長い夜
青葉との再戦に備える、特能ボランティア部のメンバー。強大な敵・狗神を前に、太刀打ち出来るのか……
伊野社長の屋敷前。
「……月が隠れたね」
空を見上げて、鷹雄が呟いた。確かに厚い雲が空を覆い、辺りを一層暗くしている。
「……ヒョウキ、狗神の気配は感じるかしら?」
まどかが問い掛ける。氷の大鬼となっているヒョウキは、ゆっくりと首を横に振った。
「……何日か通うことになるかもね」
「そんなことより、ここから出せ~!!」
待ち構える妖遣い二人に、社長が叫ぶ。太い鉄檻の中で、恨めしそうに喚く彼に、後ろからやってきた剛志が豪快に笑った。
「大丈夫だぜ! 俺達は無敵だからな! がっはっはっはっ!」
「ワシは屋敷の中で待つ! こんな所よりも、金庫の中の方が安全だ!」
「……金庫の中で蒸し焼きになるのも、選択の一つですわね」
まどかの冷たい言葉に、社長は黙り込む。
「今回は、使鬼が少ないね」
荒波が言う通り、ヒョウキと七本の炎の尾を揺らしている大きな狐、ナナコがいるだけだ。
「使鬼を遣うのは、力を使うのよ。二人、三人と数を増やせば、その分力と神経をすり減らす。本当なら、一人の妖遣いに一人の使鬼、それが戦いでは理想的なの。前回は、社長の警護と狗神討伐があったから、数に頼ってみたけれど……」
「裏を返せば、そこに光が見えてくる」
まどかの後に続き、鷹雄が言った。
「狗神を遣うにも、青葉はかなり力を使っているはずだ。そこにジャオウを喚べば、必ず隙が出る」
「……あの、蛇だよな」
静波はあの大蛇を思い出し、慌てて頭を振った。
「つまり、あのジャオウを喚び出す状況を作る。その為には、ナナコとヒョウキには狗神を追い込んでもらわなきゃならない。漣、隙を見付けたら青葉に攻撃してくれ。剛志くんは、なるべく力を温存しながら弓彦をガード。荒波と静波は状況を見ながら、危なくなったら言の葉で援護してほしい。あと、弓彦は……とにかく青葉の隙を探すこと。触れさえすれば、サイコメトリーが出来る」
「……簡単に言ってくれるぜ」
弓彦は溜め息を吐き、剛志を見る。
「ま、よろしくな」
「おう、弓彦先輩の援護は任せろっ!!」
志気が上がっていくメンバー達を、静波は黙ってみていた。何も言うこともないし、何も出来ない。鷹雄の期待にも、自分だけは応えられない。それどころか、あの蛇が出て来れば……パニック状態になる可能性もある。
(ばあちゃん……何で俺、この学校にいるんだろう?)
自分を場違いに感じ、静波は鉄檻にもたれ掛かりながら、ただこの戦いが無事に終わるように祈った。
すっかり夜も更け、辺りは闇に包まれている。月も無く、庭に設置された灯りがぼんやりと庭を照らしている。ナナコを包む炎の光がヒョウキの氷の身体に反射し、使鬼達を綺麗に見せていた。
「……歪んだ」
突然ぽつりと、弓彦が呟いた。その途端、低い唸り声が辺りに響く。
「狗神!」
鷹雄とまどかが、使鬼への指示を出そうと構える。弓彦が見つめる方を見ていると、大きな影が歪んだ空間から現れた!
