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7.悪役令嬢的王子様育成計画。

 私がロア様を連れて来たのは、騎士団の訓練場。


「たのもー!! ですわ」


 アポを取ってないので正面突破。大丈夫。王子いるし、多分追い返されないと思った私の予想は正しかったようで騎士団長直々に丁重にお迎えされた。

 ビバ権力⭐︎

 確かこの騎士団長の息子も攻略対象だったはずなのだけど、姿は見えない。てっきり騎士見習いとして騎士団に所属しているものだと思っていたけれど……まぁそれは置いておくことにする。


「それで、本日はどのようなご用向きで?」


 普段来ることがない私たちの登場に驚いたようだけれど、騎士団長は騎士らしく傅いてそう尋ねてくれる。


「私とロア様の体力づくりに協力していただきたいのです」


 なので、私は訪れた目的を単刀直入に答えた。


「はい?」


「体力づくり?」


 2方向から同時にが飛んできたけれど、私はにこやかにうなずく。


「ロア様は第一王子です。王族であれば、剣を習うのは当然でしょ? ついでに私のことも鍛えていただければと思うのです」


 健全な精神は健全な肉体に宿る。

 というわけで、お勉強が苦手ならまずは体を鍛えるのがいいと思う。ついでに規律の厳しい騎士団で鍛えれば、精神だって鍛えられるでしょうし。

 と言う考えの下、私は王子育成計画の一環として、ロア様を騎士団にお連れしたのだった。


「リティー、私は別にそんなことをしなくても」


「護衛がいるから不要、ですか?」


 異を唱えようとしたロア様の言葉を遮って、私がそう尋ねると我が意を得たりとばかりにロア様は頷く。


「彼らの仕事をとってはいけないよ」


 ロア様がキラキラと可愛らしい笑顔で私にあきらめさせようとする。この王子、どうあっても面倒臭い事はしたくないらしい。


「そうですか。ロア様がそうお考えなら、私が異を唱えることはありません」


 私は一旦引いて見せる。

 だけど、私は知っている。本当はこの年であれば王族はもちろん貴族の令息なら剣の訓練をしなくていけないんだってことを。


「自分の身を自分で守れれば、いいこともたくさんあるかなぁって思っていたのですけれど」


 私は残念そうにため息をついて見せ、


「では、私だけでも鍛えていただけますか?」


 騎士団長の方を向き直し、改めて頭を下げる。


「メルティー嬢を、ですか?」


「ええ、私は将来ロア様にお仕えするのですもの。最低限何かあった時のために自分のことは自分でできるようになりたいのです」


 まぁ本当は国外追放される予定なんだけど、と内心で付け足しながら私はにこやかにうなずく。

 これから魔法を習うにあたり、基礎体力の向上は大事だし、何より最高の悪役令嬢たるもの武器の1つや2つ華麗に使いこなせる方がかっこいいし。


「リティー」


 驚いたような、感動したような声でロア様が私のことを呼ぶ。


「そんなわけで、ロア様。私、お茶飲んでる暇はございませんの。ロア様に会える頻度がさらに減りそうで、残念ですわ」


 そんなロア様に対してほぅと憂い顔で仕方なさそうな顔を作り、切なげに私はそう告げた。


「え?」


「だって、ロア様は私と一緒に体力づくりするのは嫌なのでしょう? なら仕方ありませんわー」


 今までお茶会に充てていたこの時間を体力づくりに使いますと私はロア様に宣言する。つまり私に会いたいのであれば、ここに来いと。

 割と強気発言だけれど、勝算はある。だってまだ王太子になっていない彼は、メルティー公爵家の後ろ盾を得るために、私の機嫌を取らなくてはならないのですもの。


「残念です、ロア様にも自分の身は自分で守れるようになっていただきたかったのですけれど。ロア様ができない分、私が補えるようにしっかりがんばりますね」


 私はあっけにとられているロア様に負けない位、キラキラとした笑顔を浮かべ、そう告げる。


「ご安心ください。万が一ロア様が怪我をなされた時には、私がお姫様抱っこして差し上げますわ」


「……お姫様抱っこ?」


 私はコクリと頷く。確かゲームの中ではそんなイベントもあったはず。

 もちろんお姫様抱っこされるのは、悪役令嬢の私でも、王子であるロア様でもなくヒロインのライラちゃんなんだけど。


「私が怪我をした時は、ロア様の側でお控えしているだろう護衛の方にお頼みいたしますわ。騎士団長のご令息、とか」


「だ、ダメ! リティカは私の婚約者なんだよ? それをそんな簡単に他の男に触れさせるなんて」


「だって緊急事態なら仕方がないではないですか? 失礼ながらロア様のその細腕では誰も支えられないでしょうし」


 私は悪役令嬢っぽく意地悪げに微笑んで、ロア様の腕から鍛え上げられている騎士たちに視線を流す。


「私、努力できる方が好きなんです。ロア様ご存知? 筋肉と体力は努力しないとできないんですよ?」


 まぁ、いずれ悪役令嬢として断罪される私の好みなんてロア様にとってはどうでもいいでしょうけど、王子ルートに入るためにはヒロイン好みに育ってもらわないと困る。

 ここは乙女ゲームの世界だ。たった1人のヒロインの愛を複数名の攻略対象で奪い合う仁義なき戦いが、あと数年後に学園を舞台に繰り広げられる。

 ロア様は確かに可愛いのだけれど、残念ながらそれはアドバンテージにならない。

 なぜなら、乙女ゲームなだけあって攻略対象は全員イケメンで家柄がいい!

 というわけで、一つでも多く強みがないとヒロインにアピールできないのです。今は本編が始まる前の準備期間。

 だから、私達はお茶なんか呑気に飲んでる場合じゃないのよ! と心の内で訴える。


「……努力」


 お、ちょっとは考えた?

 さすが9歳。まだ素直。


「それに(ヒロインと)デートをする時は、2人きりの方がいいじゃありませんか?」


 私はダメ押しのように、ロア様の耳元でそう囁く。

 確か王子ルートでは城下町放課後デートイベントがあるのよ。私はもちろんスチル回収しにこっそりついていくつもりだけど、その時護衛がぞろぞろ付き従っていたら、絵にならない!

 私は綺麗なキュンとときめく美スチルが見たいんですよ。

 この世界娯楽少ないし。


「2人きりでデート……したいのか?」


 私は力強く頷く。そりゃあ、もう! 乙女ゲームの醍醐味じゃないですか。つまりスチル回収イベント。


「ええ、愛しい殿方と(ヒロイン)の2人きりのデート。乙女の夢ですわ」


 少し考えた後でロア様は、


「……体づくり頑張る」


 しぶしぶ、といった感じだけれどロア様は了承してくれた。


「本当ですか! ロア様と一緒に鍛えられるなんて、私とっても嬉しいです!!」


 きゅっとロア様の手を両手で握り、私は内心でガッツポーズを決める。

 ちょっと照れたように頬染めるロア様は今日も可愛い。

 と言うわけで、お茶会改め王子育成計画が始動した。

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