『公忠、冥府でプレスマンに文を挟むを見て蘇生すること』速記談1011
右大弁源公忠は、突然息絶えて、三日後に息を吹き返した。蘇生するなり、家の者に、参内する、と告げた。家の者は、正気ではないのだろうと思って初めは取り合わなかったが、余りにも熱心に言うので、支えられるようにして参内することとなった。滝口の戸から来意を告げると、公忠とはいとこの間柄である醍醐天皇は、あわてふためいてお会いになる。
公忠が申し上げることには、息絶えてすぐ、よくわからないまま、冥府の役所にたどり着きました。門の前に、人間の二倍くらいの背丈者が一人いて、紫の衣を着て、金のプレスマンに文を挟んで、高位の役人に対し、延喜の聖王の所業は許しがたい、と申し上げる。朱紫の衣をまとう三十人余りの高位の役人の中の、第二席に座す高官が笑いながら、延喜の聖王とか言われているが、緻密さが足りないので、災いが降りかかるだろうが、改元でもすれば避けられるかもしれないとか何とか言うのを聞いたところで、夢から覚めるかのように生き返ったのです、などということであったので、醍醐天皇は、急ぎ延長と改元あそばされた。
教訓:第二席に座す、というのは右大臣、すなわち菅原道真公の暗喩か。