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フロッグマン作戦

年末年始の多忙により、うp遅れました!


じっくり読み進めてみてください。

「東第二埠頭か…」


熊羽が重々しく口を開く。

目下のところ穴太から得た情報を整理するために、ダイニングに3人が集っていた。

強いて言うところの作戦会議のような物である。

◯◯軍総司令部参謀作戦会議 の様な威厳は皆無にしろ、ここで依頼と遂行方法を確認しておきたいというのが全員の意思だ。


先日、穴太の依頼を発端として密輸された武器を盗収してこい、とのことだったが、今日やっと追加の情報が送られてきたのだった。


「東第二埠頭って言うと、あの馬鹿でかいコンテナとかが大量に保管してある場所か」


以前の記憶から、その情報は知っていた。

ここから約100キロ程離れた場所にある海上運輸や交易の要として、今も使用が続けられている埠頭である。


比較的、周囲の地形が荒波から守っているらしく、物資の積み下ろしも容易であるということから、30年前くらいから今の今まで、拡張工事が続けられながら

賑わいを見せていた。


昔、見に行ったことがあったがかなり大きな色とりどりのコンテナが整然と並べられ印象的だったのを覚えている。


「あぁ、そこでオークションを開くんだと。しかも真夜中の0時にだ」


記憶をめぐらせているところに熊羽が言った。

とっさに話が変わって追いつこうとする脳内ですら、その話に訝しさを感じる。

大体、そのような深夜を選ぶ理由が見つからない。



「大っぴらにできないことを真夜中になら、できる…と?」



こんな憶測、サルでもできる。



「ご名答、いや当然の考えだな。使用料金を滞納してる貸コンテナの中身をオークションにかけて処理していくのだとさ。何が入っているかわからないので、夜中にやるという建前らしいがな」



外国などでは身近に一般人にもコンテナを貸し出しているところがあると聞いたことがある。

その使用料を滞納すれば、そのコンテナは差し押さえになり中身は廃棄されるか転売されるのは至極、普通のことである。


今回もまた、そのようなコンテナ類をこじ開け中身をオークションに掛けるのが目的なのだという。わざと真夜中に設定されているのは、中身のプライバシーをある程度守るためというわけであり、昼からは埠頭の整備などの都合もあってこのような時間に開催されるのだということだ。


保守的な日本において、そのような配慮は当然といえた。だからこそ催しの許可も下りたのであろう。



「作戦、その作戦はどうする?くまさん」



今まで腕を組んでムムム…と俯瞰的にしていたルーガも話しに加わりだした。


「フロッグマン。あれしかねぇだろ」


「フロッグマン?」



聞きなれないワードに聞き返していると、ルーガがみるみる嫌そうな顔になっていった。

怒ったフグのように見えなくもない。



「………………だ、だってぇ…あれ冷たいし寒いしめんどくさいしベタベタのヌルヌルになるしぃ…ブツブツ」



仕事に忠実だと思ってはいたが、自分の気に食わないことには徹底的にダダをこねるようだ。

微妙な所がスレていて思わず苦笑してしまう。


だが目の前の熊はそれを許すまじ、とした様子だ。



「バカ言うんじゃねぇ。なんなら輸送機から空挺降下でもするか?」



おい、俺の質問をスルーしないでくれ。



「する!それがいいです!」


「金が無ぇだろうが!」


「なっ……び、貧乏くまさん!」


熊と美女が喚いている間にケータイを取り出しググる。



「ふむ、軍事工作を行う水中工作員…か」



安定のウィキペディア先生だ。俺の質問に答えてくれるのはアンタだけだ。



妙な感傷を覚えながら読み進めていく。

現代の特殊部隊においても決して珍しい作戦ではなく、隠密潜入の基本だそうである。

うん、これなら確かに低コストで隠密性に優れたまま敵陣に潜入が可能だ。


もっともな理由もあるようだし、これ以上晩御飯を貧しくしてほしいのは不本意だ。



「ルーガ、この作戦乗ってみてもいいんじゃないか?」



口を開いた途端、一頭と一人がこちらに視線を向けてきた。

当のルーガ嬢は、あからさまに嫌そうな顔を浮かべまくっている。



「あ、あなたまで……」



まぁ、この程度、来るのは予想済みだよ。



「花丸屋のみたらしだんご」



この一言で、般若のような形相も光の速度で笑顔になった。



老舗和菓子店花丸屋のみたらしだんごをこよなく愛するルーガには

まさにラピ○タの「バルスッ!」並みのチートワードなのである。



ここであと一押し。



「空挺降下なんてしないと思うが、そんなんで金かけて楽しみにしてる、団子食えなくなるのは不本意だろ?」


そしてどちらのほうが利益になるのか頭で決着がついたのか、それまで逡巡していた面持ちも急に神妙になっていった。



「むぅ………依頼終わったら、店ごと買い取ってもらいますからっ!!」



安い奴だな…って違うのか、店ごとってオマエ…。

どこのヤーさんじゃ。


隣に佇む熊羽はそんなことはどうでもいいらしく、ニヤリとグッジョブサインを送っていた。



「ほら貴様ら、そう決まったら準備開始だ。地形データ収集にUAV(無人偵察機、熊場さん作らしい)

を飛ばさにゃならん」



やられっぱなしの熊はいそいそと部屋を後にする。


その滑稽な姿に笑いを禁じえなかった。

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