「おいおい、また新顔か」
狗神の背には、青葉が座っている。その姿を見て、剛志がぽつりと呟いた。
「何だ、同い年くらいか? あれが『世界』の敵ってやつなのか?」
確かに、姿だけ見れば青葉は和服を着た普通の男だ。しかし、雰囲気は普通ではない。重い威圧感を受ける。
「大人……って言っても、学生か。参ったな……」
剛志を見て、学生は殺すな、という天樹の言葉を思い出した青葉は、思わず舌打ちする。
「青葉、決着をつけるぞ」
鷹雄の言葉に、青葉はまた不敵な笑みを浮かべる。
「弱い犬は群れるものだぜ、天行寺鷹雄。非戦闘員がいるんなら、さっさと避難させとけよ。ほら、そこの坊やとかな」
青葉の視線が静波を捉える。居心地の悪さに、静波は視線を逸らした。
「……余裕ぶっこいてんじゃねぇぞ、オッサン!」
漣が青葉に目掛けて火球を飛ばす。
「よお、炎遣い。バカの一つ覚えはそろそろ卒業したほうがいいぞ」
狗神がその身を踊らせ、火球を呑み込む。その瞳が一瞬光り、口から火炎を吐き出した!
「じゃねえと、早死にすることになるぜ」
「クソっ……」
火炎をかわし、漣は狗神を睨み付ける。
「ほら、俺はここだぞ。攻撃してこいよ」
馬鹿にしたような青葉の口振りに、鷹雄はあくまで冷静な顔をする。挑発に乗れば、勝機はない。
しかし。
「貴様、バカにするな!」
血管をこめかみに浮かべた剛志が、狗神目掛けて走り始めた! 慌てて、まどかがヒョウキを援護に出す。
「挑発に乗るな、剛志くん!」
鷹雄が言うが、もう剛志には聞こえていない。力を込めてジャンプすれば、狗神に跨がっている青葉の前に躍り出た。
「ほう、大したジャンプ力だな」
まだ余裕の青葉に、剛志はそのまま拳を振り下ろす!
「狗神、叩き落とせ」
青葉の言葉に反応し、狗神が炎の尾を振り上げる。尾で叩き落とそうとされた 剛志は、信じられない行動に出た。
「犬っころは、引っ込んでろ!!」
尾を掴み、剛志は腕の力だけでその背に駆け上がる。振り落とそうとする狗神は、乱暴に身をくねらせる。
「お、おい、狗神!」
青葉まで振り落とされそうになり、声を荒げる。しかし、契約者でない者を乗せた嫌悪感なのか、狗神は何とか剛志を落とそうと、更に動きを激しくする。ついに、青葉は狗神から飛び降りた。
「ジャオウ!」
喚ばれ、大地の大蛇が地中から現れる。地に足を着けることなく、青葉はジャオウの頭に移った。
「……あっさりジャオウが出たけど……鷹雄、オレっちにあそこまで飛べって?」
ジャオウの頭上の青葉は、遥か上だ。弓彦はとにかく隙を見つけようと、目を凝らす。
「……流石は『世界』の敵。二人同時使役ほどじゃ、それほどの隙は出来ないか」
鷹雄はそう言いながら、ナナコに叫んだ。
「ナナコ、ジャオウに攻撃だ! とにかく、青葉を落とせ!」
炎の狐は頷き、ジャオウに向かって火炎を吐き出す。
「ちっ、狗神、援護に回れ!」
青葉が言うが、狗神は背後にしがみつく剛志に意識が集中している。なんとか振り落とそうと暴れるが、剛志もとにかくしがみつく。
「ナナコ、そのまま攻めろ!」
土属性のジャオウには、炎は有効だ。そう確信した鷹雄は、更に攻撃の指示を出す。主の命に従い、ナナコは炎の球をジャオウに飛ばす。
「蛇相手なら、いけそうか!?」
漣も炎の網を作り、ジャオウに被せようとする。しかし、青葉の指示は的確で、ジャオウは網を避けて火球を尾で叩き落とす。その尾が僅かに溶けたのを確認し、鷹雄は漣に言った。
「漣、ナナコのサポートを頼む!」
「あいあいさ!」
小柄な漣は、ナナコに比べると火力も落ちる。しかし、火炎を自由に操る力は、彼の方が上だ。
「絡み付け!」
漣の左手から放たれた炎は、ジャオウの尾に絡み付く。そのままその巨体を縛るように、炎はどんどんとジャオウに巻き付いていく。
「……うるさいガキどもめ……来い、ミナモマル!」
青葉の声に、辺りの気が揺らめく。一瞬、狗神とジャオウの動きが止まる。その瞬間を、剛志は見逃さなかった。
「うぉりゃああああああ!」
気合いを入れて、狗神から飛び降りる。両脚に力を込め、何とか自重を受け止める。そして、弓彦の首根っこを掴んだ。
「行けぇぇぇぇぇ!」
「う、ぎゃああああああああ!」
弓彦の叫びが辺りに響く。青葉は新たな召還に集中している。その頭に、弓彦の頭がぶつかった!
