【GL学園もの?小説】親友の顔が国宝級すぎて困る件。
百合です。ガールズラブです。
まぁかなーりライトです。
イケメン女子×メンクイ世話焼き女子なので、ダメな方は見ないように。
はっきり言おう、人は顔だと。
全然取り柄もなく見た目もパッとしない私には、1つだけ特別な事がある。
それは!顔面国宝級の親友(女)がいること!!!!
隣にいるのもおこがましい。
とか思うのがおこがましくなるほど。
完璧な顔!!!!
あの顔のせいで、中身がアホなのに面倒を見てしまう‼︎
あんなに! アホなのに……‼︎
これは顔面国宝に振り回される、平凡なJKの奮闘記である。
女子高生。それは花盛りのお年頃。
素敵な恋愛を夢見て、勉強も部活も青春も頑張る……そんな少女漫画みたいな生活もできる、そんなお年頃。
だというのに。
私は、それを浪費させられている。
そう、全ては完璧すぎるアレが悪い。
「やちよー! またお前のイケメン捕まってるから、助けてきてあげろよ‼︎」
「大変そうだったよ!」
ねぇクラスメイトのみんな?
どうしてそれを、私に言うのかな?
というか、アレはイケメンではない。
ニコッと笑って流してみても、周りの皆さんは流されてくれない。
「やちちゃんが助けに行かんと、お姫様授業おくれちゃうよ!」
「そうそう、オカンが助けに行かないと」
「誰がオカンじゃ」
ひっきりなしにかけられる別々の外野の声に、鋭い視線と言葉をひとつだけ返しておく。
おうおう、そりゃ私じゃな?
私じゃ、お姫様にはなりませんけど。
ついでに王子にもなれんからオカンか?
せめて可愛さが望めないならさぁ? 従者とかナイトとか、もうちょっとカッコよくしてほしかった。
オカンも女の子やぞ!!!!!!
「っていうか、毎回そう言うなら引っ張って持ってきてよね! ありがとう‼︎」
「でた……オカン名物、ツンデレ豪語……」
「あの人並みをかき分ける勇気は普通ないよ……。乗り込んでいく姿は豪快でその勇ましさたるや、さながらセールに駆け込むオカン……」
「文句言いながら毎回行くもんね……もう愛だよ……」
酷いこと言われてる気がするので、ピシャンと勢いよくドアを閉めておいた。あいつらめ……口だけは達者なんだから……。
とはいえ、アレとちゃんとクラスメイトやれてる時点で、偉いんだけどね。
校内であの子を見つけるのは難しくない。
何故なら、あからさまな人の流れと。
おかしなくらいの人集りがあるから。
探そうとしなくても、目に入ってくる。
いや、惹きつけられるが正しいのか。
アレにはそのくらいの威力がある。男女問わず貰ってくる告白とラブレターの量は、無心でチェックさせられるので知っている。
まぁそうじゃなくても。
毎回目にしてますけどね……っと。
目標発見!
女子の黄色い歓声と、遠巻きに目で追いながら通りすぎる生徒たちの隙間から見えた。そのジャージ姿で短い髪を後ろにまとめた、すらりとした後ろ姿に声をかけようと、してーー。
「あ、やち〜‼︎」
知っていたかのように、タイミングよく。
くるっと振り向いた、その美しい顔は。
誰もがハッと息を呑む儚さすらあるのに。
私を見つけるなりくしゃっと崩れて、大口を開けて。オマケに、ブンブン手を振りだした。
「あぁ台無し……っ!!!!!!!!!」
私は頭を抱え盛大な落胆の声と共に、崩れ落ちた。
それは周りをビビらせて人集りが消えていく。そう、これをクラスメイトたちは『モーセの海割り』改め『オカンの人割り』と呼ぶ。大変不名誉だけど、便利な機能です残念ながら!
