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双子の編入生

初投稿で不慣れな点も色々ありますが、どうぞよろしくお願いします。

.







 古いバスに揺られながら、双海 静波(ふたみしずは)はぼんやりと外を見ていた。


 (なんか、辺鄙な所だな…)


 森の中を、バスは静かに走っている。時々石に乗り上げるのか、大きく揺れた。


 「うわっ……ったく、田舎道はこれだから……」


 ブツブツ言いながら、隣の弟を見る。


 (こいつは、いつも通りか……)


 涼しい顔をして、眼を閉じている。眠っているのか、バスの揺れに合わせて身体が傾いでいた。


 「お客さん、もうすぐ終点だよ」


 人の良さそうな運転手の言葉に、静波は前方を見た。


 「あれが…新しい学校か」


. バスは、木々を抜けて建物へと向かった。









. 









 バスを降りると、静波は建物を見上げた。


 「へぇ…割と綺麗そうな学校じゃん」


 「……まだ開校して十年だって、パンフレットに書いてたじゃないか。そうそう汚れないでしょ」


 ぼーっとしながら静波に答えたのは、弟の荒波(あれは)だった。弟とは言えど、彼らは双子の兄弟だ。荒波からは静波の方を弟だと思っている。


 「それにしても、本当にあったんだね。こんな学校」


 荒波の言葉に、静波は圧倒されながらも頷いた。


 「光輪学園……またの名を『異能学園』、か」


 言いながら、何処か現実味が欠けた印象を受ける。しかし、荒波の持つ《能力》の事を考えると、これも現実なのだと思い直した。


 「さてと、荒波様。先ずは職員室…かな? 行きましょうか」


 「止めてよ、静波。家じゃないんだ、普通にして」


 荒波の言葉に低く笑いながら、静波は光輪学園へと足を向ける。荒波もゆっくりと、その後に付いていった。










.









 「……どこだ? 職員室って」


 二人は、静かな校舎内を歩いていた。時間は昼過ぎ。昼休み中なら、生徒達の姿を見てもいいはずだ。


 「何か、不気味……」


 荒波の言うとおり、不自然な静かさに包まれた校舎内。静波は背負っていた鞄を下ろし、中を見た。


 「確か、手紙が……」


 祖母に渡された手紙があるはずだと、静波は鞄を漁る。


 「あ、あった」


 手紙を出すと、目を通す。


 「おい、なんか『体育館に来るように』って書いてるぞ」


 「えっ……そうなの?」


 立ち止まり、二人でキョロキョロと辺りを見回す。


 「大体、静波がちゃんと手紙読んでないから……」


 不満気に呟く荒波に、静波は低く唸る。

 何か言い返そうと口を開いた所で、別の声が響いてきた。


 「体育館はこっちだよ。『双海の双子』くん」


 「「!?」」


 後ろからの声に、二人同時に振り返る。


 「ははっ、双子ならではのリアクションだ」


 爽やかに笑う、長身の男。この学園の制服を着ているところを見ると、生徒らしい。歳は、二人よりも幾らか上に見える。


 「初めまして。俺は生徒会長の天行寺 鷹雄(てんぎょうじたかお)。宜しくね」


 軽い調子で手を差し伸べる。荒波は軽く握手し、鷹雄に問いかけた。


 「あの、他の生徒は……」


 「ああ、皆体育館にいるよ。キミ達の入学式だからね」


 「……は?」


 聞き返すと、鷹雄は付いて来るように促した。歩きながら話し始める。


 「この光輪学園は、途中編入の生徒が多いんだ。というか、ほとんどが編入生。だから、御披露目を兼ねて簡単な入学式をするってワケ」


 話している内に体育館に到着する。


 「さあ、どうぞ」


 鷹雄が扉を開くと、中には年齢がバラバラの生徒達が座っていた。無関心なのか前しか見ていない者、チラチラとこちらの様子を伺う者、反応はまちまちだ。


 「ようこそ、我が光輪学園へ!」


 大きな声が響き、壇上にいる大柄の男性が手招きする。


 「さあ、学園長がお呼びだよ」


 鷹雄に言われ、二人は学園長の所に歩いていった。










.