「だっ……!!」
集中を中断され、青葉が呻く。
「よっしゃ、クリーンヒット!」
大の字になった剛志は、ガッツポーズを決める。頭を抱えた弓彦は、それでも青葉の脚を掴んでいる。
「弓彦、早く逃げて!」
まどかの叫びに、弓彦が僅かに反応する。しかし、青葉の方が早かった。
「クソガキどもが……神聖な召還の邪魔しやがって……」
まだ頭が痛むのか、青葉はフラフラと立ち上がる。弓彦の腕を掴み、後ろ手に締め上げた。
「殺すなって言ってたけど、怪我くらいはいいよな……」
まだダメージが残っているのか、弓彦はぼんやりした目で瞬きする。グッと青葉が力を込めると、弓彦の顔が苦痛に歪んだ。
「ひぎゃあああっ! 痛てぇ! 助けてくれぇ!」
「弓彦!」
鷹雄が叫ぶ。弓彦は歯を食いしばり、鷹雄を見る。
「……さて、天行寺鷹雄。友達の腕を折るのは簡単だが、そんな事をしなくても賢いお前らは何もしないよな。さあ、取引といこうか」
「……取引、だと?」
圧倒的優位に立った青葉が、ニヤニヤと笑う。その時だった。
「『瀬戸弓彦、青葉を攻撃しろ』!」
言の葉に動かされ、弓彦が空いている腕で青葉に殴りかかる。青葉は驚き、腕を緩めた。更に弓彦は乱暴に殴りかかる。
「……言の葉、だと!?」
弓彦の攻撃など、大した力ではない。しかし、青葉は顔を強ばらせて辺りを見回す。
「そこの双子……お前らが!?」
青葉の言葉と共に、ジャオウも荒波と静波に顔を向ける。その尾から締め付ける炎の綱は、首にまで到達している。しかし、漣はかなり消耗しているようで、あくびを噛み殺していた。
「ひっ」
ジャオウの顔を見た静波は、すぐに顔を背ける。腰が抜けそうになり、社長を守る檻にしがみついた。
「……静波、下がってて」
荒波が静かに呟く。
「成る程、ただの非戦闘員じゃないわけだ」
青葉の顔が、やや青ざめている。弓彦の攻撃が止まり、我に返った彼は慌ててこの場から逃げようとする。察知し、ヒョウキが弓彦を摘まみ上げた。
「もうヤだ、もう前線行きたくねぇ!」
「お黙りなさい、瀬戸弓彦」
まどかの側に置かれ、弓彦が喚く。どうやら言の葉は完全に切れたらしい。青葉の興味は、完全に荒波と静波に移っていて、拘束から逃れた弓彦を全く気にしていない。その隙をつき、弓彦はまどかに耳打ちした。
「契約書、青葉の指輪だ。……紙じゃないってこと、あり?」
「有り得るわ。指輪を介して契約をしたのでしょう。恐らくは、霊石の指輪ね」
それより、とまどかは弓彦を睨み付ける。
「そこまで読んでおいて、指輪を何故奪い取らなかったの?」
「……マジで言ってんの? まどかはオレっちに死ねって言ってんの?」
泣きそうになる弓彦に、まどかは容赦ない非難の目を向ける。
「指輪を奪うには、青葉を捕まえるしかない。その青葉は、ジャオウと狗神に守られている。……さっきが唯一のチャンスだったのよ!?」
今の青葉は、荒波と静波を見ている。今ならば、隙がある。しかし、奴はジャオウの頭上だ。ジャオウは漣の炎に苦しんでいるが、漣の消耗が激しくだんだん弱まってきている。鷹雄がナナコに指示を出すが、剛志から解放された狗神がナナコと対峙している。
「……状況は分かった。でも、やっぱりまどかはオレっちに冷たい……」
「チャンスを活かせない男に、優しくする義理は無いわよ」
まどかはそう言いながら、青葉を見る。剛志の怪力ならば、まどかをあの位置まで飛ばせるだろう。しかし、彼はさっきの大遠投で力を使い果たしている。
(言の葉で、状況を変えられるかしら……?)