「どうしたのー? 迷子?」
「はい? むしろ人混みに迷えるお姫様を助けてこいって、家臣たちにねだられたんですけど……?」
「あ、お迎えありがとー!」
開いた通路をつかつか歩いてきた中性的なイケメン……に見えなくもない、実際は深層のご令嬢より無知なお姫様は、膝を抱えてこちらを覗き込む。
口を歪ませて恨み皮肉を告げてやっても、フワッと花咲く笑顔を見せて……一瞬その顔の良さにときめきかけた瞬間。
周りがバタバタ倒れていった。あぁ、血の海……。
そう、全ては。
この顔がいけないのだ。
この人を惑わす、国宝級の美しい顔が‼︎
顔を上げた瞬間、目があった瞬間……全ての苦労を水の泡に返しても、余りある潤いを強制的に与えてくるこの顔が……!!!!!!
「じゃ、いこっか。立てる? ほら」
差し出された手を少し睨んでから、不服ながらも手を乗せ引っ張ってもらって立ちあがる。
王子様ムーブにも見えなくない(実際は探させられてるので、全然王子ではない)この動作に、「はぅ……」と女子の息を漏らす声が聞こえてくる。
あぁうん、私への反応?
所詮モブオカンですからね。
カオナシ代役やらされてる。
乙女ゲームやソシャゲでいうところの、顔のないプレイヤーキャラ。オカンの担当はそれです。よって空気、もしくはそれに準ずる何かと化している。人扱いも怪しいね。
今の目の前の顔面国宝は、ともすれば少年に見えなくもない格好だから。乙女の心酔感がすごい……。
「それじゃ帰るね! ばいばいみんな〜‼︎」
しかし、この知性も感じぬぽやぽやな話し方なのに。
周りに手を振れば、民衆はにこやかに振り返している。ほわーとした空気は、ピンク色。大丈夫? 一回眼球のレンズ割っとく?
そして迎えにきたのはこちらなのに。まるで最初から私が連れられていたみたいに、手を引っ張られて帰路に着く。
逆ぎゃくぅ!!!!
私が連れ帰る方でしょうがっ‼︎
もっとオカンに感謝してほしいんですけど⁉︎
「瑞稀! あんた私への感謝は⁉︎」
「え、さっき言ったじゃん?」
「足りないんですけど⁉︎ 感謝が伝わらない態度なんですけどっ⁉︎」
迎えにいったのに!
何故かこっちが迎えに来られたみたいな!
その堂々とした態度なんなの⁉︎
瑞稀は堂々としている。しかもなまじ顔がよすぎるので、それだけで正解みたいになってしまうのだ。オカン許せない……‼︎
面倒見てるの、こっちなんですけどっ⁉︎
「とりあえずあんた髪ほどいておいてよ! それだけでも女の子の視線は微減するんだからっ‼︎」
「でもかわりに男子がふえるじゃん〜」
「制服の時よりまだマシだろうが……‼︎」
「えぇ〜。僕めんどくさいなぁー?」
「似合うからその一人称やめろ」
どこのヅカですか? ってくらい、少年度に極ぶりすると乙女のハートを撃ち抜いてしまうのだ。これだから顔がいいと怖い。
ちなみに、オカンも女子なので撃ち抜かれかけます。あぁそうですよ、私のためですけど⁉︎
しかも瑞稀は、あろう事か一人称が『僕』。
整った中性的な顔、たくし上げたジャージ。
もうただのイケメンにしか見えない。
だが女だ……!!!!!!
そう、その黒髪がさらりと解かれて。
少し邪魔そうに、顔を顰めながらも。
頬にかかる髪を耳にかけて現れるのは……。
「くぅ……! 美少女も最高……っ‼︎」
好き……!!!!
どうあがいてもただの美少女です。
本当にありがとうございました!!!!
思わず漏れてしまう本音は、口元を覆っても隠せなかった。
この顔が悪いの……! 全ての疲れや感情を吹き飛ばすこの顔が……!!!!
瑞稀は2度美味しいタイプです。
オカンのミーハー心も騒ぎます!
あぁ、本当に顔だけは推せる……!!!!
