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戦神神話  作者: 鈴神楽
世界の車窓から
56/68

偽者の条件

八百刃の偽者がまたまた現れた、今度の偽者は?

「今回はバイダー線の終着駅、バルバールに向かう車窓から」

 ヤオが、例の如く『世界の車窓からの』の原稿を書いているのを見て、呆れ顔のマーレが吸射雀と一緒に他の車両に移動し始めた。

『しかし、神の関係者というのは、前回の紅雷といい、あんなのしか居ないのですかね?』

 吸射雀の言葉に、マーレが肩を竦ませる。

「おい、聞いたか? 次の町に、あの八百刃様が居るらしいぞ」

「本当かあの、『戦神神話』に出てくる、正しき戦いの護り手の八百刃様がか?」

 マーレは、すれ違い様に聞いた言葉に驚く。

「今の話って本当ですか?」

 男はあっさり頷く。

「確かな話だ、ここら辺を荒らしていた地泥鯰チデイネンって、地面を泥にしちまう鯰の魔獣を、滅ぼしてくれたんだからな」

 自信たっぷりの言葉に、マーレが首を傾げた。



「この間のお金は、次の原稿料出たら必ず返すから、それまでまっててね」

 一緒に電車を降りるヤオの言葉に、マーレが戸惑うとヤオは不安げに言う。

「直ぐにって言われても、返したら宿代も無いんだけど……」

 本気に困った様子になるヤオに、大きく溜息を吐くマーレ。

「お金くらい、幾らでも待ちます」

 嬉しそうな顔をするヤオ。

「ありがとう。あたし記念品を貰ってくるから」

 トテトテと、駅員の所に向うヤオ。

『やっぱ、こっちが偽者じゃないのか?』

 吸射雀に言葉に、マーレが悩む。

『八百刃の偽者の話しを、聞いたのか?』

 いきなり白牙が話しかけてきたので驚くマーレ。

『貴方も騙されてるんじゃないのか? どう考えても、あれが八百刃様とは思えないぞ』

 吸射雀の言葉に白牙が言う。

『あれが本物の八百刃だと言う事だけは、確かだ。疑るのなら、武道獅子に聞いてみるのだな』

 貨物室から出てきた武道獅子の方に、視線を向ける。

 吸射雀は、武道獅子の頭に移動して聞く。

『武道獅子も、あれが本物の八百刃様だなんて、思わないよな』

 武道獅子は答える。

『八百刃様かは解らない。しかし、一つだけハッキリしている事がある』

 マーレが聞き返す。

「何ですか?」

 武道獅子が強い意志が篭った声で断言する。

『私が会った事がある存在の中で、最強の存在だって事だ。あれに勝てるものは、想像すら出来ない』

 驚く吸射雀。

『普段はどれだけふざけていても、あれが負ける所など私も、想像すら出来ない』

 続けて白牙が真剣に言うと、緊張するマーレ。

「おーい、行くよー」

 緊張を一気に消す、呑気な声を発するヤオに、全員が溜息を吐いた。



「ここって意外と高い」

 店の前でメニューとサイフを見比べるヤオを見ながら、マーレが溜息を吐く。

「食事くらい、奢ります」

