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 「剛志くん!」


 鷹雄の呼び掛けに、剛志は紅葉から目を逸らした。


 「あれ? 鷹雄先輩、いたのか。俺が一番に見つけたと思ったのにな」


 「……不自然に人がいないことに、何か疑問はないのかしら?」


 まどかの言葉に、剛志は目を丸くする。辺りを見回し、「確かに」と呟いた。


 「……学生、か」


 見た目から学生だとは思わなかったのだろう、白木谷は納得したように頷いた。威圧的な笑みを向ける。


 「学生さんは、避難していただきたいが」


 「は? 何いってるんだ、こいつ」


 見知らぬスーツの男に、剛志は首を傾げる。周りを囲んでいるのは同じ制服の男女だから、何かしらの集団だとは理解しているだろう。眉をひそめる剛志に、愛が駆け寄って耳打ちする。


 「あの、裏警察の方です」


 「……警察?」


 更に、剛志の眉間に皺が寄る。このまま乱闘になるのではとヒヤヒヤしていると、剛志は白木谷に向き直った。


 「ご苦労様です!」


 「……あ、ああ……」


 突然のことに、白木谷は僅かに目を見開く。剛志は不格好な敬礼をし、鷹雄の背中を押した。


 「鷹雄先輩、警察が来たんなら、もう紅葉は大丈夫だな! さ、さっさと帰ろうぜ」


 「ちょ、剛志くん!?」


 目を白黒させる鷹雄を、強引に押していく。


 「タケさん、何考えてるの? 本気で紅葉から逃げるつもり?」


 荒波が食ってかかる。しかし、剛志は何も言わずに、祭会場の出入り口まで出た。


 「タケさん?」


 いつもの雰囲気と違う彼に、静波も声を掛ける。人払いなのか、歌っていた真緒と菜緒も、気付いて駆け寄ってきた。


 「何、どうしたの?」


 「もう紅葉さんを倒したんですかぁ? ……じゃ、ないですよね」


 剛志は何も言わずに歩いていく。しばらく行くと、彼は大きく溜め息を吐いた。


 「あ~、息が詰まる」


 「? どうしたんだい?」


 「あ、いや、何って言うか……拒否症?」


 何度も深呼吸を繰り返し、剛志は答えた。ついでに大きく伸びもする。


 「俺、昔から何度も警察に世話になっててよ……主に、器物破損系で。で、イヤな思い出しかないんだよなあ……取りあえず謝っとけ的な」


 いつも豪快な剛志の意外な言葉に、静波は目を丸くする。


 「そうか……でも、このまま帰るのも癪に障るね」


 鷹雄はチラリと祭会場の方を見る。紅葉と裏警察が、戦っているのだろうか?不気味なほど静かだが。


 「ま、警察ってのは正攻法じゃどうにもならないからな……。あちらさんも、俺達が黙って帰るとは、思っていないようだしな」


 剛志の言葉通り、会場への入り口には裏警察の異能部隊が二人、こちらを気にしながら立っている。


 「……仕方ない、一旦学園に戻ろう。俺達の目的は、祭での無差別殺人を止めることだ」


 「……確かに、目的は達成したと言ってもいいみたいね……」


 まどかの言葉も、歯切れが悪い。『世界』の敵を倒すチャンスに横槍を入れられ、不完全燃焼という気分なのだろうか。静波としては、戦いはない方が有り難いが。しかし、真緒も菜緒も、荒波さえも納得していない顔だ。皆を見回して、静波はふと気付く。


 「……あれ? ヨシちゃんは?」


 愛の姿が見えない。確か、さっきまで一緒にいたはずなのだが。


 「ああ、ヨシちゃんにはあの場に残ってもらったんだ」


 鷹雄は事も無げにそう言う。しかし、会場内は戦いになるはずだ。


 「そんな、助けに……」


 「大丈夫だよ」


 慌てる静波に、鷹雄は穏やかに言った。


 「ヨシちゃんの能力は、『完全にその場から消える』こと。集中し続けることで、誰からも認識されないんだ。まさに、情報収集にはうってつけなんだよ」


 「ただ、正確に情報を知るには、弓彦のサイコメトリーが不可欠なのよね。人間の記憶には、どうしても限界がある。だから、弓彦がサイコメトリーすることで、彼女に記録された情報を読み取るというわけよ」


