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「ここからは、青春のターン」  作者: すたふり
31/33

「捨て身」




「あれ春宮じゃね?」    



「ホントだ。あいつ休みじゃなかったっけ?」



「休んでたな……。つかなにしてんのあいつ?」




 スマホを黒板に固定させ、ベリベリとセロハンテープで貼り付ける。


 カメラの位置、角度、共に問題なし。


 この状態ならテープが剥がれない限りはしっかり撮影出来る。



 胸ポケットに入るもう一台のスマホも、忘れることなく録音アプリを起動している。


 このためだけに今日休んで契約しに行ったから、ちゃんと働いてもらわないと……。




 普通、撮影用のカメラも録音機も、そう都合よく持ってなんかいない。


 あんなもの、初めから使おうと思わなきゃ用意しないものだから。



 特に録音機なんて欲しいと思ってコンビニやデパートですぐ買えるわけでもないし、利便性を考えるならもう一台のスマホを契約するのが一番手っ取り早いと思った。





 まあ、準備はこんなもんか。





「聞こえてんだろー。なにやってんだ春宮~?」



「…………」



「……え、無視?」



「ちょおおおっ、めっちゃシカトすんじゃんあいつ。来たんなら挨拶ぐらいしろやオラッ!」




 教室の隅、後ろで騒いでるのがグループ構成員の一員。



 南原、松山、中本。



 女子の南原と松山は机を退かして向かい合わせで椅子に座りながら、一方の中本は退かした机二台を並べて寝転がりながら、こっちを見ている。




 掃除した後なんだろうけど、お構い無しか。





「なにお前、黙って入って来て。なんか用あんの?」





 で、地べたに座りながらこっちを睨み付けて来る男子生徒がグループのリーダー。



 村上。



 中学入りたてにしては身長が170近くもあって体格はかなり良い。


 短い髪にきつい目付き、おまけに格闘技までたしなんでいるときた。

 




「ああ、用ならあるよ。真剣な話するから姿勢正せよ」




 覚悟ならもう出来てる。


 後は、行動に移すだけ。



 今さら失うものなんてないから、やるなら徹底的にやろう。





「…………は? あいつ今なに言った?」



「春宮めっちゃキレてんじゃん! え、なんで!?」




 中本と松山の反応。


 この二人は村上グループに属してる割にあまりパッとしない。


 どちらかと言えば側近的立ち位置で、優先して相手にする必要はないからひとまずスルーでいい。




「ちょおおおっ、春宮っ! なんかあったん? ウチでよかったら話聞くよおっ? 話してみ? なあ話してみって? いいから話してみろやオラッ!!」




 スルー出来ないのが松山の向かいに座る年不相応の巨体、南原。

 


 女子生徒の中では間違いなく一番高圧的。


 強大なフィジカルかつ威圧的態度も相まって男女問わず萎縮してしまう生徒は非常に多い。



 と、そんなことはどうでも良くて……。



 そうだな、南原も言ってることだし前置き無しで切り出そう。

 




「薬師寺のことで話がある。お前ら薬師寺のことイジメてるだろ? それやめろよって話なんだけど」



「……はっ?」



「南原、惚けなくていいから。薬師寺の家に行って本人から全部聞いてきた。今までお前らがやって来たこと、全部」





 一瞬。


 ほんの一瞬だけ、静まり返る。



 南原はニヤケ面で俺を見つめていたのが、ポカンと口を開け反応が止まり。


 松山と中本も何かを察したように雰囲気が変わる。




 その中でも一人ひょうひょうとしてるのが――。





「それが? つかお前は不登校になんねぇのな」





 やっぱり村上だよな……。


 こいつを抑えないと薬師寺は学校に通えない。





「それがじゃないだろ。お前らのせいで学校に来れないんだよ」



「だからそれがって? で、お前はなに? そうやってイキり散らして説教でもしに来た?」



「そうだ、説教しないとお前らやめないから。薬師寺戻って来てもまた繰り返すだろ? 徹底的に指導しようと思って」



「指導? オレに? やってみろよ。殺すぞ」



「言われなくてもやるから。お前の方こそやってみろよ、殺してみろ」




 

 わかってはいたけど、完全に舐められてる。


 教師である以前に人として、歳上として完全に見下されてる。


 