 ヤオは首を横に振る。

「残念だけど、それは駄目。あちきは、自分の崇める人間からお金貰ったり、奢ってもらえる程、偉くないから」

 マーレが戸惑う。

「一番安い定食メニューに、目玉焼きついてるから、ここにしようよ」

 そう言って店に入っていくヤオを見送りながら、マーレが言う。

「こういう所を見ると、確かに偉いお方だと思う」

 吸射雀も頷く。

 その時、一人の狼を連れた男がお店に入る。

「亭主、食事をお願いできるかな?」

 亭主が慌てて駆けつける。

「当然です、八百刃様!」

 周りの視線が集まる。

「ほら、あの御方が八百刃様よ!」

「カッコイイ!」

 周りの人間の視線が集まる。

 次々に店の自慢メニューが出される中、ヤオが頬を膨らませていた。

「こっちはまだ!」

 店員は、そっけなかった。

「今はそれどころじゃないんだ! 八百刃様が来てるんだぞ!」

 八百刃様と呼ばれる男は、肩を竦ませて言う。

「そのこは、お腹空かせているようだから、私の方は後で良いので、先にしてあげてくれないかい?」

「御優しい」

「本当、神様になる御方は違う」

 そんな賞賛の中、傍に居た狼が白牙を見てテレパシーで会話してくる。

『お前は旅をしている様だが、蠍の魔獣を見たこと無いか?』

 白牙は余裕たっぷりな態度で振り返り、嫌味を返す。

『名乗りもしない奴の質問に、答える義理は無い』

 狼は、睨む。

『八百刃様の使徒である白煉狼ハクレンロウと敵対すると言うのか?』

 それに対して、白牙は呆れた様な態度で、元の方を向いて言う。

『何と名乗ろうと自由だが、礼儀を知らぬ奴と話す口は無い』

『滅びたい様だな。ヤオロス! あの猫は魔獣だ!』

 白煉狼の言葉に、八百刃様と呼ばれていた男が立ち上がる。

「皆さん、そこに居る猫は、……」

 その言葉は途中で止まる。

 マーレが不思議がると、白牙が答える。

『喋れるわけないな。普通の人間が、ヤオのプレッシャーをまともに食らっては」

 ヤオは、笑顔で答える。

「お気遣い、ありがとうございます」

 その笑顔に、慌ててその八百刃様と呼ばれた男は、頷く。

「気にしなくても良い」

 その後、なし崩しに白牙の事は無視された。



 食堂を出た後、町を探索した後、八百刃と呼ばれた男が言う。

「あの少女は、何者だったんだ?」

 思い出しただけで出てくる冷や汗を拭う。

『以前一度だけ見た神と、同等な力を感じた』

 白煉狼の言葉に、驚く八百刃様と呼ばれた男。

「もしかして、偽者だって事に気付いているかもしれないのか?」

 白煉狼が頷く。

『可能性はあるが、本人が黙っているのだから、気にする必要はないと思うがな』

 安堵の溜息を吐くその男を見て、白煉狼が言う。

『ヤオロス、覚悟を決めろ! 奴を万毒蠍バンドクカツを探し出す旅の為には金が必要で、その金を稼ぐために、八百刃様の名前を使って魔獣退治をして、報酬を貰う事にしたんだろうが!』

