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そうだ、寝取っち魔王!〜ダンジョンマスターの魔王に転生した俺、死ぬのは嫌なので勇者パーティのヒロイン全員を寝取ります〜  作者: 駄作ハル
第四章 森厳なる『目』・弓使いウェリネ

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第24話 エルフの森

 アザゼルとの濃厚な夜が明け、俺たちはエルフの里『シルヴァンヴァルト』への転移を開始した。

 

 しかし、アザゼルの高等転移魔法術を以てしても、直接シルヴァンヴァルト内に転移はできない。

 人間はもちろん、ほとんどの魔物すら踏み入ることを許さない古代からの聖域だ。


(『バビロンズ・ゲート』ではこの森の結界が厄介だったんだよな。通常の進入は不可能だが一箇所だけ、聖なる樹の衰弱に伴って結界が弱まっているポイントがある)


 俺は結界の外周をひたすら歩かせられる苦行を思い出し苦笑しつつ、アザゼルに正確な転移座標を指示した。

 

 最初の目的地は王国と帝国の国境線に広がる『深紅の大森林』の奥深く。


 玉座の間に描かれた転移陣が眩い光を放ち、次の瞬間俺たちの身体は森特有の濃密な生命の気に満たされた空気に包まれていた。


「……ここが深紅の大森林か」


 見渡す限り天を突くような巨大な樹々が生い茂り、深紅の葉の隙間から真っ赤な木漏れ日が地面に複雑な模様を描いている。


 不気味な景色とは裏腹に空気は澄み切っており、ダンジョンに漂っていたあの忌まわしい異臭とは無縁だ。


 俺が深呼吸していると、ベリアスが周囲を警戒しながら報告した。


「ヴァエル様。周囲に敵対的な気配はありません。ですが……非常に強力な結界を感じます。……しかし、この地点だけ、わずかに歪みが生じているような……?」


「よく気が付いた。ここが結界を超える唯一の門なのだ」


「なんと……! 陛下はご存じの上でここに転移の指示を⁉ (私の転移魔法が及ばぬばかりに陛下にお手を煩わせてしまった!)」


 俺の言葉にベリアスとアザゼルがわずかに目を見開く。


「さあ、行くぞ。長居は無用だ」


 俺はツイードジャケットの襟を正し、迷いなく森の奥へと進んでいく。

 ゲームで何度も通った道だ。記憶通りに進めば、すぐに里の入り口にたどり着くはず。


 しばらく樹々の間を進むと、不意に視界が開けた。

 

 久しぶりの青空から燦燦と光が差し込む、どこか神秘的な空気。

 美しい新緑の色をした巨大な樹の根が絡み合い、物理的にもさながら自然の門を形成している。

 

 その奥に木々の上に築かれた美しいエルフたちの集落――シルヴァンヴァルトが見えた。


 門の前には鎧を纏ったエルフの衛兵たちが十数名、弓を構えて俺たちを待ち構えていた。


「止まれ、侵入者!」

「何者だ! ここは聖なるシルヴァンヴァルト。汝ら短命種が足を踏み入れて良い場所ではない!」


 鋭い敵意が俺たちに向けられる。


 先頭に立つ隊長らしきエルフは特に俺とアザゼルを強く警戒している。

 変化魔法で巧妙に学者とその秘書に偽装しているが、精霊術なる魔法とは別次元の能力を有する彼らの『目』を以てすれば、俺たちの変装も見抜かれてもおかしくはない。


「ベリアス」


「はっ」


 俺は前に出ようとするベリアスに、確信を持って小声で指示を与える。


(ゲーム通りならここのエルフは極端に排他的だが、例外もある。彼らが信奉する古き森の掟と礼節を重んじる相手には、話を聞く姿勢を見せる。……だがここで選択肢を間違えれば即戦闘だ)


「ベリアス。相手は警戒している。まずは武器を収め、騎士としての礼を尽くせ。そして我らは『木々を敬い、聖なる樹の異変を憂う者』であると伝えろ。……ああ、それと必ず『聖なる森の同胞よ』と呼びかけるんだ。それで奴らは態度を軟化させる」


「聖なる森の同胞……? 承知いたしました」


 ベリアスは俺の確信に満ちた口調にわずかに驚きつつも、その指示の意図を正確に汲み取りゆっくりと前に進み出た。

 

 彼女はエルフたちの前で恭しく片膝をつき、騎士の礼を取った。

 兜は脱ぎ、金色の髪と凛々しい顔を白日の下にさらす。


「――聖なる森の同胞たるシルヴァンヘイムの民よ。我らは争いを望む者にあらず。ただ、この偉大なる森の木々を敬い、かの聖なる樹の異変を憂い訪れた旅の者」


 ベリアスの凛とした声が森に響く。


 エルフの衛兵たちは、ベリアスの予想外の態度と礼節に満ちた言葉遣いを受け、僅かに態度を軟化させる。


「……騎士か。人間にしては礼儀を弁えているようだな」

「なぜ聖なる樹の異変を知っている?」


 衛兵たちが戸惑う中、彼らの背後からひときわ若く、目を奪われるほど美しいエルフの女性が姿を現した。


 森の色を映したような緑色の軽装鎧は、彼女のしなやかな肢体の曲線を強調している。

 腰から下は短いスカート状になっており、そこから覗くすらりと伸びた脚は引き締まっていながらも柔らかな丸みを帯び、森を駆ける俊敏さと女性らしい魅力を同時に感じさせた。


 背には精巧な彫刻が施された白木の弓を背負い、矢筒の紐が彼女の豊満な胸元の流れを描く。


 その顔立ちは人間とは明らかに一線を画す、エルフ特有の神秘的な造形美を備えていた。


 長く尖った耳が緑がかった銀髪の間からのぞいている。


(間違いない。ウェリネだ)


 清楚の二文字を体現したかのようなウェリネは、警戒は緩めずともその瞳には他のエルフにはない好奇の色を浮かべて俺たちを見つめている。


「……旅の方。本当に聖なる樹のことを心配してくださっているのですか?」


「無論だ。我らが主君は、高名な生物学者にして森羅万象を愛でるお方。聖なる樹の輝きが失われつつあると聞き、心を痛めておられる」


 ベリアスが俺を持ち上げつつ淀みなく答える。


 ウェリネはベリアスの言葉に何かを感じたのか、隊長に向き直った。


「隊長。この方々は、あるいは……。長老様にお引き合わせするべきかと存じます」


「しかしウェリネ……、掟では外の人間は……」


「掟、掟と……! その掟が、樹を救ってくれるのですか!?」


 ウェリネの悲痛な叫びに、衛兵長は言葉を詰まらせた。


(やはり彼女は里の中でも聖なる樹の衰弱を誰よりも憂い、掟よりも現実的な解決策を求めているな)


 一瞬の逡巡の後、衛兵長は渋々といった様子で頷いた。


「……わかった。ひとまず長老様にご判断を仰ごう。武器は我らが預かる。――少しでも怪しい動きを見せれば……」


 衛兵長は厳しい視線を俺たちに向けた。


「無論だ。我らにやましいところはない」


 ベリアスが毅然と答え、腰から提げた剣を彼に差し出す。


 こうして俺たちは、本来なら多大な労力を必要としたエルフの里への最初の関門を、俺の完璧なゲーム知識と、それを忠実に実行したベリアスの見事な騎士の礼節によって驚くほどスムーズに突破した。


 さらにはウェリネが案内役として俺たちの前を歩きながら、時折興味深そうに俺たちに視線を送っているのに気づき、俺は内心ほくそ笑むのだった。

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