精神論戦争 3人の生徒会
数分後。
どたどたと階段をかけあがる音と共に、1人の女性徒が入ってきた。
整った顔に綺麗な黒髪、引き締まりつつも出るところは出たプロポーション。
日高と比べると、身長は少し低いが、その割りに胸は日高と同じかそれ以上という完璧な美少女。
黒い制服と下のシャツの第1ボタンをわざとあけてるのも、さらに胸を強調してるようでとても妖艶な美しさをかもし出している。
まさしく完璧。ただし、性格と持ってる物品を除けば。
「阿久津先輩の助けとお聞きし、この久世は全力でサポートする事をこの『わらすぼブレード』に誓いましょう!」
登場と共に、仰々しいまでの歌舞伎喋り。そして、手にはなにやら気持ち悪い魚の刀を持っている。
阿久津の同高、彼女こそが久世2年生である。
「久世。良く来てくれた、突っ込みどころ満載だが」
「……歓迎する、一応」
阿久津、続いて日高は声をあげる。
「いえいえ!阿久津先輩!むしろボクは自分なんかの電話番号を律儀に覚えていた事に感無量であります!」
「……」
おかしい、こいつが入学すると共に無理矢理電話番号を教えられたはず。それに昨日も電話で会話をしたはずなのに。
と、阿久津は事実の食い違いを覚えた。
「いやはや。まぁ、な。
……と、そう言えばお互い初対面だったな」
阿久津はそう言いながら、日高と久世の間に立つ。
こう見ると、どちらもとびっきりの美人だなと改めて思う。
「こいつは俺と同じ生徒会のメンバー、日高3年生。文の前後が可笑しい道を外れた外道者だが、悪い奴ではないから仲良くしてくれよ」
「日高です、どうも」
「そして、こっちは俺と同じ高校出身の久世2年生。美人だがそれを感じさせない奴だが、別に男と言う訳じゃあないからよろしくな」
「どうも、ボクは久世。そして、こっちは名刀『わらすぼブレード』!とってもおいしいから、もし機会があったら食べてね?」
と、久世はそう言いながら、気味の悪い刀を前に出す。
「何故、急に自己紹介と共に刀の紹介もする?そして、刀の紹介においしいはない!」
「ははは!先輩は本当に面白いね!わらすぼは魚で、ちゃんと食べられるますよ?」
「問題はそこじゃねぇ!話題を摩り替えるな!」
「ちなみにわらすぼとは、日本海でとれる深海魚。
目が退化していて、頭部にごく小さな点として確認できるのみである。上向きに開いた大きな口には牙が並び、独特の風貌をしているが、噛まれてもあまり痛くはない。鱗も退化していて、体の前半部に円形・後半に楕円形の鱗が散在する。これらの外見が海外映画『エイリアン』シリーズに登場する宇宙生物の頭部に似ていることから、メディアで採り上げられる際はしばしば「エイリアンのような魚」と比喩されており……」
「おい、わらすぼでここまでネタを引っ張るな!」
はぁ……。やっぱりこいつを呼ぶのは失敗だったかもしれない。
阿久津の脳には、そんな感情が渦巻いていた。
トントン。
「……ん?」
肩を叩かれる感触がしたため、阿久津は後ろを見る。
そこには日高が居た。
「……一応、聞こう。なんだ、日高?」
「強く生きてる、あんな外見でも、わらすぼは。強く生きよう、私達も」
「あんな外見言うな。それと、なんでいきなり強く行きようだなんて……」
「怠らず、努力を!叶う、なんでも、そうすれば!」
「どこの宗教団体!?」
なんだ!?何が日高をここまで!?
ま、まさか……!
「久世、貴様の仕業か!?」
「ふふふ。先輩、見ましたか。これが私の実力です!」
いや、実力と言われてもなぁ……。
「とりあえず、これから3人で事務作業するのに、日高の熱さなどいらない。戻しとけ」
「Up Give Never!」
ほら、文法めちゃくちゃな日高だから多分だけど、日高が『Never Give Up!』とか言い出したぞ!
「先輩、これどうすれば戻るんでしょう?それにボク、どうやって彼女を熱血にしたか知りませんし」
「無駄な伏線を張るな、久世!」
結局、日高の調子は元には戻らずに、阿久津と久世の2人で作業する事になり。
最も苦労したのは阿久津だった。