 威厳や立場でマウントは取れないな……、村上を挑発するのが前提だからむしろ都合は良いけど。



 現に、今こうして胸ぐら掴まれてるし。





「ちょっ、ちょっ、ちょっ! 喧嘩はダルいって村上ぃ! こいつ仮にも先公だし絶対面倒だから!」



「俺は面倒でも薬師寺は面倒じゃないか? 南原、お前薬師寺の顔ビンタしたらしいな。中本はスカート捲りで松山は頭ひっぱたいたって?」



「……あ?」



「はあっ!?」



 

 挑発の対象はあくまでも全員。


 第三者から見て、この全員に非があることを納得させたい。



 あからさまな挑発をしすぎると俺自身の心証も悪く持たれてしまうから、そこは調節して……。



 撮影する動画は一方的な内容でなければならない。




「いきなり来てなにお前……。イジメ? 誰がイジメって? そもそも証拠あんのかそれ?」



「今さら惚ける必要あるか? 薬師寺が証言してる。お前と南原が薬師寺に絡むところを俺自身目撃してる。他の生徒からの証言だってある。いくらでも立証出来るぞ?」



「だったら立証してみろよ。調子乗ってんのかお前? マジで殺すぞ」




 掴まれた胸ぐらに、さらに力が込められる。



 これでいい。


 短気な村上に理屈通りの誘導をしてさらにヘイトを溜めさせる。



 繰り返し行えば、いずれ決定的な場面が訪れる。




「その殺すぞって言うのやめろよ。お前もう中学生だろ? 周り見てみろ。お前みたいに簡単に殺すぞなんて言う生徒他にいるか? もう小学生じゃないんだから、わきまえろ」



「黙れって!!」




 ドンッと強く押される。



 よし、教卓の前にいたからちゃんと映ってるはず……。



 教卓にぶつかったのは痛いけど、それも含めてインパクトはある。




「マジやめとけって村上ぃ……あとがダルいあとが。てか春宮もどしたん? おめぇはこんなキャラじゃねぇだろオラッ!」

 


「ホントそれ。いつもオドオドしてんじゃん。心境の変化でもあった? 相談乗ろっか? 今の春宮めっちゃウザいよ?」



「南原と松山も相当イジメてたみたいだな。今は村上だけど、次お前らだから。全員の保護者呼び出して皆で薬師寺の家に謝りに行こう。どうしてこんなことしたのか、先生の方こそ相談乗るから」



「ああああんっ!?」



「はっ……キモ」




 なじられても決して引けは取らない。


 ジリジリ追い込めばいい。



 村上の表情を見るたび、上手く進めてると実感が持てる。




「もういいから春宮。だいたいあれイジメじゃなくてイジリだろ? 薬師寺がなに言ったか知んねえけど大げさに伝えてんだよお前に」



「それ。薬師寺が言ったからイジメになってるだけでしょ。薬師寺の話聞くならあたしらの話も聞いてよ! あれイジメじゃないから!」




 加害者特有の言い訳か。


 表現を変えて非はないと主張する。



 もしくは……。




「だよなだよなっ、あれイジメじゃねえし! あいつも断らなかったしなんだかんだ一緒にやってたって! ウチらが悪いなら薬師寺も悪いんじゃん!?」




 こうして被害者側にも落ち度があると主張して、両成敗にもつれ込む。



 よくある話だけど、いざ目の前にすると寒気がする。





「なあ村上、お前はどう思う……? イジリか、イジメか」



「どっちでもねえよ。ただ遊んでたら来なくなっただけだろ」





 遊びか……。



 そうか、結局こいつらからしたらその程度なんだろうな。



 何も考えやしない。


 ほっといたらまたそのうち戻って来るって、薬師寺の気持ちを微塵も考慮しない。




 凄く不快に思うけど……俺も同じだったから、一方的に非難する資格なんてない。



 代わりに、ただただ思うよ。


 今この場でこいつら叩けてよかったって。



 



 終わらそう。


 



「とりあえず帰り支度しろよ。一度帰って親とちゃんと話し合え。電話で事情説明しとくから」



「あ?」



「明日休みだしちょうどいいよな。お前らと俺と保護者同伴で、薬師寺の家に行ってちゃんと説明しよう。それで誠心誠意謝ろう」



「なに言ってんのお前。病気? 狂った?」



「狂ってるのはお前の方な。この状況で遊びなんて言葉が出てくる時点で相当歪んでるよ。お前らがやってるのは遊びでもイジリでもない。ただのイジメだから」





 今度は、俺の方から動き出す。


 