 二人の説明を聞いたが、危険な場所に彼女を置いていくことには変わりない。不安げな静波の肩を、剛志が叩いた。


 「ラブちゃんには、ラブちゃんの戦い方がある。適材適所ってわけだ。ここは、任せようぜ」


 仕方なく頷く。鷹雄が笛を吹き、ぐにゃりとした闇に包まれた。


















 「弓彦、弓彦っ!!」


 帰って早々の鷹雄の呼び声に、部室にいた弓彦は首を傾げた。


 「お帰り、鷹雄。祭は楽しかったか?」


 「……これ」


 不機嫌全開の鷹雄に腕輪を渡され、弓彦は眉をひそめる。


 「他の皆は?」


 「……着替えに、寮に戻った。ヨシちゃんは、祭会場に残ってる」


 「何があった?」


 戦いがあったにしては、帰還が早すぎる。しかも、こんなに不機嫌な鷹雄は珍しい。愛を残してきたということは、何か『視る』必要があるということか。


 「……紅葉には会ったよ。ただ、裏警察が乱入してきた」


 鷹雄はソファーに座りながら、ガリガリと頭を掻く。腕輪に目をやり、弓彦は深呼吸した。


 「その腕輪は、紅葉から渡された。持ち主の記憶、紅葉の思惑が残っているはずだ。出来るだけ深く視てくれ」


 「ん、分かった……」


 裏警察か。何か嫌な予感がする。


 そう思いながら、弓彦は意識を集中させる。脳裏に浮かぶ、どこかで見たことのある男の顔・怯えた感情・妖艶な女……もう少し奥を覗こうと、集中を深めた時。


 《掛かったな……》


 (……え?)


 『何か』に引っ張られ、弓彦は意識を浮上させようとする。しかし、その『何か』はどんどん絡み付き……






 「弓彦?」


 しばらくあれこれと考え込んでいた鷹雄だったが、動かない弓彦に声を掛けた。いつものサイコメトリーなら、すぐに終わるはずだ。


 「どうした?」


 覗き込み、異変に気付く。弓彦は目を見開いたまま、全く動かない。


 「……え? 弓彦? おい、弓彦!!」


 慌てて肩を揺するが、弓彦は何の反応もしない。鷹雄の顔が強張り、次第に青くなる。


 「……学園長に、いや、広瀬先生……」


 予想外のことに、鷹雄は混乱しながらも考える。弓彦の手から腕輪を取り上げ、まじまじとそれを見る。


 「……紅葉の、罠?」


 どういう手段を使ったのかは分からないが、そう考えるのが一番しっくりくる。


 「……どうすれば……」


 取りあえず、弓彦をソファーに寝かせる。目を閉じさせようとし、ふと二年前を思い出した。


 (……大丈夫だ、弓彦は生きている)


