第17話 禁断の果実
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今朝見た夢を思い出す。最近ずっと前世の記憶が夢になっていた。
すべてを解決し、知の快楽に身を任せた至高の時間。
アダムとイブは、どうして知恵の実を食べて楽園を追放されたのか。それがよくわかる。人間のような愚かで不十分な存在が、味わってはいけない禁断の果実だ。
ある意味、薬物よりも危険なものが知だ。知は人間を傲慢にする。知を獲得すればするほど、神に近づける。人間の愚かな快楽に、私は身をゆだねていたんだ。だから、神から罰を受けた。
犯人の最後の抵抗である拳銃が火を噴いた。適当に撃った威嚇のための攻撃。当たるわけがないのに、その銀の銃弾は、神に近づいた人間を自称していた狼人間だった私の胸に直撃する。
痛みすら感じられずに、崩れ落ちる自分。これは、致命傷だとすぐにわかった。
「代表、代表。しっかりしてください。すぐに救急車呼びますからね」
助手さんが必死に私を助けようとしている。でも、もう助からない。ごめんね。まさかこんなことになるなんて。
「あり……ごめ……ね」
私の記憶はそこで途絶えている。
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「やっぱり、おかしなことだらけね」
ありえないほど早く燃え尽きた松明。松明の火源。不自然な遺体の場所。
おそらく、この状況は犯人の作為的な行動によって作られた不自然な環境。前世であれば、科学的かつ論理的に思考をまとめればよかった。でも、この世界には魔法がある。特に、厄介なのは、"闇魔力"。この魔法体系は特殊過ぎる。
Q:闇魔力とは?
A:他の属性にカテゴリできない魔力のことを言う。
こんな感じなんだからね。
やっぱり時計塔の秘密を解き明かさなくちゃいけないみたいね。
その前に……
「執事長さん。主さんの部屋を捜索させてください。もう一人殺されてしまったんですから、早く時計の謎を解かなくてはいけないんです」
「では、塔に入られては?」
「いえ、それは危険すぎます。もしかしたら、彼は塔の仕掛けに殺された可能性だってあるんです。まずは、彼女の目的とこの塔にある謎がわからないと入るのは危険すぎる」
私の直感がそう言っていた。
「わかりました。マスターキーを用意しましょう」
「お願いします。私は、資料の捜査のために、学者のマーラさんに協力をお願いしてきますので」
さすがにこの世界の古文書を読み解く技術はない。
そして、私たちは調査を開始する。




