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第15話 現場

「きゃあああああ」

 女性の声が響いた。その悲鳴によって、私たちは夢の中から叩き起こされる。


 慌てて寝間着の上にカーディガンを羽織る。グレースさんたちも悲鳴を聞いて廊下に飛び出てきた。よかった、グレースさんに何かあったわけじゃないのね。


「ミリア様。さっきの悲鳴は……」


「女の人の声だったわ。メイドさんかしら?」

 

「よかった。ミリア様が無事で。また、あなたが――あっ、ミリア様。中庭です!! メイドさんが」

 彼女に言われて、視線をそちらに向ける。

 メイドさんが腰を抜かしたように時計塔の近くでうずくまっていた。


「あれは……」

 私はその惨状を見て、声を失った。

 時計塔の入口には、あのガタイの良い男が倒れていた。

 砂が赤黒く染まっていた。


「グレースさん。部屋に入って。いい、私が大丈夫と言うまで部屋から出ちゃダメよ」


「でも……」


「お願いだから。もう、私にはあなたしかいないのよ」

 過保護だと笑われるかもしれない。でも、王太子殿下の一件で友達も私から離れていった。こんないわくつきの女、貴族の政略結婚には重すぎるだろう。だから、ずっと変わらずに接してくれる彼女が一番大事。あの愛の告白には驚いたけど、もうそれ以上の気持ちが私の中にあるのかもしれない。


「わかりました。でも、くれぐれも危険なことはしないでくださいね」


「約束するわ」

 そう言って、現場に走り出す。


 ※


 すでに現場には推理オタクさんと執事長さんがやってきていた。

 私はオタクさんに視線で確認する。


 彼女は首を横に振った。


「ダメね。背中からわき腹にかけて矢が突き刺さっているわ。でも、致命傷はおそらく頭部を何か固いものによって強打されたことによるもの。死後硬直も見られるから死亡から時間が経っているはず。弓矢でダメージを受けて弱っていたところを一撃で殺されたんでしょう」


 私もカノジョの考えに同意した。


「となれば、この弓矢によって弱ったところを狙われたということね。名前も教えてもらっていないけど、彼はここにいるメンバーの中で一番体が大きく力も強そう。だから、罠にはめて弱ったところを……」


「でしょうね」

 私たちは遺体の近くにいあるものを確認する。

 火が消えたたいまつ。そして、黒焦げになった棍棒のような木。どちらもほとんど燃え尽きている。

 これが凶器ね。松明が遺体の手に握られている。殺した後に残っていた松明を使って、凶器を燃やしたのだろう。


 たぶん、彼は私たちを出し抜いて塔に入って秘宝を見つけようとしていたんだろう。


「どうやら扉の鍵が開いているようです。彼がなにかしらの能力で開けたのかもしれません」

 執事長さんが冷静に分析していた。


 彼が何をしようとしていたかはなんとなく察しが付く。でも……


「ねぇ、この遺体の状況。何か変じゃないかしら?」

 私は違和感を口にした。

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