「? どうしたの唸りだして」
「顔面国宝を噛み締めてた……」
「なにそれ、こわいよ?」
こ ん に ゃ ろ う。
穏やかな気持ちで噛み締めてた尊き気持ちは、この顔から出るとは思えぬ情緒なき一言で薙ぎ払われる。あんたほんと、ある意味天才だわ。
「顔だけで女子力もカンストに持ってくもんな……こんなに情緒ないのに……」
「うん! 難しいこと考えられない!」
「元気か。笑っとけばいいと思ってんのか」
「ちがうの?」
「あってるよチクショウあんたの笑顔は世界を救う最終兵器よ……‼︎」
絶望を顔に携え、笑顔ときょとん顔に下唇を噛んだ。
このチート顔め……!
私が隣にいなかったらなぁ!
無差別テロが起こるんだからなぁ⁉︎
あと今のきょとん顔、後でもう一回やってもらおう。マジ盛てたわ。せめてオカンの心を潤す写真フォルダの肥やしになってもらおう。
「やちー、やちー?」
というか、私もっと褒章あってよくない?
たしかに顔という供給はあるけども?
最大瞬間風速は高いけども?
「やちってばー。もう教室つく……」
でもそれ、急速充電はされるけど。
放電もめっちゃ早いからね?
瑞稀の行動への消費電力激しすぎるし。
ぶっちゃけ見合ってないというか……。
「八千代」
グイッと手首を上に引っ張られて、横に無理やり向かされた。目の前に、透き通るような白い肌。そしてやたら整った目鼻立ちが迫る。
どこか、怒るような。
ふざけてない時の真剣な瞳。
人外級の美しさに、ひゅっと喉を鳴らす。
しゅ、しゅきぃ……!!!!!!!
じゃない‼︎ バカ、私戻ってきなさい‼︎
この化けの皮の下はアホンダラなのよ‼︎
でもその表情、アルバムに納めたい‼︎
一瞬骨抜きになったものの、オカン精神で持ち直した。
「く……っ! 私がその顔に弱いと知っての狼藉か……‼︎」
「昔の人かな?」
「その顔で誤魔化そうとしても、そうは行かないんだからね! 後で写真10枚撮らせてくれないと許さないんだからっ‼︎」
「話が噛みあってないし、写真はいつも撮ってない?」
ビシィッと指差して言ってやったら、少し唇を尖らせて小首をかしげられた。激エモか! その顔も後でやってもらうんだからね!
「」
「私があんたに求めるのはただひとつ! 呼吸して存在しているだけでいいから、迷惑をかけるな!」
「大いなる矛盾と安定の扱い……」
「当たり前よ! 雨宮瑞稀ファンクラブ会長×マネージャー業務=オカンを舐めないでよ」
「その方程式どうなってるの……?」
「コミュ内でも『お母様』って呼ばれてるから……」
「うちの母親よりオカン扱い……」
「当たり前でしょ。私以外に誰がこんな甲斐甲斐しく面倒見るっていうの? ダメな面みても幻滅しないのは、私がオカンだからです!」
「どうしてだろう。それは否定したい」
「どうしてっ⁉︎ もうこの域で愛してくれるのはオカンだけよ‼︎」
「むずしいことは言えないけど、やちはお母さんじゃないことを思い出してほしい……」
「うちの子が最近反抗期……!」
「あぁ〜。もう、みんなのせいなんだからねー?」
定期的に百合書いてみたいな、と挑戦するのですが(空野は恋愛系に性別含め地雷がほぼない節操なし)、まぁ書き上げられたことが今のところないです。
BLよりいけそうな気がするのですが……いまのところノーマルしか書けてないですね……。いやでも書き手としてはいけるとこまで挑戦してみたさはあるし、私の書くのなんかどうせ内容は少女マンガなので人間変わっただけみたいなとこあるし(?)
いやマジで頑張ってはみたいんですよねぇ。
純文学にも同性愛は結構多いテーマですしね。
別に拒否感は1ミリも持ってないはずなのですが、どうしてもテーマに性を意識させやすいので難しい面があります。力量を試されるんだよな〜。




