告白戦争 教室
「おい!冬海!」
教室を開けると共に、山田はもう学校に来ているはずの女性、冬海を呼ぶ。
「ふふふ。山田君、おはようですね。今日も太陽がまぶしくて、体温が上がりそうですよ」
と、どんな季節であろうとマフラーを巻き続ける女性、冬海が山田に返答する。
俺の知り合いにまともに返事を返す人間は居ないのかと思いながら、山田は冬海を問いつける。
「おい、冬海。いったい、今度はどんな企みだ?」
「企み?いったい、何の事かな?私はたった今、山田君の席にブーブークッションを仕掛けたばかりだよ。
それで?企みとは、一体何の事かな?」
「よし、まずはブーブークッションの件に付いて、じっくり話を聞こうじゃないか」
それからしばらく、山田は冬海を怒っていた。
数分後。
「ラブレター?何の事ですか?」
「とぼけるな、しらを切ろうとしてもそうは行かねぇんだよ」
山田は冬海に、あの赤い血文字で書かれたラブレターについて問い詰めている。
「冬海よ。下駄箱への我への供物は、お前の仕業か?」
いつの間にかどこからともなく、登場した小此木は冬海に聞くと、
「あぁ、それは私から小此木さんへの感謝の印です。
どうぞ受けとってください。そして結婚してください!」
「うむ。供物だけ受け取っておこう」
小此木は食べかけの魚肉ソーセージ(少しさっきより短くなっていたから食べたのだろう)を自分のポケットに忍ばせる。
「むー……」
その様子を見て、冬海が抗議の声を上げる。
「して、山田。お前の言うラブレターとは?」
「あぁ、これだ」
山田はそう言って、血文字で書かれたそのラブレターを小此木に渡す。ついでに冬海もじっと見つめている。
「なんだ、これは?少なくとも、俺は知らん」
「私もやっぱり知りません」
小此木と冬海じゃないとすると、一体誰だ?
「まぁ、良い。とりあえず読んでみるわ」
なかなか離さない小此木の手からラブレターを強奪した山田は、さっそくその手紙を読んでみる。
そこには、表の血文字とは違うボールペンの文字でこう書かれていた。
『山田先輩、好きです。大好きです。愛しています。例え世界を敵に回したとしても、……まぁ、その場合は世界の味方でいますけど。それくらい愛してます』
いや、どれくらいだよ。
『先輩、本日の放課後。体育館にて、先輩に告白したいと思います。
よろしければ、今日の放課後、体育館でお待ちください!
愛しの後輩より』
(愛しの後輩?俺の知り合いに後輩なんか居たっけ?あれ、じゃあ誰だ?
このラブレターの送り主は誰だ?
誰だ?誰だ?誰だーーーー!?)
プシュー!
山田は頭を使いすぎると、吐血してしまうのだ。
「あぁ、山田!しっかりしろ!」
近くにいた田中君に連れられて山田は保健室に運ばれるのであった。