告白戦争 放課後
保健室にて十分な休養をとり、勉学に勤しんだり勤しまなかったり。
まぁ、色々な事があり放課後。
「よし!犯人を付きとめてやる」
山田は変な意気込みのまま、体育館へと向かっていた。
小此木と冬海は?
勿論、山田は帰らせましたよ。何せ冷やかされるのは山田の目に見えていましたからね。
体育館の扉を山田が開けると、中には跳び箱が13段重ねで積み上がっていた。
「いや、何故に?」
1人でここまでの物をどうやって積み上げたんだろうと半ば感心しながら、山田が見ていると、
「あ、あの!山田先輩!」
と、なんとも可愛らしい声が聞こえる。
そこに居たのは、同級生の鳥居本だった。
実家が寺と言う訳でも無いのに常に巫女服姿で、頭には鳥居の形のマークが付いた工事現場で良く見かけるヘルメットを付けた、小此木や冬海と同じく、変人扱いされる存在であった。
「えっと、鳥居本さん?」
あまりの驚きで、山田は一瞬我を忘れていた。
鳥居本とはクラスが一緒ってだけの、ただその程度の知り合いだからだ。間違っても、先輩呼ばわりされるほど、仲が良いと言う事は決してない。
「はい、山田先輩!どうかされたのですか?」
と、鳥居本は山田にそう聞き返す。
「鳥居本さん、別に俺は浪人してるんじゃないんだからさ。同級生で先輩は無いよ」
「しかしですね、山田先輩。物事において、順序と言う物は大切ですよ。
結婚の前の呼称と言うのは、非常に大切です。『先輩』から、『名前』、『ダーリン』へと名前の呼称がレベルアップしてこそ!真の結婚は生まれるのです!」
(あっ、こいつも変人か)
一瞬で、山田は相手の本質を見抜いた。
「山田先輩。私、山田先輩の事、本気で好きです。
先輩の事を考えていると、我を忘れてしまい、持参物の中に下着を入れて来るのを忘れるくらい先輩の事を愛しています」
「そんなの、普通みんな履いてるから!」
そんな事をしてるのは、痴女だけだ!
山田はそうツッコミを入れていた。
「山田先輩。私、山田先輩と結ばれたいです。
山田先輩のご家族には、もう私の方からご挨拶して数年来の友達って事にしていますから、ここから恋愛ルートにシフトしてもご家族はなんも怪しみません」
「勝手に人の親を刷り込みすんな!」
「先輩。人は三大欲求で生きているのです。
恋愛欲、性欲、結婚欲。人はこの三大欲求の前では、誰も逆らえないんです!」
(それを言うなら、食欲、睡眠欲、性欲だ!)
山田は心の中で、正解を言っていた。
「さぁ!先輩!一緒にや・ら・な・い・か!」
「いやだー!」
飛んでくる鳥居本を見て、とっさに屈む山田。
そして、
「痛ッ!」
鳥居本は山田の背後にあった跳び箱に頭から突っ込んで、気絶した。
「おい?鳥居本?起きろ、起きろってば!」
山田は鳥居本の肩を掴んで、必死に呼びかける。
「せ、先輩……。私、もうダメみたいです」
「諦めんなよ!諦めたら、終わりだぞ!」
「先輩……。後の事は……頼みました……」
ガクッ。
鳥居本は力なくうなだれた。
「鳥居本?鳥居本ー!」
山田は跳び箱の片づけを押し付けようとした鳥居本が倒れてしまったため、仕方なく放課後1人で跳び箱を片づけたのでありました。




