表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/37

第11話 遺体の謎

 私たちは慌てて中庭に出た。女主人の部屋は2階にあるという。ナイフがどこまで深く刺さっているかにもよるが、あれは果物ナイフ。人は2階から落ちたとしても本当に打ちどころが悪くなければ、致命傷にはならない。


 なら、私の回復魔力で助けることは可能かもしれない。救える可能性は高い。時間との勝負だ。早く負傷者の元に向かわなくては。


 しかし、中庭に倒れていた黒いローブを被った女性らしき人影は突然、炎上した。

 どこからともなくローブが燃え、身体を包んでいく。


「うそ……」

 思わず絶句してしまう。どうして……


 火の手は一瞬で激しくなり、近くのブロック壁まで黒く焦がした。

 何かの魔道具の発動か。女主が自分の身体に火をつけたとしても、ここまで激しく燃え上がらせるのは難しいだろう。最上級クラスの火属性魔力。でも、彼女の得意な魔力の属性は闇。歴史上に残る天才魔導士は別だけど、得意属性以外の魔力を最上級クラスにすることは普通はできない。むしろ、得意属性すらその域に達すれば、天才のように扱われる。


 そう考えれば、彼女の身体に何か魔道具が仕込まれていて、それがナイフの一突きをトリガーに発動し、身を焦がしたと考えるべきでしょうね。


 あまりに火の勢いが強いせいで、我々は消火すらろくにできずに、自然に火の手が消えるのを待つしかなかった。


 残されたのは黒焦げの遺体と胸に突き刺さっていたであろうナイフ。

 あまりの惨状に、グレースさんとメイドさんは悲鳴を上げて、うずくまっている。


 私は状況をしっかり確認しようと、それに近づいた。

 あれほどの火の勢いだったせいで、一見するだけでは性別の判断すら難しいほど損傷している。

 この世界の法医学のレベルがどれほどかは詳しくは知らないけど、致命傷が火傷なのか、一酸化炭素中毒なのか、それともナイフなのかはわからないわね。


 時計塔はまだ、主の部屋に影を落としている。

 どこからどう考えても自殺。でも、何か引っかかる。


 私がずっと疑問に思っていると、後方にいたメイドさんが奇声を上げていた。

 さきほどからショックで震えていたから、よほどショッキングなのだろう。無理もない。


 心配して声をかけようとした瞬間……


「呪いよ。これはきっと……真実の日時計にまつわる呪い。私達、全員呪い殺されちゃうんだ。死にたくない、死にたくないよぉ」

 それはまるで怪奇伝説をモチーフにしたミステリー小説の開幕のゴングのように聞こえる。おそらく、彼女も同じ気持ちだろう。


 灰色の脳細胞を持つ名探偵の名言を口ずさむ。


「私の小さな脳細胞が動き始めた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 遺体を損壊させるメリットは身元を分からなくさせる事…… さて?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