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80.悪役令嬢は今日もスチルを回収する。

 いや、まぁ確かに結婚して欲しいとは言われたけども。

 元々婚約破棄しなければいずれは王太子妃になったんだろうけども。


「…………こんなの、聞いてないんですが」


 誰か説明求む。

 私は自分の指に嵌められた拘束具もとい結婚指輪を眺め、助けを求めるように視線を流すも全員から一斉に目を逸らされた。


「ん? 本人からの了承も取れたし、リティーは浮気性だから繋いでおこうと思って」


 私の腰に手を回しているロア様は満足気に指輪を眺め、


「うん、やっぱりリティカには藍色が似合うと思うよ」


 私の髪にキスを落とす。


「……うん、まぁ確かに好きですけども。そしてドストライクな可愛いデザインにキュンしかないんですけども。把握されすぎて怖いのは一旦考えないことにするので、とりあえず人前での糖度を下げて欲しいです」


「当社比10分の1だけど?」


「これで10分の1とか、心臓持ちませんから!!」


 あと浮気した覚えないっと強めに否定するも。


「お嬢は守備範囲バリ広の浮気性でしょ」


 何を今更と呆れた口調のセド。


「可愛くて綺麗なら男女関係ないですもんね」


 まぁ、好きに対して課金を惜しまない自分に正直な所がリティカ様の魅力ですが、とクロエ。


「リティカ様お気に入りに対しての愛情の注ぎ方半端ないですもんね。浮気性というより全部が本命な気がします」


 私はそんな博愛主義のリティカ様が大好きですよと前のめりにいうライラちゃん。


「ライラもよく受けたわね。あの話」


 労働ヒロインに攻略対象と結ばれなくてよかったのかと尋ねるも。


「条件飲んだらリティカ様がすぐ帰ってくるってロア様がおっしゃったので。それに憧れのリティカ様の側でお力になれる職とか役得でしかない」


 公爵家の就職試験、礼節実技でハネられちゃってとしゅんとするライラちゃん。マジか。確かに破壊魔のライラちゃんに公爵家使用人は向いてないと思うけども、力になりたい憧れの相手って私か!? と今知った。


「スイ、知ってたの?」


「きゅーゆゆ」


 ドンマイとばかりにスイが鳴く。


「諦めろ、リティカ」


 お兄様がため息交じりにトドメを刺しに来る。

 なんてこった。

 誰も味方がいやしない。

 それもそのはずで。


「殿下の執着は今に始まった事ではない」


 気づいてないのはお前だけだ、と全部の処理が完了し、すでにゲームオーバーである事をお兄様が告げる。

 そう、国外にいて尚且つ役目を終えたとばかりに燃え尽きて情報収集すらしなかった私は全く知らなかったのだが、この半年で色んな事が様変わりしていた。


 例えば、王族の婚姻に関する法整備が大幅に変更され、離婚が可能になった事で陛下のための後宮が解体され、近代の傾向を鑑みて、王様ですら一夫一婦制になっていたり。

(うん、確かに一夫多妻はヤダって言いました)


 例えば、聖女の身分の扱いが変わり、医療研究部門が新設されて、そこに所属する聖女自身による自由診療と治療の采配の保証がなされ、招集がかからない限りはどこで活動してもよいことになっていたり。

(稼ぎたい聖女を国家公務員として囲い込みって乙女ゲームとしてどうなのよ?)


 例えば、私の悪役令嬢としての振る舞いがまるで大神官を炙り出すための美談のように書き換えられて、私の悪評を吹き飛ばしたどころか外堀をガッツリ固められた挙句拒否権ないまま帰国と同時に婚姻のサインをさせられて王太子妃にさせられたり……etc。

(ええ、もちろん私のお友達(国の権力者)全協力でした)


 なんて数々の荒技をロア様は私を国に戻すためだけにたった半年でやり遂げたらしい。

 非常に既視感のあるやり口にお父様を見遣れば、


「殿下は優秀な生徒だったよ。リティカも精進するといいよ」


 情報戦がモノを言うってせっかく助言したのになぁなんて呑気な返事が返ってきた。まさかお父様の期待する"片方"がロア様だとは思わなかったとため息しか出てこない。


「ふふ、言ったじゃないか。俺はこのままリティカと結婚する気はないよって」


 ロア様は悪戯でも成功したかのように笑うけれど、さすがにこれは想像していなかった。

 つまり、この劇的な環境改善は全部、全部私のためで。

 ちょっと不在の間に、好き勝手し過ぎじゃなかろうか? とか。

 これ、もうそもそも「だが、断る」って選択肢なかったんじゃない? とか。

 思わなくもないのだが。


「ロア様の策士。騙されましたわぁ」


 私はわざと子どもっぽく頬を膨らませて見せる。


「……いつもの"可愛い王子様"の方が良かった?」

 

 策士で嘘つきな王子様が少し寂しそうな顔で私に尋ねる。

 ああ、コレ絶対分かってやっているでしょう?

 分かっていても結局、私に抗う術などないのだ。

 だって、ロア様がすごく、すごく、可愛く見えて、胸の奥がきゅんとトキメクのだから。

 もう、それだけで良しとする。


「ふふ、変なロア様」


 私はそっとロア様の太陽みたいに綺麗な金色の髪に指先を伸ばし、子どもにするみたいに優しく撫でる。


「実は腹黒策士だろうが、ヤンデレ属性付加だろうが、私はどんなロア様でも大好きですよ。私の推しなので」


 そう、答えなんて決まっている。


「そして、私。権力も大好きなんです。だって、悪巧みし放題♡」


 だって私、悪役令嬢ですから。

 そう言って私は手をかざして指に留まる、この国で2番目に権力のある女性の証に口付ける。


「せっかく引退してあげようと思いましたのに、この私を舞台に引きずり上げたのです。皆さま責任とってくださるでしょう?」


 私が願って叶わないことなんて何もないのよ? と私は悪役らしい笑みを浮かべ、


「さて、今度はどんな物語を紡ぎましょうか?」


 今日はどんな素敵なスチルが収められるかしら? と私はワクワクしながら大好きな推したちに映像記録水晶(カメラ)を向けたのだった。


Fin


お付き合い頂きありがとうございました!

悪役令嬢リティカのお話、無事完結です。

後日ロア様視点のお話あげようと思いますので、ブクマはそのままでお待ち下さい☆

お付き合い頂きありがとうございました!

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