 その男、ヤオロス=バーが頷く。

「誰か助けて!」

 その声に、反応するヤオロス。

『飯の種だ、行くぞ!』

 白煉狼と一緒に声の方に向うヤオロス。



 ヤオロス達が向った先では、ヤオ達が既に居た。

「ヤオさん、これって何なのですか?」

 どんどん地上の物を沈めていく、地面を指さすマーレ。

「多分魔獣の力だよ。きっと八百刃様が倒したって言って居た、地泥鯰の仕業だね」

 沈んでいく建物の屋根の上で、呑気に解説するヤオ。

『地面の下では、我が爪も届かない』

 悔しげな武道獅子。

「少し様子を見てから、改善されないみたいだったら、あちきがどうにかするから、先に逃げてて」

 あっさりいうヤオに、少しだけ不安げな顔をするマーレ。

 ヤオの隣で、ゆったりしている白牙が言う。

『安心しろ、こいつに勝てる奴など居ない』

 マーレが楽駝鳥に乗って避難する。

 それを確認してから白牙が言う。

『どうして、直ぐに対処しない?』

 ヤオは叫び声でやって来たヤオロス達を指さす。

「あの人たちにも、立場ってあるでしょ」

 大きく溜息を吐く白牙。

『お優しい事だな』

 そしてヤオが言う。

「八百刃を名乗る責任を持てる人間だと、良いけどね」



『奴が生きていたみたいだな』

 白煉狼の言葉に頷き、ヤオロスが言う。

「白煉狼、来い!」

『オウ!』

 次の瞬間、白煉狼は、ヤオロスを護る鎧に変化する。

「食らえ!」

 強烈な焔がヤオロスの拳から放たれて、地面に大穴を空ける。

 しかしそれだけだった。

『何度も同じ手が通じると思うなよ! 二度とお前の攻撃が通用する場所まで上がるかよ!』

 地下奥底に潜む地泥鯰の言葉に、悔しそうにするヤオロス。

『とどめをささなかったのは、不味かったか!』

 悔しげな白煉狼の言葉に、ヤオロスは諦めず言う。

「諦めるな! ここで諦めたら多くの犠牲が出る!」

 必死に拳を振るい続けるヤオロス。

 その姿に、周りの住人から応援の声がかかる。

 ヤオロスが肩で息をしていると、地泥鯰が嘲りの言葉をはく。

『貴様等の限界などその程度だ! さあ大人しく、私がこの町を滅ぼすところを見るが良い!』

「そんな事は、させない!」

 必死に拳を振るうヤオロス。

「はいはい、力を無駄使いしない」

 そういってヤオが、ヤオロスの手首を掴んでいた。

「君は……」

 ヤオは、両手を大地に向ける。

『八百刃の神名の元に、我が使徒を召喚せん、大地蛇』

 ヤオの右掌に『八』、左掌に『百』が浮かび、大地から大きな大蛇が出てくる。

 同時にそれに押し出されるよう一匹の鯰の魔獣、地泥鯰が地上に押し出された。

『何だと!』

 ヤオはヤオロスの方を向いて言う。

「早く止めをさしなよ」

 ヤオの言葉に慌ててヤオロスが、地面に潜ろうとしていた地泥鯰に、炎の拳を打ち付けて滅ぼす。

 その場にしゃがみこむヤオロス。

 そして、ヤオロスから離れた白煉狼。

『まさか、八百刃様だったとは……』

 驚きで言葉を無くす白煉狼。

 周囲からの突き刺さる視線に、ヤオロスが打ちのめされて居た時、ヤオが笑顔のまま告げる。

「あちきの代役ご苦労様。さー、被害者を病院に連れてって!」

 周りの人たちも慌てて動き出す。

 呆然としているヤオロスに、ヤオは近づき言う。

「あなたもサボってないで、被害者を病院に連れて行くのを、手伝う」

『天罰を下さないのか?』

 白煉狼の言葉にヤオが首を傾げる。

「どうして? そんなくだらないこと言ってないで働く」

 そう言って自分でも大地蛇を操り、地面に沈んだ住宅を、元に戻していく。

「でか過ぎる」

 ヤオロスの言葉に、無言で頷くしか出来ない白煉狼だった。



 外にも怪我人が溢れている病院の、臨時配給所に隣接された席で、ヤオが事情を聞いていた。

「詰り、妹さんの仇である魔獣を探しているんだ」

 ヤオロスが頷く。

『だからといって、八百刃様の名を騙って良い理由にはならないな』

 さっきまで、病人を運んでいた武道獅子の言葉に、ヤオロスが頷き言う。

「はい。罰でしたら、妹の仇を討った後受けますので、どうか今回だけは」

 ヤオが肩を竦めて言う。

「あちきの名前って騙ったからって天罰があたる事ってないよ。あちきを来る事を信じられず、名前を騙って呼び出そうとした人間には罰を与えたけど、それだって名前を騙った事でなく、信じられなかった事を罰したんだよ」

