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書籍化・コミカライズ化進行中宣伝SS

おかげさまで、書籍・コミカライズ化企画進行中です!

お付き合い頂けると嬉しいです♪

『アイリス商会』


 新興貴族を味方につけた強気の事業展開と子どもから大人まで夢中になる斬新なアイデアで、いくつものトレンドを生み出す今最も注目を浴びている商会。

 商会長は決して表に姿を現さず、名前すらも一般には知られていない。

 そんな多くの謎に包まれている商会のクレティア王国第一号店最上階では、現在銀髪碧眼の美少女、クロエ・ヴァレンティ侯爵令嬢が、


「アイリス商会が我が国でも認知されてきた今、勝負を賭けなくてどうするのです!」


 と本を片手に熱く語っていた。

 そんなクロエを前に頭痛でもするかのように頭を抱えている少女がいた。

 彼女の名前はリティカ・メルティー。この国唯一の公爵家出身にして、気づけば王太子妃にさせられていた元悪役令嬢。そして、この商会を立ち上げた張本人である。


「待って。クロエ、本当に待って」


 もはやどこから突っ込めばと、リティカはチラッと積み上げられた企画書を見つめる。


「本当にやる、の?」


 冗談ではなく? と淡い期待を込めて確かめるも。


「勿論です! 即答でお返事させて頂きました!」


 堂々と言い切るクロエは、壁にババーンとリティカ(悪役令嬢)布教計画を貼り付ける。


「と、いうわけで。"追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する"書籍化&コミカライズ決定!!です」


