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戦神神話  作者: 鈴神楽
神々の世代交代
11/68

海女神と古き神

海の女神との遭遇、そして神と神名者の密談が始まる

 世界の海と港の大半を支配する海王国ムーツの大海原の中央に存在する、ショーと賭け事の島ギャバ



「何でまだ居るの?」

 食堂で一番上座に座る金鱗人にヤオが問いかけると、金鱗人が言う。

『ここに、金海波様がいらっしゃるそうです』

 食堂に居た海賊達は驚くが、ヤオにとっては三十年前まで良く顔をあわせていた者が来る、それだけであるので平然としている。

「まー肉体が無いからエッチな事されないから、良いか」

 ヤオが呑気に言うと金鱗人が宣言する。

『今回の対面では受肉の許可がおりています』

 その一言にヤオと白牙が驚く。

「冗談でしょ?」

『神が一時的にも受肉したらその後の肉体は魔獣の元にもなる為、そうとうな事が無い限り許されないはずだぞ!』

 金鱗人も同意の様で、納得いかない顔をして答える。

『しかし確かに、受肉の許可がおりています」

 悩みを深める三人。

 正確には一名(神名者の数え方)と一刃(八百刃獣の数え方)と一鱗(金海波の使徒の数え方)

 その時、海が金色に輝き、その中央から一人の女性が誕生する。

 金髪で完成された女性の黄金率と言っても良いスタイルの女性が裸でそこに生まれた。

 金隣人は慌てて、衣を羽織らせる。

「お久しぶりだね、金海波」

 ヤオの言葉にその女性? 金海波はヤオに抱きついて言う。

「三十年ぶりのこの感触、最高! 八百刃、良い事しましょう!」

 問答無用のヤオの肘が金海波の顎に決まり、金海波が海まで吹っ飛び沈んでいく。

 流石に金鱗人も助けに動かない。

「お前も罰当たりだな?」

 ルードの言葉に金鱗人が大きく溜め息を吐いて言う。

『いいです。少しは痛い目を見たほうが』



 三十分後、海の中で再生した金海波が食堂の席につく、当然一番の上座で、その隣にはキャプテンが座り逆の方にはヤオが居た。

「にしても、ルーミちゃんと一緒に居るなんて一石二鳥ね。ウフフフ」

 ヤオはルーミに抱かれている白牙を見て言う。

「あちきの名の元に、ルーミちゃんに手を出そうとしたら、例え金海波でも攻撃して良い許可を与える」

『了解だ。お前が来るまでこの存在に懸けて止めよう』

「八百刃、なんか私の事を誤解してない? 私は、無理やり女の子を手篭めにした事なんて無いわよ」

 金海波の言葉に、ヤオと白牙と金鱗人の冷たい視線が突き刺さる。

「お酒飲まして意識混濁した所で了承得るのが無理やりじゃないの?」

『人間をハイにさせる魔法の珊瑚で了承得るのは違うのか?』

『ピンチの人間に助ける代わりに体を要求するのは不味いと思いますよ』

 周りの人間の目が氷点下まで下がるが、そこは神様、図太い神経で無視して言う。

「さて本題に戻るけど、一緒にギャバに行かない。そこで面白いショーがやっているの」

「別に良いけど、あちきお金無いよ」

 それに対して金海波は胸を叩き言う。

「そこはお任せ。八百刃が信望者から大金取らないから何時も金欠なのは知ってるから」

『ご飯や宿代だすから一緒に動こうと言う、下心丸出しの誘いも断れなかった位ですからね』

 金鱗人の言葉にヤオは落ち込む。

『落ち込むくらいなら、少しはお布施でも何でも集めろ』

 白牙が追い詰める。

「とにかく、ギャバに行くよ。船長、これは神託。今すぐギャバに向かって」

 随分直接的だが、ルードも金海波の信者だったので、素直に船はギャバに向う事になった。



「わー、すごーい」

 ルーミがはしゃぐのを見て、邪な表情を浮かべる金海波にヤオが近づき言う。

「ところでそろそろ本題に移ろうよ」

 その言葉に涎を拭いて、金海波が、周りの気配を探る。

「八百刃、辺りにあたし達以外の使徒は居ないわね?」

 ヤオは頷く。

「態々受肉したのは、八百刃に触れたい為だけじゃないのよ」

 金海波の言葉に眉を顰めるヤオ。

「それじゃあ、受肉した理由にあちきに触れたかったからが有るみたいに聞こえるんだけど?」

 金海波ははっきりと無視して続ける。

「テレパシーでは、他の神に気付かれる恐れがあるから、直接受肉したこの体の口から伝えたい事があったの」

 ヤオは、視線だけで白牙に伝えると、白牙が頷き、爪を振るう。

「今ので、暫くは、全ての空間からの繋がりを断ち切ったよ。最後にこの空間で大きな力を使えば残留した痕跡も消える筈だよ」

 金海波が少し躊躇した後、話し始める。

「時空神の神名者が現れたわ」

 ヤオでも驚きを隠せない顔で言う。

「詰り、主神である時空神、真名マナが代替わりするって事だよね?」

 その言葉のひたすら重たかった。

「古き神と新しき神の間で戦いに成る」

 過去幾度と無く繰り返された事である。

「蒼貫槍が終末の獣を生み出そうとしたのもその為、奴は今戦神が居ないから古い神の中でも大丈夫だと踏んで、古き神につく事にした見たいね」

 金海波はヤオの事を見つめる。

「あたし達にとって一番の希望で戦力はあなた、八百刃よ。多分今直接的な戦闘になって八百刃に勝てる神はそう居ない。だからこそ、一年でも早く神になって欲しいの。その為に助力をすると新しき神々からの伝言よ」

