らなく好


きで、頭を撫でてもらいために、わざと拗ねて見せる時があるほど。


照れて真っ赤になったガイアが、操縦桿を握り、船は大空を飛行していく。




暫く飛行して、めぼしい場所を見つけると、船は着陸した。


彼女たちは、船から出ると、あたりをキョロキョロと見渡す。


「それらしいのは、見当たらないね。」


「そりゃそうでしょ、いくら犯罪者の星って言ったって、名前書いたプレートを


ぶら下げてるわけじゃないし。」


うーん、と腕組したガイアがしばらく考えて、口を開く。


「賞金首や、犯罪者が潜んでいるのってさ、廃墟とかでしょ?そこに乗り込んで


いって、片っ端からブっとばす?」


「あんた、おっそろしいわね。嫌よ、そんな疲れる事。だったら、適当なヤツ見


つけてさ、そいつから聞き出した方がよくない?」


お互い、言ってることは物騒である。それが、不特定多数か少数であるかの違い


だけで。


彼女たちは、いつまでも此処にいてもしょうがないと思い。目の前に見える、廃


れた街あとに向かって歩きだした。




「兄貴、誰かこっちにやってくるぞ。」


双眼鏡で覗いていた、人相の悪い男が、傍らにいる男に話しかける。


「ヤバイぜ、俺たちの事、捕まえに来た宇宙警察かな。」


話しかけられた男が、双眼鏡を奪い、自分たちを捕まえに来たかも知れない人影


を探す。


「ん?あれは・・・女か?しかもガキだな。」


「ガキ?なんだってガキがこんなところに。」


男たちは、不思議そうに首をかしげた。こんな星にでも、子供はやってくる。し


かしそれは、物見遊山な子供連れの観光客。


金持ちの親子がやって来て、彼らたちの餌食になり、身ぐるみはがされて逃げ帰


るというのが、いつものパターン。


だが、今回は子供だけ。しかもこの星は『よいこが近づいてはいけない星ベスト


10』の6位にランクインしている。


「おおかた、親とはぐれたガキだろう。髪の長いのは姉ちゃんだな、ちっこいの


は弟だろう。」


「じゃあ兄貴、あのガキども人質にして、親から金を分捕るかい?」


「そうだな、だけど手荒な事はするんじゃねぇぞ。俺たちは悪党でも、女子供に


ゃ優しくをモットーにしてるからな。」


「わかってるって兄貴、ちょっと脅かすくらいでいいんだろ。」


そう言って、お互いニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべて、自分たちの住処から出


てきた。


これから、彼らに起こる災難を思うと、気の毒になる。




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