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- 蝕 -

長らくお待たせして申し訳ございませんでした。


今回は主人公がオカシクなる寸前ですね。


さて、いつ出られるのでしょうか。

*ミリア*


今日は何日だろう―――


今日は何曜日だろう―――


今日は何年目だろう―――


季節は変わったのか―――


年は越したのか―――


自分の時間が壊れていく―――


あれから長い時間を過ごした―――


永遠に続くかのような真っ暗な世界。


寒い世界。


……何もない世界―――


毎日淡々と同じ事を繰り返す。


空腹―――自らを食べる。


一日が経ったと感じる―――壁に一筋の傷を描く。


メイドが飯を持って来る―――無我夢中で喰らう。


頭がおかしくなってくる―――腕を切断し、痛みで紛らわす。


あぁ、本当にオカシクナッテイルヨウダ……


―――――だが……まだ俺は正気を保っている。


まだ大丈夫だ。


まだ大丈夫……自分に言い聞かせる。


あとどれだけ待てば目の前の強固な扉が開くのだろう。


あとどれだけ……待てば―――――




*アニー*


「ミィ……」


私はミリアの事を考えていた。


いや、常に考えている。


あの事件から……ミリアを幽閉してから約1000年だ。


私達は亜人―――


寿命も人間よりも遥かに長い。


故に時間間隔が曖昧な事がある。


よく知っている顔のメイドも気が付いたら死んでいたなどよくあった。


ミリアは……今どうしているのだろうか。


いや、分かっているのだ。


ミリアが寒い地下室で愛を求めているのが。


今すぐにでもミリアを抱き締めてあげたい。


そして安心させてあげたい。


―――だがどうしてか、私の体が思うように動いてくれない。


行こうとすると体が無意識のうちに踏み止まるのだ。


そして真逆の方へと歩いてしまう。


まるで憎んでるかのように―――


あの時の事は今でも鮮明に覚えている。


ミリアが両親を殺したのも。


両親をその幼い手かけたのも。


ミリアを幽閉したのは私だ。


それは現当主として最善の策をとったとあの頃は思った。


だが、今はそう思えない。


確かにミリアを閉じ込めた事によって安息を手に入れた。


あの狂気じみた愛への欲求から助かった。


だが心の奥底でいつも自問自答している。


本当にこれでいいのかと―――――


あの子にとってそれは本当に良い事だったのか。


否。


あの時、幽閉以外の方法はなかったのか。


否。


あの子は確かに狂っている。


だがそうさせたのは私たちの方だ。



あの子は……ミリアはただ普通が欲しかっただけなのだ。


ただ普通に両親や私と接したかっただけ。


だが私たちはそれを拒絶した。


あの子の能力を恐れて―――


そしてだんだんあの子はおかしくなった。


ミリア……―――――


私はどうすればいいのだろう―――――




*ミリア*


―――もう限界だ。


どんどんと精神がドス黒い靄のようなもので覆われていくのが分かる。


確か……確かゲームの中では―――――


「……ハハッ」


ここまで来たかと笑えてくる。


もう記憶も曖昧だ。


もう何十億年と過ごしたような感覚だ。


いつになったら開くのだろうか。


俺が正気を保っている時間とこの扉が開くのはどちらが早いのだろうか。


俺の中の砂時計がそろそろ限界を告げている。


……ガリッ…ガシ、ガシ……ガリリ……


今日も同じように壁に線を刻む。


俺は改めて部屋を見回した。


既に床、壁、天井も傷で埋まっていた。


能力の扱いも覚えた。


背中から羽柄を生やし飛ぶ事も覚えた。


力の加減も覚えた。


だから―――


だから―――


だから、速くここから出してくれ―――――




―――そして俺は今日も作業をする。

感想を頂けると作者も狂っちゃいます。

ヒャッハー

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