 大きく息を吐くヤオ。

「神になるって意味を勘違いしてる」

「解っている。神は必要性よ。海の神であるあたしがギャンブルも司っているのは、海に生きる人間にギャンブル好きが多いから。その世界に住む存在の必然性から神が生まれる。そして今世界は新しい時空神を必要として居る。代替わりが失敗したらどうなるか知ってるわよね」

 金海波の言葉にヤオは頷く。

「そのままでは維持出来ない世界を維持できる姿に無理やり変貌させる。新しい神の死体を使って」

「それがそこに住む存在にとってどれだけ矛盾した物かわかってるでしょ?」

 金海波の重い言葉に、ヤオは真っ直ぐ金海波を見て答える。

「あちきは遣り方を変えない。自分が正しいと思ってこのやり方をしてるの。だから他の神にどうこう言われるつもりも無い」

 しばらくにらみ合ったあと、金海波が言う。

「そー言うと思った」

 そして天を見上げて言う。

「それでも戦いの時は近く、その時に八百刃の力が必要に成る事は変えがたい事実よ」

「解ってるよ」

 そして金海波は、遮断された場所から出て行く。

 ヤオもその跡に続く。

 遮断された空間の外で待っていた使徒達も中で重大な話し合いが有った事が解ったのか何も言わない。

「今は楽しみましょ」

 微笑む金海波。

「そうだね」

 微笑み返す、ヤオに抱きつく金海波。

「なんのつもり?」

「だからお互い楽しむのよ」

 ヤオの必殺の膝が金海波の腹に決まった。



「次の対戦相手は居ないか!」

 見世物の一つ怪力自慢の大男が力瘤を作ってみせて居る。

「あれ何?」

『力自慢の男だ、たいてい勝てばお金を貰えるといって、参加料せしめるんだが、魔法使って強化してあるから普通は勝てないな』

 白牙が答える。

「金貨五十枚だよ」

 その一言にヤオが反応する。

「はーい、あちきがやりまーす」

 会場の皆が驚く。

 大男の前に行くとヤオは腰にも達していなかった。

「お嬢ちゃん本気かい?」

 慢心の笑顔でヤオが言う。

「金貨五十枚あれば、暫く卵料理食べれるねー」

 幸せそうだった。

「因みにお嬢ちゃん参加料持ってるのかい」

 その一言にヤオがその場に泣き崩れる。

「相変わらずお金に縁が無いよーね」

 金海波の言葉に白牙が大きく頷く。

『誰のせいだろうな』

「ヤオは色々と神名者には恨まれてたからね」

『どうしてです?』

 金鱗人の言葉に金海波が答える。

「能力が高すぎたのよ。なんせ神名者なのに下手な神ですら出来ない事すらやれるからね」

 そして金海波はお布施としてルードからせしめたお金で参加料を払う。

「賞金手に入れたら返してくれればいいから」

「ありがとう」

 嬉しそうに言うヤオ。

「参加料さえ払ってくれれば参加は自由だよ」

 完全に舐めきった顔で受付の男が言う。

 そしてヤオと男が手を組む。

 サイズが合ってなく、握りつぶされそうなヤオの手。

「レディーゴー」

 大男が空中で横になって男の手の甲が机につく。

 誰もが言葉を無くしている。

 そして賞金を手にホクホク顔のヤオ。

「キンカありがとう」

 参加料を返すヤオ。

「それじゃあ次はあたしね」

 そう言って、受取ったばかりの金貨を出す金海波。

「お客様もやるんですか?」

 大男が唖然とする中、金海波が言う。

「ええ、どんな参加者も受け付けるんでしょ」

 参加料を受付の男にねじ込み、机の前に立つ。

 大男は金海波の見事のプロポーションに鼻の下を伸ばし、手を出す。

 二連続で奇跡が起こるかとの期待が、その場に覆う。

 そして奇跡は又も起こった。

 大男は地面に食い込んでいた。

 金海波はその金の髪をなびかせて言う。

『我は海とギャンブルの女神、金海波なり、汝等、我が司るギャンブルにおいて不正を犯した。汝等に罰を与えん』

 金海波の言葉に答えるように金鱗人がその矛を掲げると、その二人に雷が落ちる。

 周囲の視線が集まり拝み始める。

『ヤオも偶にはこーゆーのを遣ったらどうだ』

 白牙の言葉は金貨を嬉しそうに数えるヤオには聞こえてなかった。



「それでは、金時計の弁償金って幾らですか」

 ヤオが嬉しそうにルードに言うとルードははっきり答える。

「金貨四十枚」

 その数値に固まるヤオであった。

「それとお前が割った皿の中にお宝があってな、あれ金貨五枚なんだ、そっちも弁償してくれるな」

 涙するヤオの背中から金海波が呑気に手を振る。

「それじゃあ、さようなら」

 消えていく金海波とその後を追う様に海に入っていく金鱗人。

『ヤオ諦めろ』

 残る金貨を未練がましく数えるヤオが居た。

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