『へんな本の所為で、八百刃の名前は、有名すぎるほど有名でな、名前を騙ったからと言って罰していたらきりが無い』

 白牙がフォローする。

 呑気なヤオ達に、その場に居た誰もが驚く。

『懐が深いと言うか、何も考えてないと言うか』

 戸惑う白煉狼。

「それでこれからどうするのですか?」

 マーレの質問に、ヤオロスが苦笑しながら言う。

「仇の魔獣、あの万毒蠍を探す旅を続けます」

 その時、後ろを通った医師の一人がこける。

 ヤオはそっちを軽く見てから直ぐに続ける。

「あちきの名前使うのは構わないけど、暴利貪ったら駄目だよ」

 その言葉に慌てて否定するヤオロス。

「二度と、貴方の名前を騙るなんてマネはしません!」



 その夜、ヤオは一人の医師を病院から離れた広場に呼んだ。

「何の用でしょうか?」

 その医師の言葉に、ヤオが少し困った顔をして言う。

「万毒蠍だよね?」

 驚くが出来るだけ平然と応える医師。

「何のことですか?」

「違ったら、それでも良かったけど、あちきの勘は合ってたみたいだね」

 ヤオの言葉にその医師が反論する。

「私は貴方が何を言っているのか解らないのですが?」

「あちきって、人に化けた魔獣くらい見破れるんだよ」

 言葉を無くす医師。

「流石は八百刃様と言う事ですか」

 大きな溜息の後、医師は蠍の魔獣、万毒蠍の姿に変化する。

「やっぱり、十中八九そうだと思ったけど本当にそうだったか」

「当てずっぽうだったのですか!」

 隠れていたマーレが飛び出てくる。

「あちきでも、名前しか知らない魔獣を、人に化けた状態で判別するなんて無理だよ」

 そんな事を呑気に言うヤオの後ろでは、信じられない物を見る顔で、ヤオロスが言う。

「どう言う事ですか?」

『高位の魔獣の中には、人に化ける事が可能な者が居ると、聞いて居たが……』

 白煉狼が言った時、吸射雀が言う。

『詰り、ここに居る中で一番高位の魔物は、万毒蠍って事かよ』

 白牙が空中で回転して、美青年姿になって言う。

「別に、わざわざ人の姿をとる必要がないだけだ」

「まあ、そうだな」

 こっちも武人の様な姿になった、武道獅子が言う。

「変な対抗意識を出してるねー」

 ヤオがそんな呑気な事を言った後、万毒蠍の方を向いて言う。

「でも、偶然見つけたって事でも無いのも事実だけどね」

 首を傾げるマーレ。

「偶然じゃ無いって、どう言う事ですか?」

「万毒蠍は、医師をやってたんだよ、毒は人を殺すだけでなく、使い方によっては薬にもなる。その力を有効利用していた。話しを聞いたら、かなり重宝がられていた。そんな医師が、あの状況で、休憩とるとは思えない。特別な理由でもない限りね」

 その言葉にヤオロスが言う。

「特別な理由なんて解りきっているだろう、自分を追ってきた俺達を殺すチャンスを狙って居たんだ! 白煉狼行くぞ!」

『おう!』

 ヤオロスに装備され、白煉狼が炎を噴出す。

「妹の仇、ここでとらせてもらう」

『私にも死ねぬ訳がある。抗戦させてもらいます』

 その長い尾を振り上げる万毒蠍。

 そして両者の戦いが始まる。

 白煉狼を纏ったヤオロスの攻撃は強烈だったが、万毒蠍の動きは素早く、的確で、攻撃力が大きい技は避け、弱い技は、殻で防いで居た。

 いきなりの戦闘に驚くマーレ。

「ところで聞きたい、さっき言った訳とは、本当にあのヤオロスが言った訳なのか?」

 まだ人の姿のままの武道獅子の言葉に、ヤオは首を横に振る。

「全く逆、ヤオロスっていうか、自分が若く未熟だった頃に殺してしまった者の兄が、無事か確認したかったからだよ。ヤオロスたちが気付いていなかったあの状況だったら、幾らでも方法があった筈だよ」

「言わなくて、良いのか?」

 武道獅子の言葉に、肩を竦めるヤオ。

「それを言ってどうなるって訳でも無いしね。因みに、この勝負どっちが勝つと思う?」

 武道獅子は少し双方をみてから言う。

「ヤオロスも戦闘慣れしているが、万毒蠍も己をよく知り、有効な戦法を使っている。ヤオロスが言うような奴だったら、勝負は解らない。しかし八百刃が言うとおりの性格だとしたら勝てない。正直、いまだ戦っているのが不思議に思う。相手に殺されてやろうと、おもってもおかしくない気がするが?」

 苦笑するヤオ。

「魔獣って、そう言うところあるよね。下手に自分の命に制限が無いから、自分の命の使いどころを常に気にする。まー、だからこそ万毒蠍は必死に生き残ろうとしているんだけどね」