 南原達の溜まり場まで平然と歩いて、村上の物らしきスクールバッグを持ち上げる。




 再び戻って、教卓近くの村上の元へ――。





「ほら、今日は帰ろう。明日でいい、頭冷やしてまた一から話聞くよ……親の前で。な、村上」



「触んじゃねえよっっっ」





 ガンっと前蹴りが飛んでくる。


 お腹、ヘソ付近に直撃するもダメージ自体は大したことない。



 威圧の意味も込めての軽い攻撃だろうけど関係ない。



 間違いなく、決定的な暴力シーン。

 



「マジで調子乗ってんのか!? 殺すぞっっ!!」




 続けて、再度胸ぐらを掴まれ恫喝される。



 こいつ胸ぐら掴むの好きだな……。



 これも村上の心証を下げる上で重要な場面になるから問題はない……けど。


 さっきと言い今と言い、村上は単純にキレてるだけで暴走まではしていない。


 あくまでも加減はしていて、俺を黙らせるためのパフォーマンスとして威圧してるんだろうなって伝わって来る。



 それだけでも炎上する動画にはなる……。


 なるけど、そこ止まりだと村上達を脅迫する絶対的な内容にはならない。



 求められるのはぐうの音も出ないほど、強烈な暴行動画。


 一度それを拡散されてしまうと間違いなく人生を歪まされるほどの過激な暴力。



 ちょっと炎上しておしまいだと意味がない。

 

 絶対的にこいつらを縛り付けるものにしないと。




「だから殺すとか言うなって……。それも含めて話し合いをしよう、親の前で」




 パシンと強い衝撃を左顔面に受けて……直後、キーンと耳鳴りが聞こえる。




 ってぇ……。




 何されたか一瞬わからなかったけど、今のビンタは痛い。




「……それが、ビンタゲームか? 薬師寺にもやってたんだろ? ……なあ村上、お前達がどれだけ薬師寺に理不尽なことしてたか本当にわからないか?」




 パシンッ、パシンッ。



 今度は右に来たかと思ったら、往復してもう一度左にも貰う。



 さっきまで恫喝して来たのが無言での暴力に切り変わる。


 

 

 いいぞ村上、早く爆発しろ。





「ぢょおおおおおっ、なにやってん村上ぃ! 知らんわっ、もう知らんわ!」



「やば、ボコボコじゃん」



「燃えてんな村上……まずくね?」




 南原達は止めない。


 それどころか食い入るように笑いながら見てる。



 こういう他人同士の喧嘩って真剣に止めようとする側の人間と、口では止めるように言いつつも観戦して面白がる側の人間の二手に別れるんだと思う。



 まあ、こいつらはそっち側だろうな。



 お前らもそれでいいよ。


 この光景を、もっと撮らせて欲しい。




「止めとけよっ!? 止めとけって一応ウチ言ってるからな!? 春宮も春宮で挑発すんなって! こいつ煽られるとマジ止まんなくなるからっ。キレたらガチダルいんだって!」




 よくないな……。


 俺が村上を挑発してる体で発言されるのはよくない。




「挑発……? それは違うぞ南原、俺は正論しか言ってない。それを挑発されたと感じて一方的に暴力奮ってるのが村上だろ?」

 


「黙れってっ」




 次は前からじゃなく横から、左もも目掛けて蹴りをもらう。



 流石格闘技をやってるだけのことはある、さっきまでの暴力とは段違いで強い衝撃を受け、地面に転がされてしまう。


 

 相当痛いけど、まだ耐えられる。




「村上……っ……お前、格闘技やってるんだろ? こんなふうに技を使えって教えられてるか? 格闘技経験者の暴力と素人の暴力は平等に扱われない。知っておいた方がいいぞ?」



「次顔面な。失神させてやるよ」



「ストップストップストップ! もう止めとけ村上、 ガチでシャレにならねえって!」




 中本が駆け寄って来て、村上の肩を掴む。


 ニヤけてはいるけど、どちらかと言えば苦笑い。



 中本は真剣に止めてくれる側の人間だった……ということはない。


 単純に身の保身に入ってるだけだから。



 南原と松山もそう。


 さっきよりも少し顔がひきつってる。



 そうだよな、お前ら関係者だもんな。



 この段階まで来たということは、はたから見て相当暴力的に映ってることだろう。

 