 目を閉じさせ、ナナコを呼ぶ。


 「あれ? 弓彦、どうしたの?」


 「ナナコ、広瀬先生を呼んできてくれ」


 不思議そうに弓彦を見ていたナナコだったが、鷹雄の命に頷き、部室から出て行く。


 「……弓彦、起きろよ」


 身体を揺するが、やはり何の反応もなく。


 「……梨香」


 癒しの力なら、どうにか出来るかも知れない。鷹雄はソファーに座り込み、ナナコの帰りを待った。






 少しすると、ナナコと広瀬が部室に入ってきた。


 「ありゃりゃ、やられたな」


 弓彦を診ながら、広瀬は表情を暗くする。


 「一体、どうなっているんですか? 弓彦は、大丈夫なんですか?」


 いつもの冷静さを欠いた鷹雄の肩を、広瀬は優しく叩いた。


 「落ち着け、鷹雄。弓彦の魂が、この身体からちょっと抜け出してるだけだ」


 「抜け出してる、『だけ』って……」


 焦りを隠さない鷹雄に、広瀬は肩をすくめる。


 「残念だけど、僕にはどうしようもないな。弓彦の身体に『力』を感じないとしか、言いようがない。何せ、僕には能力感知の力しかないからね」


 素っ気ない広瀬の言葉に、鷹雄は彼を睨み付ける。それが八つ当たりだと分かっている広瀬は、軽く笑うだけだった。


 「じゃあ、梨香なら……」


 「梨香の能力は、肉体的な治癒だけ。精神や魂になると、梨香には無理だ。それこそ……この『呪い』を掛けた相手を倒すとかしないと」


 「……紅葉」


 今すぐになら、まだあの祭会場にいるかもしれない。部室を出ようとする鷹雄を、広瀬が腕をつかんで止めた。


 「鷹雄、待て。冷静さを無くして、勝てる相手じゃないだろう」


 「離してください」


 こうしている間にも、紅葉はいなくなるかもしれない。もしかしたら、裏警察が逮捕しているかもしれない。もし、弓彦がこのままなら……


 「離せ!」


 声を荒げる鷹雄に、広瀬は溜め息を吐く。


 「学園長だって、行かせないよ。とにかく、落ち着いてくれ」


 鷹雄の様子を見たナナコも、広瀬に毛を逆立てる。


 「……紅葉なら、そう簡単に裏警察には捕まらないわよ」


 扉を開け入ってきたのは、まどかだった。浴衣から、さっぱりとしたワンピースに着替えている。彼女は鷹雄と広瀬、そして弓彦を見た。


 「鷹雄、何があったのかしら?」


 冷静な瞳に見つめられ、鷹雄は目を逸らす。何度か大きく息を吐き、まどかに視線を戻した。


 「……俺の、判断ミスだ。弓彦は、魂が抜き取られたらしい」


 「……? そんな事、誰が……?」


 鷹雄は腕輪をテーブルに置いた。まどかにも、見覚えがある。


 「紅葉……『世界』の敵」


 「多分」


 ただ、紅葉本人は『誰かが送りつけてきた』、と言っていた。この言葉は、嘘だと思いたい。本当だったら、誰が犯人なのかが分からなくなってしまう。


 「……落ち着いてきたみたいだね」


 広瀬はそう言い、鷹雄の腕を離した。


 「……すみませんでした」


 「ま、仕方ないさ。君だって、人間なんだから」


 まどかの登場は、広瀬にとっても助かった。リーダー気質の鷹雄は、誰かがいると冷静になりやすい。


 「さて、魂の分離だけど……ゆっくりしている暇がないのも事実だ。敵の狙いは分からないが、魂が肉体から長く離れると、肉体の方が死んでしまう。リミットは、大体一カ月というところか」


