板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年8月4日
山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。
もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。
このはな村の設定は、第十部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月9日」および第十一部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月16日」の本文にて紹介しています。
みなさんこんばんは、板谷楓です、と思わせてからの! みよたみのりでーす。
今日は板谷楓さんが本業の方で残業があるため、ボク、みよたみのりが代打を務めます。
週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。この番組では、このはな村のさまざまな情報と、落ち着いた音楽、そしてわたしのとりとめもない雑談を、ミックスさせてお送りしています。かたい話ではありませんので、どうかリラックスしてお聴きくださいませ。
というわけで改めまして、みよたみのりです。板谷楓さんは残業真っ只中なので本日代打を務めております。
楓さんは村にある会社でお仕事してるんですが、何を作ってるかというと、主に子ども用の医療用装具なんです。楓さん自身も足が不自由で子どもの頃から装具を使ってるんですが、装着経験のある自分が今度は作る側に回れば、付ける人の気持ちになって作れるはず! と思って今の会社に入ったそうです。
それで、装具を作るのは夏休みが一番忙しくて、長い休みに子どもが装具を着ける訓練をするのが多いのかな? だから楓さんの会社は忙しいということだったと思います。でも会社も夏休みは必要だから、早めに残業を分散してやってるんだそうです。
今日はボクの代打回なのに、スタジオ前の中央広場にはたくさんの方がいらっしゃっています。観光とか、別荘にお越しの方ですか? あ、手を上げてくださいまして、ありがとうございます。たくさんいらっしゃいますねー。
地元このはな村の皆さんもいらしてますね。ボクを知ってる方もいらっしゃるようですし、ボクと仲の良かった友達も来てますね。
あ、いま、スタジオのガラスに顔を押し付けて、ブタの鼻〜、みたいなことやってるのは、松山さんごという、このはな村に住み着いている謎の要注意変態動物ですので、無闇に近づいたり、餌を与えたりしないでくださいね。
さんごちゃんが先ほどのボクの紹介に不満なようでスタジオのガラスを引っ掻いて抗議してますが無視して、今日のテーマは!
このはな村、夏の魅力はこれだ!
ということで、夏のこのはな村の魅力って何だろう? というギモンにお答えしよう、今日はそんな趣向でまいりまーっす。
このはな村の魅力、その一!
涼しーい!
とにかく! 涼しいですよね! おースタジオ前のお客様も皆さんうなずいてくれてますねー。
このはな村は、過去一度も真夏日になったことがないのは結構有名だと思います。今年は全国的に猛暑も猛暑なので、いよいよ真夏日ゼロ記録も止まるかなーと戦々恐々のこのはな村民なわけですが、今のところ大丈夫そうです。
で、現在の気温、スタジオのある村役場分署の温度計では、あっ今日はまだあまり下がってないですねー、二十度です。
あ、スタジオ前の皆さんが、おやっという顔をされていますね。いやー、このはな村の夏の日々の最高気温が、だいたい東京の最低気温まで行くか行かないか、って感じなので、夜は普通に十五度割ることもあるんですよ。
とっても涼しいんですけど、でも涼しすぎて風邪ひかないようお気をつけくださいね。
このはな村が涼しい秘密はですね、もちろん標高が高いこともありますが、三方を山に囲まれているのでそこに太陽が隠されて、日がさす時間が短いとか、あと北側は高原になって開けているので、盆地のように暑さがたまったりはかしないんだそうです。
あと、村全体の地面が北から北西方向に傾いてるのも関係するみたいです。
このはな村の魅力、その二!
食べ物が、安くて美味しい!
観光地って、ご飯屋さんとか結構高いお値段じゃないですか。あと最近は食べ物がどんどん値上がりしてますよね。
でも、このはな村はどっちも安いです! うちの村は別荘があるので長期滞在の方々が多いんですよね。そうなると、毎日観光地の高いディナーとかばっかじゃ胃が疲れちゃうんで、質素なものが好まれて、必然的にお安くなるのはあるみたいです。
それと、基本的な食べ物は村で大量に作ってるのも大きいですね。村の食料自給率が高いんですよ。野菜はもちろん、麦やソバなどの穀物でしょ? あと牛乳もたくさん作ってますし、牛乳は牛のエサも自給自足ですからね。
牛乳の生産調整ですか? 難しいことはよく分かんないけど、このはな村営牧場では牛乳が余ったらチーズとかにして保存してます。何年も熟成させられるチーズも作ってるので、無駄がなく安い牛乳を安定して飲むことができます。
このはな村の魅力、その三!
緑が美しい!