 世間がリティカ様の魅力に気づいてしまったんですね、分かりますと謙遜しないスタイルのクロエ。

 何を隠そう彼女はリティカ(悪役令嬢)強火担。リティカの専属執事であるセドリックと張るレベルだ。

 ちなみに同担歓迎派である。


「なんですって! 小説もコミックスも、ってこと!?」


 回収したスチル以外でも私の推しがいつでも見れるなんて! と歓喜するリティカ。


「はぁ、楽しみですね! 布教用と観賞用と保存用。小説とコミックスそれぞれ最低でも3冊ずつは必要ですね」


 我が商会にお任せを、とクロエは自信満々に微笑んだ。


「と、いうわけで。今回は宣伝企画なのですよ」


「って、急に言われてもねぇ。……あっ!!」


 うーんと悩みながらパラパラとこれまでの軌跡をめくっていたリティカは突然声を上げる。


「城下町放課後デートイベントのスチル回収! それにお姫様抱っこの伏線も回収できてないじゃない!」


「あーそれ本編作成時に長いからって理由でまるっと作者にカットされた部分ですね」


「急なメタ発言。というかあの人(作者)はいい加減計画性とか進行管理とか覚えられないのかしら」


 最初に私が確認した企画書(プロット)と大分違うのだけど、と追放令嬢の中身を読み切ったリティカはパタンと本を閉じると映像記録水晶(カメラ)を手に取る。


「在学中に気づいて良かったわ」


 卒業してしまったら放課後デートが成立しないものと手帳を片手に本日のロアの予定を確認したリティカは、


「さっそくスチル回収に向かうわよ!」


 本編で回収しそびれたイベントの観察に出向くことにしたのだった。



ーー城下町にて。


 本日王太子であるロアと在学中にめでたく聖女認定されたライラは奉仕活動のため城下町にて活動中。


「ああ、なんて素敵なのかしら」


 さっそくターゲットを見つけたリティカはほぅ、とため息を漏らす。


「放課後、寄り道、制服姿なんてもうワードにときめきしかないっ!! 二人とも存在が可愛いっ」


 いいわぁと満足気に拳を握りしめるリティカを見ながら、


「まぁ、二人ともデートではなく業務真っ最中ですけどね」


 そう言ったのはリティカの専属執事セドリック。

 リティカのスチル回収行くわよ! の一言で全てを察し、屋外ロケを手配したできる執事様である。


「どうします、お嬢。せっかくなので少々トラブルでも引き起こしますか?」


 リティカの満足するスチルを撮るためなら多少の犠牲(王子の気苦労)は良しと思っているセドリックはリティカにそう尋ねるも。


「だめよ、セド。私は二人の自然な感じが撮りたいの!」


 余計なトラブルは不要よと二人をガン見するリティカは、日常パートの良さについて熱弁する。


「それにしても目立ちますね」


 スチル回収立ち会い初めてのクロエはそんなリティカ達のやり取りを見つつ感想を漏らす。

 セドリックの手にはレフ版をはじめとした様々な撮影道具が抱えられており、指示出しするリティカはオペラグラス持参。

 若干住人の視線が痛いのだが、この二人は全く気にする様子がない。


「よく当人達にバレませんね」


「堂々としていれば意外とバレないものよ」


 私、隠密行動は得意なのとドヤるリティカを見ながら、


「俺、お嬢のそのちょっとアホなとこ好きですよ」


 セドリックはうちのお嬢面白すぎると肩を震わせた。


一方、スチル回収される側はというと……。


「あのぅ、ロア様。ものすごーく見られてるんですけど」


 街中でオペラグラス目立ち過ぎません? とヒソヒソ声でライラはロアに話しかける。


「"気づかないフリ"が大人への第一歩だよ、ライラ」


 アレで気づかれてないと思ってるんだ、私の妻は可愛いだろうと堂々と惚気るロア。

 目立ち過ぎる屋外ロケは当然当事者達に気づかれていた。


「心配しなくても、各所にこっそり護衛も配置してるし、仮にリティカが一人になったとしても安全だって言い切れるくらい街の治安改善にも取り組んでるよ」


 リティカを逃亡先から連れ戻すにあたり、彼女の自由を確保すべく奮闘した結果、今では世界一安全な国とまで言われるほどに。

 おかげで観光客も増え、経済効果も上々。リティカのための政策は結果国全体を発展させていた。


「まぁ、10年計画だからまだ途中だけど」


 逃がす気ないから、とキラキラした微笑みを浮かべるロアを見ながら、


「王子の本気が怖すぎる」


 リティカ様ご武運をと権力には逆らわないスタンスの聖女はリティカを囲い込む柵の一部になる事を決意した。


**


「相変わらず、二人は仲良しね! 何を話しているのかしら?」


 あの一帯だけ空気が浄化されている気がするわと映像記録水晶(カメラ)を尋常じゃない速度で連写しつつ、推し達を前に拝み倒しそうなリティカ。

 非常に満足気なリティカの背後に控えるセドリックとクロエは。


「その他従者(モブ)の存在は丸無視ですね、お嬢」


「仲良し、っていうか……構図的には腹黒飼い主と脳筋駄犬にしか見えないのだけど。あら、ライラったらまた建物破壊したわね」


「ライラに行かせると費用対効果悪いんだよなぁ。回復魔法だけならいいんだけど、攻撃物理だし、基本破壊魔だから」


「めちゃくちゃ頭ぐりぐりされてるわ。痛そう」


「王子お嬢が見てるの気づいてるから笑顔キープしてるけど、アレは割とガチめに怒ってんな」


「あ、やっぱりバレてるのね」


「気づいてないのお嬢だけだから」


 ヒソヒソと小声で現状を話す。

 そんな囁きなど、スチル回収に夢中のリティカには聞こえるわけもなく。


「さすがライラちゃん! 足元を掬われてもアクロバットな動きで転倒回避」


 ヒロイン(推し)の活躍を大絶賛。


「素敵! 見事な反射神経だわ……って、これでは足を挫いてのお姫様抱っこは無理かしら」


 ライラをガン見していたリティカは、オペラグラスを片手にもっとよく鑑賞できそうなポイントへと歩みを進める。


「あ、お嬢! そっちは」


 セドリックが声をかけるより早く、オペラグラスのせいで周囲が見えていなかったリティカは段差に躓き盛大に転倒。


「いったーい」


「お嬢っ!! 申し訳ありません、俺が目を離したばかりに」


 セドリックはすぐさまリティカに駆け寄り主人の無事を確認するも。


「はっ、カメラは!?」


 リティカは自身の怪我など顧みず、手元のカメラが割れていない事を確認。


「あー良かった。カメラにもしもの事があったらと、寿命が縮む思いでしたわ」


「いや、お嬢。頼むからもう少し自分の身を案じてくれませんかね!?」


 相変わらずのリティカにため息を吐きつつ、


「足の手当が必要ですね。とりあえず屋敷に戻りましょうか」


 セドリックがリティカに手を伸ばそうとしたところで。

 リティカの身体がふわりと浮く。

 あっと思う間も無く、抱き抱えられ腕の中に収まったリティカの耳に、

 

「リティー、脇見もほどほどに」


 聞き覚えのある声が届く。


「……ロア様」


 びっくりして丸くなった空色の瞳には、少し拗ねた表情を浮かべる王子様が映る。


「リティーの浮気者。どうせまたライラの事ばかり見てたでしょ」


「い、いえ。そんなことはっ! セットでお二人を見てました」


 ぐっと食い気味に否定したリティカに、


「そこは嘘でも"あなただけを見てました"って言うところだと思うよ」


 とロアは苦笑する。


「さて、王城に戻ろうか」


 リティカの手当も必要だしねと言ったロアはリティカを抱えたまま歩き出す。


「え、あの? お仕事は? それに私自分で歩けますっ」


 お姫様抱っこのスチル回収は私ではないんです! と真っ赤になりながら降ろしてと懇願するリティカの主張は、


「仕事はおしまいだから大丈夫。怪我が悪化したら大変だから歩くのはダメ」


 王子様スマイルを浮かべたロアに一蹴された。

 そんな二人の背中を見送りながら、


聖女()の存在意義」


 いつの間にかクロエ達の側にいたライラがつぶやく。


「俺だって最上級ポーション用意してたのに」


 お嬢の怪我も想定内なのにとセドリックはぼやく。


「お二人とも。突っ込んだら負けですわ」


 魔王(寝た子)は起こしちゃダメなんですよ? と苦笑したクロエは、


「ま、平和が一番って事で」


 強引にまとめにかかる。


「さて、主役も連れて行かれてしまったことですし、我々は商会に戻ってオフ会でもしましょうか?」


 追放令嬢が配信された際のPR方法について検討したいですし、とプラチナカードを取り出して二人に協力を仰ぐ。


「わぁ、なんだかとっても楽しそうですね!」


「お嬢のためならよろこんで」


 二人の了承が得られたところで、


「ではでは、アイリス商会の社運を賭けて全力で推しますので、皆さまもどうぞご贔屓に」


 とクロエは最新版の映像記録水晶(カメラ)に向かってとても美しいカーテシーをして見せる。


「さて、宣伝に向けた撮れ高も十分。追放令嬢(リティカ様)の魅力を伝えるために作戦を練りますわよ!」


 そう言ったクロエは、追放令嬢の配信に期待しつつ、布教活動(推し活)の準備をはじめたのだった。

現在連載中

<a><https://ncode.syosetu.com/n9852ji">赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜</a>

こちらもよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
アニメ化された時、OPとかEDにつく○○製作委員会みたいなところが、アイリス商会になってると嬉しいですね。
最後まで楽しく読ませてもらいました! ありがとうございます!
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