弁当戦争 食堂
「よくぞ参ったな、血吐鬼!悠久の時、久しく待ちわびたぞ!」
……甘かった。山田は心底、後悔していた。
食堂には先客がいたのだ。いや、待ち伏せされたというべきか。
「浅尾」
山田はそう目の前の人物に声をかける。
日本人にあるまじき金色の髪。カラーコンタクトによって作られた、右目が赤と左目が青のオッドアイ、そして黒のゴスロリドレスを着た中二病のクラスメイト、浅尾。
彼女が食堂の机の上で、3人を待っていた。
「浅尾ちゃん、どうしてここに……」
「愚問だな、冷蔵庫。我は半身であるそなたたち(やまだたち)を待っていたに疑問なしでしょう」
「いや、3人だから」
半身所の騒ぎじゃない。身体を4等分するって、どこの鬼畜ですか。
「まぁ、上向。そなた達は非常に幸運だ。
何せ、食堂に集まる買い物客から、この机を確保したのだから!
どうだ、私を称えるがよい!そしてこの楽園に座るがよい!」
そうやって笑う浅尾だが、山田達には分かっていた。
他の皆に避けられたんだな、と。
「まぁ、良いや。席、取っといてくれたんだな、浅尾。
じゃあ、俺は買い物に行ってくるわ」
これ以上、無駄話をしたくない山田は、早速購買パンを買いに行こうとする。しかし、
「ふむ、血吐鬼。その必要はない。なにせここに手作りの弁当が存在してるのだから!」
そう言って、浅尾が山田に見せたのはお弁当箱。
中には10個ほどのおいしそうなサンドウィッチがあって、とてもおいしそうだ。
「……冬海、今我の耳に手作りと聞こえた気が……」
「……奇遇ですね、花婿さん。私もそう聞こえました」
「誰が花婿だ!」
どうやら小此木と冬海にも聞こえた以上、聞き違いと言う訳ではないらしい。
「さぁ!血吐鬼!私が作りし、この神重ねを食すがよい!」
「えっと……」
山田は迷っていた。
確かに浅尾の申し出は嬉しい。なにせ食費が浮くから。
しかし、山田は申し出を受ける訳にはいかなかった。
何故って?それは……
「……これはどう言う事ですか?山田先輩?」
自称山田先輩の彼女と言い張る、鳥居本が居るからだ。