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67.悪役令嬢の本気。

 エタラブのイベントの中でも学園祭スチルは特に人気があった。

 勿論、私の一推しは聖乙女ライラちゃんのヒロイン姿!

 ヒロインがヒロインを演じるとはコレいかに(笑)って感じなんだけど、演劇が普通に楽しみなので、まぁよし。

 で、肝心の私のクラスの出し物なのだけど。


「私を待たせるなんて、いい度胸ね? 早く注文しなさいよ」


 現在私はツインテールにミニスカメイド服を纏い、傲慢な態度でお客様の接客を行っていた。

 今の私は"ツンデレメイド"。

 ダメ元でベタにメイド&執事喫茶なんてどうよと言ってみたけれど、まさかこの世界で実現するとは思わなかった。

 クロエの交渉術凄すぎる。


「はいっ、喜んでっ! メイド様」


 ご褒美に踏んでくださいっの件は聞こえなかったフリをして、


「ちなみに本日のオススメは"とろけるガトーショコラ。アツアツのココアを添えて"よ」


 とメニュー表を指す。


「で、ではそれでお願いしますっ」


「ふん、別にあなたのためなんかじゃないんだけど」


 私はささっとオーダーを通すと、立ち去り際に振り返り。


「追加オーダーがあるなら、ま、また呼ばれてあげてもよくってよ?///」


 お客様達にちょっと照れ笑いをしてみせる。

 ざわつく会場に内心ガッツポーズを決める私。

 ええ、そうでしょうとも!

 ぶっちゃけるけど、私は乙女ゲームの悪役令嬢なだけあって、普通にしていれば誰もが振り返る絶世の美少女だ。

 そしてクロエプロディースで仕上がった最高のメイドがコレ!

 ツンデレメイドを演じるために、散々リテイクをくらいつつ練習してきた日々を振り返り、これで集客できなかったらガチ泣きだったわと自分を褒め称える。


「ぜ、絶対また呼ばせて頂きます」


 財布が破産しようとも! の部分は聞かなかったことにする。

 本当に破産させたら、私の悪女の噂に拍車がかかりそうだし。

 そしてやるからには全力で、とクラスの催しを取り仕切っているクロエはというと。


「おかえりなさいませ、お嬢様。本日のアフタヌーンティーはクランベリーのソルベ、イチゴタルトとスコーンをご用意しております。香り豊かなダージリンとともに華やかな一時をお楽しみください」


 銀髪の長髪を高く結い上げた麗人が微笑めば、キャーと黄色悲鳴がそこかしこから湧き上がる。

 男装したクロエの見た目は執事というよりも貴公子という呼び名がピッタリで攻略対象にも負けない存在感を放っている。


「さっすがクロエ。本気度ハンパないわね」


 今回の功労者であるクロエにこっそり話しかける。


「それはもう、打倒特別クラスですもの」


 私はやる女ですよ? というクロエがかっこよすぎて惚れる。

 まぁ確かにメイド&執事喫茶なんて伝統あるこの学園祭で一際異彩を放つ催しなだけに、話題性抜群で客足が全く途絶えない。

 キャストは生徒が演じているが、お客様にお出しする茶菓子は全て本物のパティシエが作り、裏で本職のメイドさん達が紅茶を淹れて用意してくれているので当然美味しいし。


「総合はともかくこの分なら飲食部門はうちのクラスがぶっちぎりで優勝なのでは?」


「当然じゃないですか! 利益度外視のコスプレ喫茶ですよ。優勝できなくては困ります」


 これは商会の売り込みでもあるんですからとクロエは食器類や装飾品を指しながらウィンクして見せる。

 本当に抜け目がないんだからと、私はアイリス商会で取り扱っているそれらに視線を流してクスリと笑った。


「ほら、お嬢。油売ってないでキリキリ働いてください。あちらでお客様がお待ちですよ」


 クロエと談笑しているとセドが私とクロエの間に割って入ってきた。

 

「……セド、なんで特別クラスのあなたがここにいるのよ」


「俺がいる方が売り上げ上がるでしょう?」


 演劇は裏方なんで今暇なんです、と勝手に私のクラスでボランティアに勤しんでいるセド。

 しかも公爵家の仕着せである執事服で。普段学園内では制服姿のセドが、執事服を身に纏い、執事のような対応をしている。

 そんな彼を一目見ようと押し寄せる淑女の皆様。

 さすが攻略対象。隠しキャラなだけあって集客率もチートだわ。

 そんなわけで他クラスのセドがいるというのに誰も異議を唱えない。


「全く。なら学生らしく学内周ってくればいいでしょう?」


 たまには羽を伸ばせばいいのに、と呆れる私に。


「俺的にお嬢のそんな姿見られるなんてご褒美でしかないんで、充分楽しんでますよ」


 宝石みたいに綺麗な金色の瞳が揶揄うようにそう笑う。


「本職なら絶対ありえない絶妙な丈のメイド服とニーハイとローファーによって惜しげもなく晒されるお嬢の脚線美! ドジっ子メイド案も良かったですけど、やっぱお嬢はツンデレ属性で正解でしたね」


 いいね、と言わんばかりに親指を立てるセド。

 いや、いいんだけど。

 やろうっていったの私なんだけど。

 でもさぁ、公爵家に仕える身としては一応止めようよ?

 なんか改めて言われると居た堪れなさを覚えるわ。


「……あなた、本気で楽しんでるわね」


「後でお嬢のメイド姿公爵家および城内にばら撒いて布教しようかと思うレベルで楽しんでます」


 公爵様にお嬢の勇姿を撮影してこいって頼まれました、と映像記録水晶(カメラ)片手にとんでもないことを言い出した。


「はぁ? ちょっと、私聞いてないわ! というか絶対やめて頂戴」


 流石にそれは恥ずかし過ぎる。


「いやまぁでも俺の雇い主公爵様なんで」


 お嬢の側にいられるなら俺は喜んで権力に屈しますと、セドは堂々と主人である私の事を売る。


「お父様めぇーーーー!」


 ふるふると肩を振るわせる私に、


「公爵様はともかく、城内布教はダメよ! こんな可愛いリティカ様を晒して攫われでもしたらどうしてくれるの?」


 学園祭の準備を通して親しくなった体で通しているクロエがセドを止める。


「そこは俺が全力でお嬢をお守りしますのでご安心を」


 恭しく礼をしてにこっと微笑むセド。リティカ強火担のセドは私に優しい相手には基本的に友好的だ。

 そんなセドの笑顔の破壊力は相当だったようで、顔を赤らめたクロエは、


「私、カップリング固定だったのですけれど、主従カプも推せる気がしてきましたわぁ」


 一途な純愛系も推せると両手を頬にあててそんな事を宣う。


「お嬢、愉快な友達できてよかったですね」


「……クロエ、私で妄想するのはやめて頂戴。切実に」


 これを愉快で済ませられるのはクロエの本気度を知らないからよとそんなことセドに言えるわけもなく私はハイハイと流す事にした。

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