 ずらっと並んだ生徒達の間を通り、学園長の前まで行く。


 「さあ、ここに来なさい」


 学園長に言われ、二人は壇上に上がった。


 「さあ、諸君。新しい同志を紹介しよう」


 生徒達の視線を受け、静波は居心地の悪さを感じる。そっと隣を見れば、荒波も静波をチラッと見ていた。


 「『言の葉遣い』の名家、双海家の双子君だ。えっと……どっちが荒波君かな?」


 人見知りの荒波は、何も言おうとしない。仕方なく、静波は学園長に言った。


 「俺が双海静波です。こっちが荒波」


 「そうか、君が静波君、そっちが荒波君ね……顔はそっくりだけど、髪型が違うから有り難い」


 元々活発な静波は短い髪を好み、荒波は長めの髪型をずっと通している。二人はあまりお互いを似ていないと思っているが、やはり他人からはそっくりに見えるようだ。


 「分からないことは、生徒会長の天行寺君に聞きなさい。後は、ゆっくり学園生活に慣れていって欲しい。では……」


 学園長はそう言って大きく手を広げた。


 「ようこそ、我が光輪学園へ! 我々は同志を心より歓迎する。己の中の大いなる力を解放し、制御する為に、日常の全てを己の糧としてくれたまえ!」


 生徒達は立ち上がり、拍手を二人に送る。鷹雄の合図で二人は壇上から下り、 生徒達の間を通って体育館を後にした。





 「じゃあ、学園長室に行こうか」


 鷹雄はそう言い、歩き始めた。


 「まだ話があるのか?」


 静波の砕けた物言いも気にした様子はなく、鷹雄は軽く笑う。


 「いきなり午後の授業に出るわけにはいかないだろう? 取り敢えず、寮の部屋には必要な物は揃えてある。後は、この学園の説明……かな? まあ、詳しくは学園長先生本人から聞いてくれ」


 確かに、寮の部屋が何処なのか、これからどうすればいいのか、何も分からない。

 大人しくついていけば、鷹雄は重厚な扉の前で足を止めた。


 「学園長先生、天行寺です」


 「どうぞ」

 先程まで体育館に居たはずの学園長の声が、扉の向こうから聞こえる。鷹雄は扉を開け、二人を手招きした。


 「……失礼しまーす……」


 静波が小さい声で言うと、後ろで荒波が小さく頭を下げる。


 「やあやあ、静波君に荒波君。改めて、学園長の柳谷(やなだに)だ。これからは今まで行っていた学校とは違って色々不便もあるだろう。しかし、この学園にいる者は皆同志だ。遠慮なく頼ってくれたまえ」


 朗らかに言いながら、二人の肩をバンバンと叩く。


 「さて、君達は一年生からのスタートだ。これまでの高校二年という立場からすると、しばらくは慣れないだろうがね。ここはここ独自の進級方法がある。君達の《能力》がある一定のレベルに上がれば、一年を待たずして進級出来る」


 学園長はそう言いながら、机の引き出しからピンバッチを出した。『光輪一年』と書かれている。


 「襟元に付けたまえ。制服は寮のクローゼットに置いてある。さて……ああ、進級方法だったね。一年を待たずに進級は出来るが、当然《能力》がレベルアップしなければずっと一年生ということになる。光輪学園は三年生を終えると卒業試験を受けてから卒業となる。頑張ってくれたまえ」