 そんな会話をしている間に、ヤオロスが数度目の必殺拳を放つ。

 万毒蠍は、それを紙一重でかわした。

「お前だけは、絶対に許さない!」

『仇は絶対とる!』

 ヤオロスと白煉狼の強い思いは、地面すら熔かす。

『私もここで滅びる訳には、いかない!』

 万毒蠍が攻撃を放った、ヤオロスは大きく跳び避けようとしたが、熔けた地面に足を滑らせる。

 万毒蠍の尻尾がヤオロスに迫った。

『しまった!』

 白煉狼が、痛恨のミスを嘆いたその時、万毒蠍の尾が、ヤオロスの直ぐ前の地面に突き刺さる。

『抜けない!』

 白煉狼の力で、熔けた大地に万毒蠍の尾が、完全にめり込む。

「貰った!」

 ヤオロスの渾身の一撃が、万毒蠍に襲い掛かる。

「そこまでだよ」

 ヤオがヤオロスの一撃を、あっさり受け止めた。

「何で邪魔するんですか!」

 ヤオロスがヤオを睨むが、ヤオが普通の顔で言う。

「妹の仇に助けられたまま終わって良いの?」

 忌々しげな顔でヤオロスが万毒蠍を見る。

「何故、外した?」

 万毒蠍は何も言わず、尾を抜くと、距離をとるので、ヤオが解説する。

「簡単。殺したくなかったから。今の万毒蠍に人は殺せない。最初から、毒で動けなくするだけのつもりだったのに、クリーンヒットしたら、貴方が死ぬかもしれないからだよ」

「妹を殺したお前が、そんな事を気にすると言うのか!」

 ヤオロスの言葉に、万毒蠍が言う。

『私の罪は、許されるとは、思っていない。そして、滅びて許される程軽い罪でもない。私には罪を償い続ける義務がある』

 ヤオロスが言葉を無くす。

 そんな万毒蠍にヤオが言う。

「だったらあちきの使徒になりなよ。普通の魔獣でいるより、先が長いよ」

 慌てて反論するヤオロス。

「何故です。何でこんな奴を使徒にするんですか!」

 ヤオははっきりと言う。

「貴方に文句言われる筋合いは無いよ。そうそう、あちきの使徒になった時は、戦いを挑む場合は、あちき通してね」

 悔しげな顔をして、その場から走り去るヤオロス。

『何故、助けてくれたのですか?』

 万毒蠍の言葉に、ヤオは寂しげな顔をして言う。

「かたき討ちで人は幸せにはなれないよ。それにこうすれば彼の恨みはあちきに集中する。貴方に命を救われた事実を無視してね」

 驚くマーレ。

「不要な恨みを買うタイプだからな」

 呆れた表情でそう言う白牙。

『いいな、人間の姿になれて』

 いじける吸射雀を連れて、万毒蠍を、新たな八百刃獣にしたヤオ達は、宿に帰るのであった。



 ヤオ達が乗ってきた、バイダー線のホームに立つヤオロス。

『良いのか?』

 白煉狼の言葉に、ヤオロスが答える。

「いまのままでは八百刃様に護られている万毒蠍を倒せない。どうにかして使徒契約を破る方法を見つけ、そして奴を滅ぼすんだ!」

 頷く白煉狼。

 やって来た列車に乗ろうとした時、ヤオが駆けてきた。

 呆然とするヤオロス。

「何の用があるというんだ!」

 ヤオは右掌を差し出して言う。

「地泥鯰倒すのを手伝ったんだから手伝い賃払って。あちき本気でお金ないんだから、貰えるお金は貰っておく事にしてるの」

 言葉を無くすヤオロス。

 そんな二人を離れて見ていたマーレが言う。

「あれって、本気で言っていますか?」

 白牙が呆れきった表情で頷く。

『本気だろうな』



 交渉の結果、ヤオは、金貨四枚を貰えたが、それを見ていた信望者候補を失う事になった。

「これで、マーレにお金返せて、卵料理食べれる!」

 本当に嬉しそうなヤオであった。

○新八百刃獣



万毒蠍バンドクカツ

一万以上の毒を体内で生み出して、尾の針から打ち込む事が出来る。

毒の中には人の治療になるものもある。

生まれた当初は荒れていたが、今は落ち着いて居て、人を救う為に旅をしている。

元ネタ:忍神さん(大感謝)



○その他魔獣



白煉狼ハクレンロウ

白い炎を纏い、攻撃できる。

人の体に鎧の様に装備される事も出来る。

ヤオロスの妹に助けられて、一緒に旅をしている魔獣。

元ネタ:エアスト・ノインさん(大感謝)



地泥鯰チデイネン

地面を泥に変化させて泳ぎ続ける、迷惑な魔獣。

元ネタ:忍神さん(大感謝)

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