 「一カ月……」


 まどかが呟く。


 「ただ、弓彦を意図的に狙ったにしろ、敵の本当の狙いは違うところにあると思う。……きっと、次のアクションがあるはずだ」


 広瀬の言葉に、鷹雄も頷いた。


 「そうですね。学園には、他にもサイコメトリーを使える学生がいる可能性もある。弓彦一人を呪いに掛けても、あまり意味はない」


 ソファーに横たわる弓彦に、まどかが膝掛けを掛ける。何の反応もない彼を見ていると、どうしようもなく不安になってくる。


 「向こうの出方待ちというわけね。……寮に戻るわ」


 まどかはそう言い、部室から出て行った。


 「学園長には、僕から報告しておくよ。取りあえず、弓彦は寮までアスポートしてもらうから。鷹雄も部屋で待機していてくれ」


 「……はい」


 鷹雄も頷き、部室を出る。


 「……やれやれ。サイコメトリーってのも困ったものだな」


 広瀬は頭を掻きながら、弓彦を見つめる。


 「……困ったものだ」


 呟き、教員用の笛を吹く。アポートに身を任せ、広瀬は学園長にどう報告しようか、とぼんやり考えた。



















 一夜明け、朝が来た。静波が顔を洗っていると、剛志が後ろから現れる。


 「おう、静波。おはよ」


 「ん……おはよう」


 剛志が顔を洗い始める前に、半歩下がる。隣で何度か派手に水を散らされて以来、洗面所で遭遇した時にはそうするようにしていた。


 「ぷはあ~。あー、目が覚めた」


 豪快に顔を洗い、剛志は静波を見た。ついでに、辺りもキョロキョロと見る。


 「あれ? 荒波はどうした?」


 「まだ、部屋で寝ぼけてるけど。荒波に用だった?」


 「いや、大体お前ら一緒にいるからさ」


 確かにこの学園に来てからは、静波と荒波はいつも一緒にいるが、それまでは別行動の方が多かった。ふと、そんな事を思い出す。


 「ま、双子だからっていつも一緒なのは、息が詰まるよな」


 勝手に結論づけ、剛志は笑う。息苦しさは感じないが、今の状況に確かにどこか不自然を感じるのは、昨日悠理に会ったせいか。


 「……今の方が、なんか変なんだよな」


 思わず呟いた静波に、剛志は頷く。


 「確かになあ。俺も影世界に来たときには混乱しまくったぜ。ケータイ使えないし、娯楽は何もないし、やたら暇で、夜は長いし……」


 「うんうん。特に、テレビがないってのは辛いなぁ。新番組で面白そうなやつ、あったのにな……」


 どんなドラマか思い出していれば、ついでに悠理がやたら勧めてきた深夜アニメも思い出す。


 「……そういえば」


 その深夜アニメの内容を、悠理はやたら語っていた。


 (日本に異世界があって、そこには超能力者が隠れ住んでる……これって、影世界のことみたいだ)


 そう考えてから、有りがちな設定だと思い直す。


 「静波、どうした? 変な顔して」


 「別に……っていうか、変って何だよ」


 「悪い悪い」


 剛志は笑い、ふと静波の背後に目をやった。


 「よ、荒波。おはよ」


 「……ども」


 まだ半覚醒の荒波は、呟くと顔を洗い始める。静波の差し出すタオルで顔を拭きながら、チラリと剛志を見た。


 「ねえ、紅葉はどうなったかな?」


 「ん……そうだな。ラブちゃんは帰ってきてるだろうし、今日の部活で分かるんじゃねえか?」


 「……逃げなきゃ、倒せたのに」


 ぽつりと言う荒波の言葉に、静波は眉間に皺を寄せた。


 「おい、荒波」


 「まあまあ。言いたいことは分かるぜ。確かに、敵前逃亡って言われても言い返せないからな」


 剛志はそう言い、苦笑いを浮かべる。


 「ま、言い訳をさせてもらうならな……裏警察の連中は、俺達に紅葉の相手をさせる気はなかったと思うぜ。紅葉だって、誰が敵なのか、よく分かってないようだったしな」


 「……おかしいじゃない」


 荒波はそう言いながら、じろりと剛志を睨んだ。


 「紅葉は、犯行予告を送ってきたんでしょ? 僕達が敵だって、紅葉が指定してきたわけじゃないか。なのに、どうして誰が敵なのか分からないわけ?」


 「そこなんだよなあ……」


 剛志は唸りながら頭を掻く。


 「紅葉の目的が何なのか……無差別殺人をするつもりにしても、もっと完璧に出来ただろ。紅葉は風遣いだ、烈風とか? 嵐とか? とにかく、そんな感じで全部吹っ飛ばせば終わるんだからなあ」


 三人で考えてみても、分からない。ハテナマークで頭が埋め尽くされる頃、剛志が叫び声を上げた。


 「あー!! 朝飯、食いそこねるぞ!!」


 言われて、登校前だということを思い出し、静波と荒波は顔を見合わせる。


 「荒波、急ぐぞ!」


 「静波こそ、遅れないでよね」


 言い合いながら、二人は部屋へと駆け込んだ。



















 午前中の授業は全然頭に入らず、静波は急いで食堂に向かった。


 「ちょっと、静波!」


 荒波も、文句を言いながらついて来る。


 「……ヨシちゃんは……」


 あの神社に残してきた愛の安否が気になる。食堂内をキョロキョロ探せば、友達と一緒にいる彼女の姿を見つけた。


 「あ、ヨシちゃん」


 「静波さん。昨日はお疲れ様でした」


 ニコリと笑って、愛が頭を下げる。


 「昨日は大丈夫だった?」


 特に怪我とかはなさそうだったが、訊いてみる。


 「ええ、裏警察の人たちには気付かれなかったんで、大丈夫ですよ。ただ……」


 言葉を切り、愛は思い出すように目を閉じる。


 「ただ?」


 「紅葉さんには、気付かれていた気がします。何となく、ですけど」


 敵に気付かれて、無事でいられるものなのだろうか?

