第14話 第二の事件
「バカなやつらだぜ。呪いなんてあるわけがないだろ。あのお宝は俺が独り占めするんだよ。女主人も死んで、邪魔するやつはいなくなった。あいつらはここを調べようとしないだろうから、真実の日時計がなくなったことにも気づかないだろうさ」
俺は夜になるのを待って、時計塔に忍び込んだ。鍛えぬいた体でコソコソしているのは気に障るが仕方がない。今回の獲物は大きいからな。
カギはかかっている。だが、俺の魔力は特殊なんだ。
どんなカギだろうとも開けることができる。闇魔力・盗賊の技術。これがあるから俺はここに呼ばれたんだろう。たとえ、どんな封印が待っていても、魔力すら超越するこの技術があれば……
誰にもバレずにうまく塔の中に入ることができた。松明に火をともす。
簡単に地下室へ繋がる階段を見つけることができた。
「楽勝だぜ」
意気揚々と地下室へと向かう。水の音が聞こえた。どこか雨漏りでもしているのか。まあ、古い建物だからな。
もしここに誰かいても問題ない。今回の謎解きお遊戯会の出席者たちはヒョロガキと女ども、そして、老執事くらいしかいない。体格差と力でねじ伏せられるだろう。
階段を降りきったところで、牢屋が見えた。その奥に青く輝く日時計が鎮座しているのが見える。
「これが伝説の……別名、"傾国の時計"。大国すら傾けかねない最悪の秘宝。時間や領域すら操ることができる。俺が王族よりも力を持つことだって夢じゃない」
魔力を解き放った。牢の鍵が開く。
「簡単すぎるぜ」
こんな簡単でいいのか。一瞬疑問に思うが、目の前にご馳走を見せられて我慢ができなかった。
「これで俺は大富豪だ!!」
青く輝く秘宝を手に持ったはずの俺は……
謎の光に包まれた。
※
「どういうことだよ。さっきまで俺の手の中に、お宝が。いや、それよりもどうして俺ここにいるんだ。さっきまで地下にいたのによ」
光が晴れると、俺は塔の外にいた。
さっきこじ開けたはずの塔の扉も締まっている。どういうことだよ。もう一度、扉に手をかけると、身体にしびれが走った。扉は開錠できたはずなのに、力が出ない。
息ができないほど苦しい。わき腹が熱い。
「これは毒か?」
扉にもたれかかるように倒れる。なんとか叫んで助けを呼ぼうとしても、声すら出ない。
これはダメなやつだ。俺は完全に――
『大丈夫。そこまで苦しめないから。あとは一瞬』
遠のく意識の中で声が聞こえた。薄れ行く意識の中で、目の前に現れた人物を見ながら、俺は絶望に染まる。
最期の瞬間。俺の頭には鋭い衝撃が走り去っていった。




