特別を夢見たOLが異世界の大国にお姫様として転生した話。
あるところに大きな国がありました。
そこは、王制の国で富裕層はとても豊かな暮らしをしていました。
反面、民衆は重い重税にあえぎながらもやっとのことで毎日を暮らしていました。
勿論、その様子は王族貴族たちの目には入りません。
彼らは、高貴な自分達は品のある生活をするのが、当然だと思っていましたし、
下賤な民衆どもがどうなろうと知った事ではなかったのです。
けれども、そんなやり方にも限界が来ていることに王様は気付きました。
何かいい手を打たなければならない、王様は随分と悩みましたが良い案は中々出てきません。
そんなある日のこと、王妃様は玉のように美しい女の子を産みました。
王様はその子を見て、一目でとてもいい考えを思いつきました。
残虐だが美女好きで有名な隣の国の王様のところに嫁入りさせることを決めたのです。
まず、お姫様は誰にも会うことがないように城の奥深くに閉じ込められました。
王様は、出来るだけ従順であるように教育は最低限のものとしました。
それから隣国の王様が、どのような女性が好みかを徹底的に叩き込んだのです。
男の人への媚の売り方などは、まだ小さいお姫様にはよくわかっていませんでしたが、有無を言わせませんでした。お姫様は、直感的にそれがとても気持ちの悪いことだと思いましたが、泣きながら覚えました。
毎日お姫様は、沢山の女官たちに囲まれ、自身の容貌や体を徹底的に磨かれ、自由になる時間は
めったにありませんでした。
そんな暗くて寂しい毎日の中、お姫様に優しくしてくれるのは神父様だけでした。
お姫様は、どうして自分がこんな目に会うのかを聞きました。
神父様は、いつか夫となる人を愛する為です。と答えました。
お姫様は、神父様の言うことを信じました。
それからというもの姫様はすっかりいい子になり、より一層頑張るようになりました。
そうしてお姫様が15歳になったときに隣国に嫁ぎました。
おうして、初めて会った隣国の王様は目のギラギラしたでっぷりと太った初老の男でした。
この人が私の愛する人なんだわとお姫様は心から思いました。
隣国の王様は、最初はお姫様のこれ以上ないというくらいの美しさに魅惚れました。
それから、ものなれないながらも自分のことを気遣い支えようとするお姫様の無垢な心に打たれました。
隣国の王様は段々、いたずらに家臣を死刑にしたり、無理やり彼らの娘や妻を後宮に連れて行くことを
しなくなりました。隣国の王様は、お姫様の国と交流を深めることに決めました。
そうして暫く間、お姫様と隣国の王様は幸せに暮らしました。
ところがそれは、あっけなく崩れ去ってしまったのです。
友好国までになっていたお姫様の国が、突如戦争を仕掛けてきたのです。
隣国の王様の国は、初期動作が遅れ、あっけなく負けてしましました。
そうして隣国の王様は首をはねられ、お姫様は自分の国に連れて帰られました。
お姫様の父親は、最初から相手を油断させるために姫さまを嫁がせたのです。
全てを知ったお姫様はと目の前が真っ暗になり、塔の一番高いところから飛び降りました。
死後お姫様は、隣国の王様の国では王を誑かし、死なせた悪女と呼ばれました。
お姫様の国では、身を挺して自国を勝利させ、国を豊かにした聖女と呼ばれました。
今となっては、お姫様が死ぬときに普通の女の子として生まれたかったと強く願ったことを知る人は誰もいません。