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第6話 推理オタク

 結局、私たちは推理談議で盛り上がった。


「すごいわ。まるで本の中から出てきた名探偵ね。天候と地面の濡れ方、そして消失した凶器からすべてを割り出してしまうなんてね。興奮しちゃう。冷徹令嬢なんて失礼なあだ名ね。こんなにかわいいのに。ねぇ、友達になりましょう。いくらでもミステリーについて語り合いたいわ。他にはどんな事件を解決したの?」

 かなりぐいぐいと来ている。まいったわね。これじゃあ話が終わらない。


「それは秘密です。やはり、同業者さんですからね」


「あら、残念だわ。もっと面白い話を聞きたかったのにぃ」

 さっきまでの怪しい暗殺者のような美人は子供のように赤い髪をかき乱す。


「それよりもこの館の謎ってなにかわかってますか? 実は、私は主さんに急に呼ばれただけで、ここらへんの伝説とか言い伝えに詳しくなくて」


「ああ、そういうことね。なら、教えてあげるわ。先ほどの推理話のお礼よ。たぶん、あなた以外の招待客はみんな知っている話だしね」


 ※


 昔々。この周辺を治めていた偉い貴族がいました。彼は趣味でいろんな時計を集めていたのでした。ある日、彼が集めていた時計の一つを見て、国王陛下は言いました。


「お主の持っている真実の日時計を余に譲ってくれ。いくらでも出す」と


 しかし、その真実の日時計は、彼の母親の形見だったのです。彼は王の申し出を丁寧に断りましたが、王様は逆上し貴族を処刑していました。そして、その後から王国では異界から現れた魔物たちが出現し、土地は荒れ、病は蔓延してしまいました。最愛の王妃すら流行り病で倒れたことによって、国王は自分の行いを深く反省し、処刑されてしまった貴族の魂をなだめるためにこの館を作り、塔のどこかに真実の日時計を安置したことで混乱は収まりました。


 ※


「それがこの館に伝わる伝説よ。処刑された貴族の子孫は今も家を継いでいて、ここの主がその末裔ってわけ」


「でも、おかしいですね。あの塔のどこかにその日時計があるのならすぐに見つかるはずですよね? 居住スペースもほとんどないんじゃないですか」


「ええ、そうよ。だから、みんなそのいわくつきの宝物を見つけようとしたんだけど、実は高位結界魔力に酔って封印された地下室があるの。その地下室の封印を解くために謎を解かないといけないらしいんだけどね。どうやらそれを私たちに委託したいのよ」


 これで話が見えてきた。でも、おかしいことばかりだ。どうして、そんないわくつきの宝物の封印を解こうとしているのか。理由が見えてこない。そして、もうひとつ。


 その宝が私の異世界転生にも大きくかかわってきているのではないかということね。だって、そうでしょう。その真実の日時計によって、異界から怪物がこちらに送り込まれたのだから。


 なにか裏で動きがある。私の探偵としての直感がそう言っていた。


『人生の悲劇は、人は変わらないということです』


 アガサ・クリスティーの名言を思い出す。私はこんな状況でも興奮してしまう業の深い女だった。

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