これは春夏中心の話になりますけどね。秋は赤や黄色に木々が色づきますので。あと冬は雪で真っ白ですし。でも春夏は緑が多いです。それも涼しさのひとつの理由ですね。
このはな村で道を歩いてると、木陰が途切れないんですよ。ほとんどの道が並木道になってるんです。あ、お気づきの方いらっしゃいますね、うなずいてくれてます。
高原の陽射しは強いですからね、いくら涼しくても日なたにずーっといると暑くなりますし、あと日焼けしやすいですよね。このはな村は外国人の別荘が多かったんで、そこの人たちのアイデアみたいです。ヨーロッパより日本の方が緯度が低い分、陽射しもも強いですもんね。
あとオススメは、番組のアーカイブに残ってますけど、楓さんが前にリポしてくれた高天原ですね。一面の草原が広がってて、特に夏は花が多くて、お花畑みたくなってます。
高天原への行きかたです。天狼神社前バス停を降りるとすぐ、遊歩道の入り口があります。遊歩道と言ってもほぼほぽ山歩きみたいなものなので、サンダルとかで歩くと危険なのでおやめください。
また、この季節は、今日もそうでしたが、午後になると積乱雲による大雨が毎日のように降ります。出発の時は晴れていても急に天候が崩れてきますので、雨具は必ず持参してください。あ、高天原は並木道と違って原っぱの中を道が通っているので、傘は危険です。落雷のおそれがあります。カミナリが鳴ったらレインウェアを着て、その場で姿勢を低くして、雷が行ってしまうのを待つようにしてください。
詳しくは、観光案内所やビジターセンター、各宿泊施設などでお尋ねください。
食レポでーす!
このはな村の夏といえば、とうもろこし!
ということで、今日は中央広島にも屋台が出ている、焼きとうもろこしをいただきまーっす。
このはな村では八月がとうもろこしの収穫最盛期です。栽培している品種は、ハニーバンダムとか昔ながらのが多いです。村の気候に合っていて、丈夫に育ってくれる品種が向いてるんだそうです。大人の方はよく、懐かしい味だと言ってて、評判がなかなか良いんですよ。
おしゃべりしてる間にも冷えてっちゃうので、さっそくいただきまーす!
んー! あまあーい! 表面に塗られた醤油が香ばしくて、適度な塩味が、より甘さを引き立たせますね〜。
この、焼きとうもろこしを売るのは、農家の子たちの良いお小遣い稼ぎなんですね。ちょっとした机と七輪があれば開店出来ちゃいますから。値段はだいたい二百円が相場かな、今は。産地直送も直送、すぐ裏の畑で取りたてだから輸送費ゼロだし、最近流行りのブランド品種は村の気候に合わなかったりするのもあるんで、その分安いです。
この懐かしい味ってどういうのかっていうと、歯触りとかのことなのかな。実が固くてしっかりして、あと皮が厚くて歯にはさまったりするんですけど、それが良いというか、ボクもこういうのを食べ慣れてるから、柔らかいのが物足りないこともありますよ。でも蒸したとうもろこしがふわっと口の中で溶けるのは、新品種ならではですよね。もちろんそういうのも好きです。
んで、あえてデメリットを言いますと、口の中に皮が残って、しゃべりにくくなりゅんれすよ。なもごもごしちゃって。なもれ、曲をかけて、そのあいまみ食べちゃいはふへ。
板谷楓のスイートメイプルタイム、カッコ、代打みよたみのり、カッコ閉じ、お開きの時間が迫ってまいりました。
久々のひとりしゃべりDJでしたが、皆さんが暖かい目で見守ってくれたおかげで、無事終えることができました。ありがとうございます。
ちなみに、本日のボクのコーデは量産型インスパイアでーす。このはな村にいる間は、ずっと女子モードでいきまーっす。
なお、来週のこの番組はお休みです。なぜなら、来週金曜日は祝日だからでーっす! お役所の中にあるスタジオなので、暦どおりにお休みしまーす。
なお、このはなFMは緊急時には災害などの情報をお送りするため臨時放送を行いますが、その際ボクは出演しませんので、悪しからずご了承願いまーす!
それではまた次回、ボクの担当か楓さんの担当か分かりませんが、とにもかくにも、ごきげんようーっ!
ダラダラっと。このはな村の設定紹介回になってしまいましたが、一定のペースで書き続けることに意味があると思って続けております。
それ以外の要素を何か探すとすれば、伏線回収的なものは意識しました。楓の仕事がお盆前には忙しいと言わせつつ、先週分では普通に登場していたので、今週こそ休ませようというか残業させた方がいいなと。
あと、このはな村の涼しさの秘密もちょっと披露しました。高原と盆地って違うんですよねやっぱり。
祝日はラジオのレギュラー番組お休みという設定ですが、作者は別作品を上梓する予定ですので、その際はご一読、どうぞよろしくお願いいたします。