潜入戦争 秘密の会合
山田、小此木、冬海。3人には緊張が走っていた。
その訳とは?
お題:
携帯電話 金属バット 忘れていたあの日
5月、またの名を皐月。
桜が散ったこの季節のとある週の平日。
山田、小此木、冬海の3人は机の上で顔を見合わせていた。
忘れていたあの日、いや来て欲しくなかったあの日がやって来たからだ。3人はそれぞれ身構える。特に山田の身構えは尋常じゃなかった。
体格の良いスポーツ刈りの良いいつもの山田の姿はどこにもなく、そこに居たのは寒そうに震えながら大きな身体を縮ませる1人の少年の姿だった。
そして、コホンと咳を吐いた山田は、2人の姿を確認してこう言った。
「なぁ、2人とも。金属バットと箒、どっちの方が気を失わせやすいと思う?」
傍から聞くと、物騒な会話にしか聞こえない。
オペラ座の怪人のような派手な装飾の仮面を顔に付けた、少し高身長の男性、小此木は分かりやすく肩をすくませた。
「全く……。山田がそこまで身構えるからてっきり退学が決まったかと思えば、そんな些事か。
生徒会に呼び出されたくらいで、我に助けを請わないでほしい」
”生徒会”。その名前が出た時点で、山田はさらに肩をすくませる。
「それと身構えすぎだ、そなたは。相手は生徒会と名の付く、ただのサークルだ。それに呼び出されたくらいで、相手を気絶させる武器の相談を持ちかけてくるな」
「全くです」
と、例によって例のごとく。マフラーを巻いた女性、冬海が同調するように言う。
「生徒支援サークル、そこに居る従姉さんに持って来いと言われた品を渡しに行くだけですよね?私の小此木さんの求婚と違って、そう身構えなくても……」
「お前はあれで身構えてたのかよ」
と、山田はツッコミを入れた。それでもまだ、気分が晴れないようだ。
「まぁ、携帯電話にあいつの名前、日高の名前が出た時点で既に嫌な予感はしてたがな。
そして、メールの内容を見て、2度驚いたぜ」
と、山田は鞄の中から1つの物体を取りだした。
それは間違っても、大学生が持ち歩くような品では無かった。
「どうやら、あの馬鹿従姉はこれを生徒会の誰かに渡すみたいなんだが、それが心配だ。
まぁ、俺じゃなくてそのもらう相手が心配なんだがな」
「……そうですね、山田さん以外はこの世界で心配しないといけない事、満載ですしね」
「そりゃあ、どう言う意味だ」
まぁ、そんな事よりもどこでこれを渡すかが問題だ。
多分、これにはあらゆる友好関係を終わらせる力を持っている。幸いな事に小此木と冬海には効かなかったが、他の人間には効くかもしれない。
「まぁ、とりあえず気を付けるさ」
と、山田は力なく言った。




