板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月23日
山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください(もちろんフィクションなので番組も放送局も実在しません)。
もっともなんだかんだで、作者が現実の世の中に対して抱いている不平不満を登場人物の名を借りて吐き出してるだけという話もありますが。
このはな村の設定は、第十部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月9日」および第十一部分「板谷楓のスイートメイプルタイム 2023年6月16日」の本文にて紹介しています。
みなさんこんばんは、板谷楓です。
週末の夜、このはな村役場分署の一階サテライトスタジオから生放送でお送りする番組、板谷楓のスイートメイプルタイム。
この番組では、このはな村のさまざな情報を、落ち着いた音楽を混えてお送りしています。かたい話ではありませんので、どうかリラックスしてお聴きくださいませ。
先週と先々週のこの番組では、このはな村の歴史についてざっとお話しました。そしたらやっぱり、SNSとかで質問がたくさん寄せられたんです。ありがとうございます。
今日はそれについて、出来る限りお答えしていこうと思います。
今日はこちらいきましょう。
「コノハナサクヤヒメを火難からの守り神として奉るのなら、浅間神社に祀られるのが普通ではないか?」
うん、これよく観光客の方に聞かれますね。お答えします。
コノハナサクヤヒメは主に火を司る神様ですが、他にも水の神様、安産の神様など、色々なご利益をもたらしてくれます。そして火山のそばにある浅間神社、安産祈願の子安神社などでよくお祀りされています。
このはな村に創られた神社の最初の名前は、実はよくわかっていません。ハッキリ断定できる記録が残っていないからです。
ところで現在、村にあるその神社は天狼神社と名乗っています。そして天狼神社の祭神は、文字通りオオカミです。
なぜそうなったかと言いますと、このはな村のまわりには火山がたくさんあるので、コノハナサクヤヒメはそれらの火山を鎮めることで大忙しだったみたいなんですね。このはな村はそれらの火山からちょっと離れたところにあって、遠くから同時にいくつもの火山を見張るっていう、なんというか司令塔的な役割なんですね。
そうなると、このはな村に戻るヒマがなくなっちゃって、そこで神社の神使だったオオカミを神様に引き立てて祭神としての務めを任せた。以来ここは天狼神社と呼ばれるようになった、ということなんです。
あ、ここで、オオカミが神様ってどういうこと? って話にもなるんですよね。
昔から日本の農村は、虫や鳥、ケモノなどに田畑を荒らされたる被害があったんです。このはな村は、先週もお話しましたが薬草を採って利用していたので、それらが食べられちゃうと困るんですよ。
だからシカなどの動物に対する天敵だったニホンオオカミは、神様の御使いだってことになったんじゃないか? って村では言われています。
ちなみに、ニホンオオカミは絶滅したと言われていますし、それが一因でシカなどの害が増えたという説もありますが、今でもシカやサルはほとんど見ませんし、里に降りてくることもまずありません。
イヌワシが住み着いているのも良いんだって話がありますけどね。英語でゴールデンイーグルと呼ぶのにならって、このはな村では金ワシと呼びますけど。金ワシはシカの子どもくらいなら狩るのは余裕なんです。
でもこのはな村ってとても気温の低いところですから、農作物を育てるにはあまり向いていない代わりに、それらを狙う生き物も、もともと少なかったのが大きいみたいです。
ちなみにそんなわけで、害虫も少ないんですよ。虫がいないわけじゃないですが、下の方よりはるかに少ないですね。
そういう意味でも、夏のこのはな村へのお出かけ、オススメですよ。
食レポでーす!
今週は、このはな村のブリテンカレーでーす!
というか、日本にカレーを伝えたのはUKの人々だと言われているので、日本のカレーとどこが違う? って話でもあるんですが、違うところはあるんですよ。
先週お話したように、このはな村ではイギリスのことをブリテンと呼び、ブリテン出身の人々も別荘をこの村に作ってやがて住み着いたので、その国の食べ物が昔のまま残ってるんです。
昔から、ブリテンのカレーにはいろいろなスタイルがあったらしいんですが、このカレーの具はローストビーフだけです。
これは、ブリテンには日曜日にローストビーフを作って一週間それを食べるという習慣があって、その中でローストビーフカレーもよく作られてたみたいなんです。
でも今は家庭料理の素朴さはあまり残ってないみたいですし、それ以外のバリエーションも増えていったんだそうです。だからこのはな村に昔のブリテンのカレーが残ってるんです。
早速いただきまーっす!
からーい!
でも、おいしーい!
このブリテンスタイルのカレーは、昔からのレシピを守っているお店や家庭もあれば、色々なアレンジしたものもあります。
わたしは今日、アレンジしているお店のものをテイクアウトしてきました。ここのお店では日本のスパイスをうまく使ってまして、山椒とかワサビなんかを隠し味にしてるんで、辛味も複雑なんです。
夏のカレーは食が進みますよねー。
板谷楓のスイートメイプルタイム、お開きの時間が迫ってまいりました。
天狼神社は、昔も今も質素でちっちゃな神社ですが、ゆっくりと落ち着けるところでもあるので、村にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
それではまた次回、ごきげんよう。
「カレー」の広まり方や世界各国のバリエーションはとても複雑で、情報も錯綜しているようです。
で、英国のカレーが日本のカレーのルーツだとする説が結構多いですね。ですがその後日英でそれぞれ独自の進化をしたようでもあります。