 自然と静波の喉が鳴る。学園長は微笑み、言葉を続けた。


 「さあ、明日から授業だ。旅の疲れをゆっくり癒しなさい。うちの寮には天然温泉の大浴場がある。天行寺君、一年生の教室の場所と寮の場所を案内してあげなさい」


 鷹雄は一礼し、部屋を出る。二人が続こうとすると、学園長はまた言葉を続けた。


 「双海静波君、君にはまだ話がある」


 「……わかりました」


 足を止めた静波を、荒波は黙って見つめる。しかし鷹雄に促され、学園長室を出て行った。


 ……バタン。


 扉が閉まったのを見て、学園長は静波を手招きした。脇にある大きなソファを勧める。


 「さて、と」


 自分もソファに身体を沈めながら、学園長は静波をじっと見つめた。


 「何故君だけに話があるのか、心当たりはあるだろう?」


 「……まあ、多分」


 静波の答えに頷き、学園長は指を鳴らした。途端に、室内に小柄の男が現れる。


 「……学園長、今手が離せないと言ったじゃないか。突然のアポートは困るんだよ」


 眼鏡を直しながら、不満を隠そうともせずに呻く。


 「まあまあ、広瀬君。新入生が来たんだよ」


 学園長がそう言うと、広瀬と呼ばれた男は静波を無遠慮に見つめた。


 「ああ、オマケ君の方ね。僕はもう一人の方が興味あるな」


 眼鏡を外し、更に見つめる。その視線にイヤなものを感じ、静波は顔を背けた。


 「静波君、彼はこの学園の『能力判断』の教師・広瀬 (ひろせさとる)君だ。因みに、入学前の能力判断も担当している。本当に我が学園に相応しい能力があるかどうか、ね」


 「どーも」


 興味を無くしたようで、広瀬は眼鏡を直してソファに座った。

 しかし、静波には聞きたい事がある。


 「あの、広瀬先生。どうして俺はここに入学することになったんですか? 荒波だけなら分かるんですけど」


 「……そうだねぇ」


 視線を外したまま、広瀬は首を傾げる。少しの沈黙の後、彼は言葉を続けた。


 「僕は反対したんだ。でも、学園長が説得されちゃってねー。君達のお祖母さんに」


 「ばーちゃんに……」


 「荒波君の入学は君と一緒でないと認めない、と言われたのだよ。何とか説得しようとしたのだが、彼女は絶対に譲らなかった。その為君達の入学が、予定より半年程遅れてしまった」


 学園長はそう言い、静波を見た。


 「君には申し訳ないと思っている。何の能力もない君を入学させても、君には苦労しかないだろう」


 荒波とは違い、自分には何の能力もない。それは、静波のコンプレックスだった。


 「……まあ、双子にはよくあるケースだよ」


 静波の表情が曇ったのを見て、広瀬が言った。


 「双子には色んなケースがある。二人で同程度の能力がある、二人が相反する力をもつ、二人で力を増幅させる、あとは……片方が凄まじい力を持ち、もう片方が何の力も持たない。別に、珍しい事じゃない」


 何でもない、と言われるが、やっぱり気分は沈む。家では明らかな待遇の差があった。次期頭首の荒波を、静波は『様』付けで呼ばなくてはならなかった。


 「……さて、能力を持たない君の、この学園での過ごし方なんだけど」


 落ち込む静波をよそに、広瀬は話を始めた。


 「この学園では、稀に在学中に能力を失うケースもある。その場合、その生徒は退学してもらうことになってるんだけどねぇ……君の場合、そういう訳にもいかないし」


 「……すみません」


 何を言っていいのか分からず、静波は取り敢えず謝る。広瀬は肩を竦めて話を続けた。


 「というわけでね、君の進級と卒業は荒波君と同時ってことで。能力関係の授業も、取り敢えず荒波君の隣で受けてもらうよ。君にはあまり興味ない内容だろうけどね」


 荒波は、双海家の歴史の中でも最高峰の言の葉遣いだと、家族や親戚が絶賛していた。それなら……早くに卒業できるかもしれない。


 「分かりました。……ところで、卒業したら、俺は高校に再編入することになるんですか?」


 せっかく頑張って入った高校から突然この学園に転校させられこのまま中退扱いでは、静波にはたまったものではない。


 「いやいや、ここでは高校までの過程を学習できるんだ。ただ、ほとんど個人的に通信学習ということになるけどねぇ。荒波君の卒業に合わせて通信の試験を受ければ、高校卒業は出来るよ」