 そう思ったが、紅葉にはこちらと戦う気はなかったのかもしれない。


 「取りあえず、今日の部活で弓彦さんに読んでもらいます。そうすれば、何か分かるかも知れませんし」


 「そうだね。とにかく、ヨシちゃんが無事で良かった」


 素直にそう言えば、愛も微笑む。


 「ねぇ、ご飯食べようよ」


 荒波の声に、静波は慌てて頷いた。愛も微笑んで頷く。


 「サンドイッチにしようかな……静波、よろしく」


 「お前なぁ……ヨシちゃんは、何にする? ついでに注文しとくけど」


 「あ……私、頼んできますよ。静波さんこそ、何がいいですか?」


 「いやいや、大丈夫だよ」


 注文を聞き合う二人に、荒波が溜め息をついてぼやく。


 「静波が、ヨシちゃんの役に立ちたいんだって。遠慮しないで使ってやりなよ」


 「お、おい!」


 静波の慌て顔を無視する荒波に、愛は困ったように眉を寄せる。しかし、静波にピョコンと頭を下げた。


 「あ、じゃあ、日替わり定食をお願いします」


 「あ、うん。注文してくる」


 内心、荒波に悪態をつきながら、静波は列に並んだ。注文し、番号札を取ってくる。


 「じゃあ、今日の部活は昨日の戦況の分析だね」


 「そうですね。私も見たんですけど……」


 愛は言葉を切り、戻ってきた静波を見る。無言で続きを促せば、また話を始めた。


 「あの、白木谷さんという方が、紅葉さんに戦いを挑んでいました。腕輪の件は、どちらも相手の仕業だと言っていたようですけど……異能部隊の方々が紅葉さんを攻撃していましたけど、紅葉さんは反撃はせず、逃走しました」


 「? 紅葉って女、敵には容赦しないって言ってたのに?」


 「……そうですよね。私、何か見落としているのかも……」


 荒波の指摘に、愛は自信なさげに俯いてしまう。


 「大丈夫だよ。弓彦さんがサイコメトリーで視てくれるんだろ?」


 「そうだね。それより静波、番号呼ばれたみたいだけど」


 聞こえたんなら、取りにいけよっ! という文句は、荒波には通じない。思わず溜め息を吐きながら、料理を取りに行く。


 「あ、私も」


 愛も後ろからついてきて、一緒に料理を運ぶ。三人で黙って昼食を食べていると、荒波の隣にハンバーガーが置かれた。


 「よ、昨日はどうだった~?」


 「あ、漣」


 ぼんやりした表情の漣が、隣に座ってハンバーガーにかじりつく。そして、荒波をチラリと見た。


 「昨日、なんかあった?」


 「え? 別に、戦いとかはなかったよ。……裏警察と紅葉には会ったんだけど」


 漣は首を傾げながら、話を聞いている。ハンバーガーを食べ終わると、彼は珍しく困惑したような表情を向けた。


 「今日、鷹雄と弓彦が授業に来なかったから、なんかあったのかと思ってさ……」


 「え? 鷹雄さんと、弓彦さんが?」


 漣は頷き、頬杖をつく。


 「弓彦は、たまにサボることがあるんだけどさ……。鷹雄が授業に来ないって事は、昨日の戦いで怪我をしたのか、使鬼に何かあったのか……かと思ったんだけど。でも、何もなかったのか……」


 色々考えているのか、漣はジュースのストローをかじっている。三人で顔を見合わせていると、午後の授業の予鈴が鳴った。


 「……ん、また部室で」


 漣はそう言い、食堂を出て行く。愛は、少し離れた所にいた友達に呼ばれ、女子棟に戻る。静波と荒波も教室に向かった。











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