第12話 呪い
私たちは女主人の部屋も確認する。
自称私立探偵の彼女も協力してくれるということで、執事長さんと3人で部屋の扉を開けた。
きちんと整理された部屋。争った形跡はない。そもそも部屋にはカギがかかっていた。執事長さんが持ってきてくれたマスターキーがなければ、ここは完全に密室だった。彼女が身を投げた後は誰もここに入ることはできなかった。主の持っていたカギは、机の引き出しに入ったままだった。これで部屋の鍵は中からしかかけることはできない。
仮に、第三者が主を脅して、身を投げるように命令したとする。
でも、外から部屋に出る方法が無くなる。同じように窓から逃亡したとしても負傷は免れない。
「ねぇ、仮に真犯人がいて、窓から逃亡したとして、私たちに見つからずに消えることができると思う?」
自称私立探偵は答える。
「どう考えても無理よ。私たちの注目は常にあの部屋にあった。誰かが出てくるならすぐに気づくし、あの高さから落ちたら骨折くらいのダメージが入るはず。いくら治癒魔力の天才でも、歩けるようになるには時間がかかるわ」
「そうよね。だから、あの女主人以外がこの部屋にいたという可能性は完全に排除できる」
私の結論に同業者は頷いた。
「さすがね。もうそこまでの結論を導き出してしまうとは……」
「これくらいは普通じゃない? 問題はこの遺言書ね」
私たち3人は、机に置かれたおそらく女主の直筆の遺言書に目を向けた。
※
親愛なる探偵諸君
さぁ、ゲームの始まりです。すべての真実は、日時計と共にある。
私の死がすべての始まりに……いや、封印解放のトリガーになる。
はたして、あなたたちはこの館の謎を解くことができるかしら。
それとも、この歴史の重みに押しつぶされるのか。
あなたたちにとって、呪いの言葉になるでしょう。好奇心に支配されたあなたたちには。
さぁ、解き明かして見せなさい。私の……いや、一族のすべてを賭けたこの謎に。
最後にもう一つプレゼントがあるわ。もうそろそろ気づいている頃じゃないかしら?
※
意味不明な遺言ね。
彼女の狂言的な自殺がこの館の謎に何か関係あるということね。ここまで挑戦的に書かれてしまえば、私たちのような人種はやる気になる。
塔の中に早く入りたい。
まだわからないことだらけ。
手紙に書かれていたもうひとつのプレゼントって……
「執事長。大変です。この館に繋がる橋が……燃えています!!」
メイドさんが慌てて部屋に入って来た。慌てて窓から橋の方向を見る。黒煙が上がっていた。
なるほど、クローズドサークル。これは最高のプレゼントだわ。
明日は更新お休みするかもしれません!!よろしくお願いします!




