あの日。 2
ダンジョンの中は、まるで廃墟のようだった。
市街地系の廃墟、それこそ渋谷のようなビル街をそのまま廃墟にしたかのような。
そんな情景が広がっていた。
廃墟………廃墟?
廃墟と言うには燃えすぎじゃないか?
まるで今ここで戦闘が展開されているかのような……
配信に映すにはいささか過激すぎかもなぁ。
遠くから爆音が響く。
方向は………西か。
爆炎が見える。
「あっちだ、おそらくボスはアレだろう。全員行くぞ!」
部隊が駆け出す。
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「ここだ!」
アレか。
随分とデカいドラゴンだな。
17〜20mぐらいはあるか?
D級でもE級でも、私が入ったことがあるようなダンジョンじゃ1回も見たことない。
とすれば、D級上位以上………下手すればC級、B級もあり得るか。
E級とD級の烏合の衆で倒せるような……相手とは思えない。
撤退すべk
廃ビルが一棟崩壊する。
退路が塞がれたか。
「攻撃開始!全員突撃!」
バカかあのD級。
集団自殺にも程があるだろ。
ッチ!
「露音!援護!頼んだぞ!」
「え、へ、あ、ちょ!何してるの!」
「おい露音!待て!」
刀を抜いて走り出す。
あのドラゴンにどれだけ通用するか。
この刀がどれだけ通用するか。
多分、通用しないだろう。
それだけの力が、あのドラゴンにはある。
多分、実力的にはこの中が私が一番上。
昇格とか面倒くさくて、E級のままだけど。
足に切り込む。
キズが出来るだけか
硬いな。
ドラゴンが羽で薙ぎ払う。
間一髪、前に飛び込んで回避する。
「………勝てるわけない……か。ビルに埋めれば………あるいは……」
どちらにせよこの状況じゃどうにもならない。
負傷者は………5はいる。
たった十分かそこいらでこのざまか。
ドラゴンがブレス…………を…………
「危ないっっ!!!!」
炎がクロスゲートに向かって降りかかる。
詠唱中の露音の反応が遅れる。
あれじゃ直撃………
刀でギリギリ斬れても、絶対に間に合わない。
麻陽じゃアレは防ぎ切れな………い………
「「佐薙!」」
佐薙凛。
クロスゲートの"5人目"のメンバー。
麻陽礼慈と共に前線を支える近接職である。
メインの装備は……シールド。
いや、佐薙でも耐えられない。
ブレスが盾を吹き飛ばす。
ブレスを吐くために、ドラゴンの頭が下がってきているのが見えた。
今なら………殺れる……
そう思った時には、もう体が動いていた。
眼球に刀を突き刺す。
そのまま刀を回して、ドラゴンの頭の中を撹拌していく。
断末魔がうるさい。
「うるせぇんだよ!黙りやがれ!!」
もう片方の刀を突き刺す。
「死に晒せぇぇぇぇぇ!!!」
刺した刀の片方で、強引に顔面を引き裂く。
その10秒後ぐらいだろうか。
ドラゴンの体躯は完全に停止していた。