言の葉の詳しい能力は、まどかには分からない。ただ、荒波も静波も、隙だらけの青葉をただ見ている。言の葉を使える状況ではないのかもしれない。
「まどか、俺が行く」
小声で言ったのは、鷹雄だった。
「ヒョウキなら、俺を青葉の所まで投げられるだろう?」
「鷹雄、正気なの? 確かに可能ではあるけれど、あの子は力の加減が出来ないわ。下手をすれば、貴方も死んでしまうかも……」
「チャンスは今しかない。俺は妖遣いだ、ヒョウキを信じる」
鷹雄がこうなれば、意志を変えることはない。
経験から知っているまどかは、それ以上は言わなかった。ヒョウキに命を出す。
「ヒョウキ、鷹雄をジャオウの頭上まで投げなさい」
ヒョウキは頷き、鷹雄を掴む。炎に苦しむジャオウだが、主人を乗せているため派手に動きはしない。青葉の背後から、ヒョウキが鷹雄を投げた!
「よし、いいぞ!」
荒波たちにまだ意識を集中させている青葉の背後に、鷹雄は何とか着地した。気配に気付いた青葉が振り返るが、鷹雄は先程の青葉と同じく、彼の腕を後ろ手に掴んで拘束する。そのまま、体重を掛けて青葉を跪かせた。
「くっ……天行寺鷹雄……」
「これが、霊石の指輪だな?」
青葉の指に填められた、紅い石の指輪。握り込んで渡すまいとする青葉に、鷹雄は札を取り出した。
「万が一の為だったけど……役に立つね」
呪を唱えると、紅い石は急激に光り始める。それと共に、狗神の動きが止まった。その瞳も、紅く染まっている。
「まさか……その札は!」
青葉がもがく内に、鷹雄の呪は完成する。紅く光る指輪はするりと青葉の指から外れ、宙に浮いた。
「『呪返しの札』……まさか、天行寺家の秘宝のはず……」
「秘宝だかなんだか知らないけど、使わなければ只の紙切れさ」
鷹雄はそう言い、指輪に語り掛ける。
「狗神よ。天行寺鷹雄の名において、今までの契約を解除する」
《……妖遣いよ、我を在るべき場所に帰すというのだな?》
指輪からの声に、鷹雄は静かに首を振った。
「いいや。我が願いは再契約だ」
「鷹雄! 何を言っているの!?」
まどかが叫ぶが、鷹雄は指輪に話し掛ける。
「我と契約せよ。我が名は天行寺鷹雄」
《テンギョウジ、タカオ。我を遣うにはまだまだ未熟な術者だが、霊石の指輪の契約には従おう。……我が契約を破棄する時、それはお前の死を意味する。よく憶えておくことだ……》
指輪は光りながら、鷹雄の指に嵌まった。徐々に、光は収まっていく。完全に消えた時、狗神が鷹雄に擦り寄った。
「……あちゃー、やっちまったか」
青葉は、契約の隙に地上に降りている。ジャオウはいつの間にか姿を消していた。特能ボランティア部の面々は、鷹雄に注目している。
「まあ、いいか。狗神はくれてやる」
青葉の言葉に、ようやく皆がそちらを見た。
「逃がすと思っているのか?」
鷹雄が言うと、青葉は低く笑う。
「甘いのか、貪欲なのか……。俺を殺したければ、狗神を解放すれば良かったんだよ、天行寺鷹雄。まさか、再契約とは……」
青葉の笑いは次第に大きくなり、その身を白い光が包んでいく。
「……空間移動!」
弓彦が呟く。青葉はその光に身を委ねながら、鷹雄に問い掛けた。