 「……」


 「ん、まあ……もし試験に落ちたら、元の高校に編入も出来るよ。だからまあ、あんまり深刻になることないんじゃない?」


 あまり勉強に熱心ではない静波には、自主的に学習というだけで頭が痛くなってくる。

 荒波は元々、世間に出ないように育てられている為に家庭教育だったが、静波は普通に学校に通っていた。


 (あーあ……もうちょっとで修学旅行だったのにな……)


 溜め息をつく静波を、学園長は穏やかな眼差しで見つめた。


 「さあ、これからはこれまでと全く違う学園生活になるだろう。しかし学習内容は違っても、学園にいる友達は、今までの友達同様きっと君の支えとなってくれる。君は君の学園生活を、出来るだけ楽しんでくれたまえ」


 「……はぁ」


 違う環境での友達作り……そう考えてから、静波ははたと気付いた。


 (ここの生徒って……全員能力者じゃないか!)


 何の能力もない静波には、仲良くなれそうもないと気構えしてしまう。


 (まあ、荒波なら早く卒業してくれるだろ。それまで我慢すりゃいいってことだよな)


 黙り込んだ静波に、学園長も広瀬も不思議そうな目を向ける。


 「……卒業まで、よろしくお願いします」


 静波はそう言って頭を下げ、学園長室を後にした。







.







 「やあ、静波君」


 学園長室を出ると、鷹雄が爽やかな笑みを浮かべて立っていた。


 「あれ? 荒波は?」


 「彼は疲れたって、寮の自室で休んでいるよ。学園内の案内は、キミにしておいてほしいってさ」


 「……荒波のやつ……」


 人付き合いが苦手な荒波のことだ、鷹雄と二人きりの空気に耐えられなかったのだろう。そう考え、静波は鷹雄に頭を下げる。


 「すみません。あいつ、人慣れしてなくて……」


 「気にしてないさ。この学園では、人付き合いが出来ないタイプの人間が多い。能力者故の孤独感や疎外感に悩んだり、名家での隔離生活が原因だったり……だから、キミの方が珍しいくらいだよ」


 そんなものなのだろうか? 能力者でもなければ開放的に育った静波には、よく分からない。


 「さて、取り敢えず正面玄関に行こうか」


 鷹雄に連れられ、静波は入ってきた玄関まで出た。隅に静波の靴が揃えられている。


 「一年の靴箱はあのグリーンのラインのところ。ここから右側が男子棟だ」


 「……だんし、とう?」


 聞き慣れない言葉に首を傾げると、鷹雄はニコリと微笑んだ。


 「学園内は、男子棟と女子棟に別れている。授業も完全に別で行われてるよ」


 「……え」


 ということは、ここは男子校と同じということか?


 「女子がいなくて残念なのは分かるけど、表情に出過ぎだよ」


 鷹雄の言葉に、静波は「ははっ」と乾いた笑いを漏らした。


 (せめて……せめて可愛い女子と運命の出逢いをしたかった……!)


 能力者の学校に入って、男だらけの環境、しかも寮での不自由な生活……考えただけでブルーになる。

 そんな静波を見て、鷹雄は優しい声を掛けた。


 「まあまあ、授業は完全に男女別なんだけど、放課後の部活動は一緒に出来るよ。だから、そんなにがっかりしないでね」


 「部活動?」


 授業は別なのに、何故部活は一緒なのか?

 よく分からないが、取り敢えず女子と知り合うチャンスはあるようだ。


 「さあ、男子棟はこっちだよ」


 鷹雄の案内に、静波は頷いて後に続いた。






 「ここが一年生の教室だよ」


 授業中なのか、教室内は静かだ。引き戸の上に、『男子棟・一年』というプレートがある。


 「一階に一年、二階に二年、三階に三年の教室がある。あとは特別教室かな……」


 「あの、一学年一クラスなんですか?」


 素朴な疑問に、鷹雄は軽く笑った。


 「能力者なんて、そんなに存在しないよ。しかも、ここに入学するのは、この国全体の能力者の内、大体八割くらいだって学園長に聞いている。二クラス用意する程じゃないんだよ」


