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12.悪役令嬢と攻略対象の変化。

 月日はあっという間に流れて行き、私が前世の記憶を取り戻してから半年ほど経過した。

 ロア様には相変わらず避けられているのだけれど、なんとびっくりロア様が自らの意思で剣術を習い始めたらしい。

 一体ロア様にどんな心境の変化があったのかわからないが、騎士団長が指導しているので間違いは無いだろう。

 その上騎士団長の話によると、どうやらロア様は側近候補として、攻略対象その2(宰相の息子)その3(騎士団長の息子)と行動を共にしているらしかった。

 つまり私がお節介を焼こうが焼くまいが、シナリオに向かって滞りなく進んでいくと言うことなのだろう。

 男の子はやっぱり男の子と一緒にいる方がが楽しいのかしら?

 全く会ってもらえない婚約者としては、ちょっとジェラシーを感じてしまう。

 私は私で騎士団に度々出入りして諸々の訓練を積んでいる最中なので、1度くらい顔を合わせても良さそうなのだけれど、バッティングしないように徹底されているようで、王子どころか攻略対象その2、その3にすら遭遇しない。

 できることなら早々に宰相の息子と騎士団長の息子のルートを潰す可能性を探しておきたかったのだけれど、会えないことにはどうしようもない。

 というわけで、私は本日も自分にできること(魔術師見習い)を頑張るしかないのだった。


 私は魔法省のラボで実験結果を確認する。

 理想のカメラはまだ実現していないのだけれど、お兄様と共同で鋭意開発中。経過としては上々だ。

 なにせ、この魔道具の開発には宮廷魔術師トップクラスの師匠が全面的に協力してくれているので、失敗する気がしない。


『エリィ様との思い出を半永久的に閉じ込めていつでも眺められたら素敵じゃないですか?』


 と言う私のプレゼンに1も2もなく、食いついた師匠。

 うん、なんていうかやっぱり師匠には推し活の才能があると思う。

 欲望に忠実な辺りもかなり好感が持てる。


「リティカ、ちょっと来い」


 師匠にそう呼ばれ、何かしら? と首をかしげた私は、手招きする師匠のもとに素直に駆け寄る。


「やる。お前今日誕生日だろ」


 そう言って手に置かれたのはとても可愛いバレッタだった。


「し……師匠っ!!」


 私は感動したような声を上げ、


「師匠! 私好みのバレッタだなんて、実はロリコンだったんですか? でも残念、私にはロア様という婚約しゃ」


 私の言葉は私の頭上に無言で落ちてきた鉄拳によって不自然に途切れる。


「……いったぁー冗談ですってば」


 だって普段分厚い参考書しか渡してこない師匠が、いきなりこんな女の子の好みドンピシャみたいなものを渡してくるなんて、突っ込まずにはいられないじゃない。

 可愛い弟子のおふざけの一つや二つ笑って流してくれる度量が欲しい。


「いらないなら返せ」


「え、嘘! いる! いります!!」


 私は慌てて師匠からもらったバレッタを髪に留める。


「どうです? 似合いますか?」


「ああ。子どもらしくていいんじゃないか? お前魔法省に来るようになってからこういうの一切つけなくなっただろ?」


 言われて初めてそうかもしれない、と気づく。

 少し前(前世を思い出す)までの私はロア様に気に入られたくて着飾る事に一生懸命だったのだけれど、最高の悪役令嬢を目指して修行するのに華美なドレスや装飾品は邪魔であまり執着しなくなった。

 勿論、公爵令嬢として登城する時や王妃教育を受ける時は別だけど。


「師匠、ありがとうございます。エリィ様にもお礼をお伝えください」


 コレ選んだのエリィ様でしょ? と揶揄うように笑う私の視線を受け流し、


「それは本人に言ってやってくれ」


 師匠がそういったタイミングで軽いノックの後にすぐさまドアが開く。


「リティー様、お誕生日おめでとうございます!!」


 これお誕生日のケーキですと勢いよく私に差し入れしてくれたのは、師匠の奥様であるエリーゼ様ことエリィ様。

 わぁーと感嘆の声を上げて私は白い箱を受け取る。

 エリィ様に断って中を見れば私の好物のアップルパイが入っていた。


「公爵令嬢にお渡しするのに私の手製だなんてお恥ずかしいのだけれど」


「エリィ様のお手製?」


「前にアップルパイがお好きだって言っていたでしょう? 一生懸命練習しました!」


 焼きたてを届けたくて作ってたら遅くなっちゃってと笑うエリィ様。

 エリィ様は伯爵家のご出身だ。普通貴族令嬢は自分で料理などしない。宮廷魔術師である師匠のうちには使用人だって沢山いる。

 頼めばいくらでも手に入るのに、わざわざコレを私のために作ってくれた。

 貴族にしては珍しく魔力適性がないエリィ様が、魔道具だらけのキッチンでケーキを焼くなんてきっと大変だったろうに。


「わ、わっ、リティー様、どうしました?」


「う、嬉し……すっごく、嬉しくて。こんなふうに祝われた事、なかったからぁ」


 受け取った箱はまだ温かくて、これが私の事を思って私のためだけに作られたモノなのだと実感したら急にポロポロと涙が溢れてきた。

 私はこの国唯一の公爵令嬢で、その上第一王子の婚約者だ。

 誕生日にはそれこそたくさんのプレゼントが届く。だけど、そのほとんどは私個人を純粋に祝っているものではないと私はもう知っている。

 だからエリィ様のお気持ちが本当に嬉しかったのだ。


「リティー様」


「エリィ様、師匠も本当にありがとうございます」


 バレッタも嬉しいですと泣きながら笑った私の頭をエリィ様は優しく撫でる。


「本当に、お誕生日おめでとうございます」


 いい子いい子と子どもみたいに頭を撫でられた私はまた泣いてしまったけれど、9歳になったばかりの今日くらいは素直に子どもである事に甘んじようと思う。


「リティー様は本当に良い子ですね。私もリティー様のような素直で可愛い女の子が欲しいです」


 泣き止んだ私にふふっと笑ったエリィ様は、そっと自身のお腹を撫でる。


「生まれたらリティー様もぜひ可愛いがってくださると嬉しいです」


 随分と大きくなったエリィ様のお腹。師匠がもうすぐパパになるなんて、信じられない。


「勿論です。エリィ様はきっと優しいお母様になられますね。師匠は過保護そう」


 幸せそうな2人を見て、私まで嬉しくなる。

 ロア様が勝手に自分で剣術を学び始めたみたいにそもそも私が動かなくても教師×生徒ルートは存在しないのかもしれない。

 どうして変わったのかは分からないけれど、願望も含めてそんな事を考えた。

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