- 一閃 -
続きです。
ついに地下室から脱出します。
*ミリア*
―――静かなる世界でただ唯一の光を求めた―――――
そして―――ついにあの固く閉ざされた壁から一筋の光が漏れた―――
*アニー*
「まずいっ、速く正門を閉じろ!」
クソッ―――――
私は今焦っていた。
私達が住む館を突然龍達が襲ってきたのだ。
理由は分からない。
だが遠くから此方に向かって飛んでくる龍を見ると、
瞳が虚ろになっていた。
―――誰かに操られている―――――
誰が操っているのか分からない。
何故私達の館を攻撃するのか分からない。
だが私はこの館の主だ。
この館を…家族を守らないといけない。
「お前達、今すぐ逃げろっ!」
私はメイド達に逃げるように伝える。
「お、お嬢様は…っ!」
メイド長が不安げに言った。
「私は主だっ!この館を守るのが主の役目だ!」
そう言うとメイド長は微笑んだ。
そして……
「では、私達メイドは主の傍で役目を果たします!」
―――――ふふっ……私はまた面倒なメイド長をもったものだ。
そう私は心で思った。
嬉しい。
素直にそう思った。
私はこのメイド達を守る。
そして……ミリアも―――――
「よし……全力でここを死守しろっ!」
「「「はいっ!」」」
*数時間後*
*アニー*
「グギャヴァアアアアァァァァァア"ア"ア"ア"ッッッ!!!」
龍のボスである黒龍が急に叫びだした。
既にメイド達の殆どが死に絶えてしまった―――
守ると決意した、だが実際は出来なかった。
だが怒りや悲しみを感じる暇はない。
私は構える―――――
黒龍は口からとてつもない程の魔力を凝縮した魔炎弾を放った。
私は無意識のうちにその魔炎弾を避けてしまった。
「ッ!…マズイッ!」
魔炎弾が向かうのは館―――
「やめっ―――」
やめて―――――
だが時間は無慈悲にも止まってはくれない。
魔炎弾は館にぶつかり、とてつもない爆音と共に崩れ去った。
ミリア!―――――
私の中に信じたくない感情が現れる―――
ミリアが……死んだ―――――
「み、…ミリアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!」
―――あぁ
―――――世界は何て残酷なんだ―――――
*ミリア*
俺はただその光に向かって歩き出す―――
永い永い時間ずっと使っていなかった棒のような足を―――
何百年ほど前から再生能力も低下し、片足しか存在しない足を使って―――
壁に傷を刻み続け、骨が剥き出しになっている手を使って―――
這うように進む―――
とうの昔に喰らってしまった眼球の無い両の瞳から
血で染まった紅い涙を流しているのが感じ取れる―――
手足が千切れようと、頭が無くなろうと、俺は進み続ける―――
この時をどれだけ待っただろうか―――――
俺は……ついに私として過ごせるのだ―――