 なるほど、そりゃそうか。能力者がゾロゾロいるのも怖い世界だ。


 音楽室、美術室、家庭科室……校舎の中央付近に集まる教室を回る。


 「男女共用だから、中央にあるんだよ」


 渡り廊下を渡ると、大きな体育館がある。先程入学式があった場所だ。


 「あと、昼食をとる食堂があるけど、それも男女共用だよ。お昼にも出逢いのチャンスがあるわけだね」


 出逢いを強調されると気恥ずかしくなってくる。


 「さて、静波君は、どんな子が好みなのかな?」


 中央にある校庭にでてベンチに座ると、鷹雄は不意にそう訊いてきた。


 「え゛っ」


 「ん?」


 聞こえなかったと思ったのか、鷹雄はまた尋ねる。


 「好みのタイプ、どんな子?」


 「……なんで、そんなこと」


 突然訊かれる意味が分からず、静波はたどたどしく聞き返す。鷹雄は笑顔のまま答えた。


 「いやね、女子がいないって聞いて残念そうだったから。どの部活にどんな子がいるかは、俺は大体把握してるし、いい部活を紹介しようかと思ってさ」


 なるほど、部活を決める手助けのようだ。

 というか……


 「全部活の部員を把握してるってこと?」


 「ん? まあ、俺はこの学園で一番長いからね」


 長い? 在校年数が?


 「うん、まあかれこれ十年くらい?」


 考えが顔に出ていたのか、鷹雄は苦笑した。


 「で、どんな子が好み?」


 また訊かれ、静波は仕方なく答える。


 「えっと……やっぱり、守りたくなるような子かな……」


 しどろもどろに答えると、鷹雄は顎に手を当てた。そんな様も、なかなか絵になる。


 「じゃあ、『特能ボランティア部』の三好(みよし)さんとか、好みかもな……他には?」


 「他? うーん……凛とした美女とか……」


 「……なるほど、じゃあ『特能ボランティア部』の高殿宮(こうどのみや)さんとか? 他にいる?」

 「……可愛い甘えんぼタイプのロリっ娘」


 「……うん、『特能ボランティア部』の高瀬(たかせ)さんだな」


 「どう言っても、『特能ボランティア部』になるじゃないか!」


 静波のツッコミに、鷹雄は笑って手を差し伸べた。


 「ちなみに、俺が『特能ボランティア部』の部長の天行寺鷹雄。よろしくね」


 「……ただの勧誘だったのか」


 呟いた静波に、鷹雄は笑って肩を叩く。


 「さあ、校舎案内はこんな感じかな? 寮まで送るから、荒波君とゆっくり休んでくれ」


 鷹雄に連れられ、静波は寮へと向かった。






 寮のあてがわれた部屋に入る。


 「おかえり、静波」


 のんびりと椅子に寛いでいる荒波に、静波は唸った。


 「お前なあ、なに俺に面倒事押し付けてるんだよ!」


 「人と接するのは静波の方が向いてるでしょ。適材適所」


 「……はぁ」


 溜め息を漏らし、静波は椅子に腰掛けた。学習机と二段ベッド、後は座卓があるだけの狭い部屋だ。寮とはこんなものかもしれないが。


 「あー、椎名に連絡しよ」


 元の高校の友達にメールでもしようかと、静波は携帯を取り出す。そして、気が付いた。


 「……あれ? 電波がない?」


 圏外と表示された携帯を片手に、部屋をウロウロする。しかし、一向に通じる気配はない。


 「……明日、天行寺さんに訊いてみたら? 僕、もう寝るよ」


 荒波はあくびをすると、さっさと下のベッドに潜り込む。


 「携帯通じないって……ここ、日本だよな?」


 静波は呟くが、携帯は反応なし。長いバス移動に疲れた静波も、取り敢えず夕方まで寝ようとベッドに横になった。






 こうして、双海家の双子の学園生活が始まった。











.

いかがでしたか? ファンタジー好きなので、これからもマイペースに書いていきたいと思っています。読んで下さり、ありがとうございました。

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