「過ぎた力は身を滅ぼす。お前は、何故力を求めるんだ?」
鷹雄が一瞬息を飲む。次の瞬間には、青葉の姿は消えていた。
「お帰りなさい、皆さん」
学園長室で、愛が優しく出迎えてくれた。
「ヨシりん~、前線マジヤバい! もう絶対行かないからな!!」
「弓彦先輩、御無事で何よりです」
一緒に待っていたようで、桜も心配そうにやってくる。
「私の予知夢では、弓彦先輩は腹部を切り裂かれ、夥しい出血が……」
「詳しく言うな! オレっちは無傷だよ!!」
弓彦のむくれた顔を見て、高瀬兄妹が笑う。
「大変な戦いだったようだが、無事で何よりだ。さあ、身体を休めなさい」
学園長がそう言い、コーヒーを勧めた。いい香りが、部屋を漂う。
「……学園長、お先に失礼します」
コーヒーには手を付けず、鷹雄がそう言った。そのまま一礼して、学園長室から出て行く。
「気にしないで。新たな使鬼の使役は、かなりの負担になるの」
まどかの涼しい顔に、なる程と静波は納得する。
「君達も、休みたいだろう? なんなら、部屋までアポートするが」
「いえっ! 歩いて戻ります!」
少しは慣れてきたが、アポートの後はやはり気持ちが悪い。静波がそう言うと、荒波も頷く。他の皆はアポートで戻ることにしたらしい。
「学園内だが、気をつけて戻りなさい」
「はい」
学園長の言葉に返事し、静波と荒波は寮に戻った。
「あー、疲れた」
ベッドに横になる静波に、荒波は溜め息を吐く。
「静波、制服が皺になるよ」
「別にいいだろ……疲れたんだから」
「静波は何もしてないじゃないか。僕は、言の葉で援護したけどね」
そう言われると、静波には返す言葉もない。
「うるさいな、疲れたもんは疲れたんだよ」
そのまま寝てしまおうか、と考えた後、何となく言の葉を使った時を思い出す。
(あの時……そう言えば、あの青葉って奴、青ざめてたよな……)
薄暗い中だったが、確かに表情が強ばっていた。言の葉が、何故そこまで恐れられているのか、あるいは……?
(まあ、考えても答えは出ない、か)
そんな事よりも、明日の授業をどう乗り切るかだ。
無理やり考えを方向転換させながら、静波は深い眠りに落ちていった。
「嘘だ、どうして言の葉遣いが……?」
青葉の言葉に、天樹がピクリと反応した。
「言の葉……遣い……?」
「ああ、確かに言の葉遣いだった。双子の男、歳は……大体十代後半といったところか」
「名前は?」
「聞いてない。大体、言の葉遣いがそう簡単に名前を言う訳がない」
言の葉遣いにとって、本名は支配に繋がる。そう簡単に聞かせることはないだろう。
「言の葉遣いなら、高松家、志度家、あるいは……双海家か」
「……双海」
その家名は、二人にとって特別な意味があるのか、押し黙った場には重い空気が流れる。
「……誰であろうが、我等の悲願成就を邪魔するならば……」
天樹がそう言い、夜明け前の空を見上げる。その面の下は、どんな表情なのか……青葉はぼんやりとそう思いながら、天樹を見つめた。
……長かった夜が、もうすぐ明ける。
随分間が開いてしまいましたが、読んでいただけて嬉しいです。次回もよろしくお願いします。