 

 あと一押し。


 一押し加えて村上を爆発させれば勝ちだ。





「なに止めてんのお前……。殺すぞ?」



「や……そうじゃなくて、このままだとヤバい。村上も」



「なにがヤバいって?」



「あ、いや……ごめ、ごめっ……悪い。悪かった」



「なにが悪いか答えろよ。殺すぞ?」



「止め止めっ! ぢょおおおおっ、なんでお前らまで揉めてんのぉ!? 村上もすぐ手挙げんなしっ」




 村上が中本を詰めるのを、南原が止める展開。



 正直言って邪魔だな。


 村上のヘイトは俺一人に集めたいし、中本が止めようとしてる良いやつなんじゃって見られ方は動画の力を弱めてしまう。

 


 もっと全員をかき乱して、俺一人を集中放火させたい。



 なにか……。





「ねえ、もう止めようよ。そもそも薬師寺なんかの話で喧嘩になるとかバカらしくない? 時間の無駄じゃん。普通に帰ろ?」



「そうっ、それ! 春宮の話まともに聞いてっからウチらの雰囲気悪くなんじゃん。こんなもんタラタラ話す内容じゃねえし、パパっとケリ着けてどっかいかん?」



「だよねだよね! あたしマッグ行きたい! ちょーお腹空いた~!」



「はい決定、マッグな。中本も村上も来いよ! んで、今空気悪くしたバツで中本は村上に奢る。奢られた村上は今のこと水に流す。それでいいんじゃん?」



「あ……お、おう、それでいい。……悪かったわ村上、奢るからマジ勘弁して?」



「なっ、村上ぃ。おめえもあんま不貞腐れてんなし。おらっ、マッグ行くべ!」



「そうだよ村上っ! 行くべ行くべ!」











「うぜぇ………ガチうぜぇ……ッ……好きにしろよもう……。萎えたわ……」







 いやいやおかしいでしょ……。




 この流れでマッグ? 何でそうなる?


 表面上の話すら何一つ進んでないのに、どんな神経してたらその発想が湧いてくる?







 ほんとに。



 ほんっっとうに、何とも思ってないんだな……。

 




 気持ち悪いなぁ……こいつら。






「行かせると思うか? お前達も、そろそろ自分の立場考えた方がいいんじゃないか?」



「わかったわかった、ちゃんと話着けるしっ。なっ? 春宮にも面子とかあんのわかってっから。だからパパっと話そ。んで即効で終わらそ。これでいいっしょ?」



「春宮さー、空気読んでよ。せっかく纏まりかけてんのにさー。てか話ならもう終わってるくない? イジメじゃなくてイジリだって言ってんじゃん。これが全部っ! はい話終了っ!」




 鞄を背負うもの、使用した椅子や机をぐちゃぐちゃに戻すもの、村上グループの面々が帰り支度を始め出す。




 今、このタイミングでか?


 これで終わったつもりなのか?




 こいつらは……どこまで……。





「あー春宮もさ、ウチらのこと勘違いしてるって! イジメじゃなくてイジリなのはガチ。こう……なんつうの、弱い生き物にちょっかい出したらさ、反応とかめっちゃおもろいじゃん? んな感じで反応見たくて楽しんでた感じ…? 悪意とかないし」









  













 は?






「でもまあ謝れっつうなら一応謝るし、春宮の顔も立てっから。あっ、でも保護者同伴とかはいらん。電話もすんな。薬師寺がウチらの前来て説明出来んなら、ちゃんと謝っから。そんで手打ちでいいっしょ? これでいいな?」



「よくねえよ、絶対オレ謝んねえし。てかあいつもあいつでいちいち大げさなんだよ。ちょっと頭はたいて尻パン入れただけで泣きそうな顔して震えてんの。むしろわざとやってんじゃね? そこまでのリアクション取れんなら止めての一言くらい言えよ」







 なに、言ってんの……?



 こいつらなに言ってんの?





「ちょおお村上ぃ、これで話着くんだから黙っとけって! わかるけどもっ」



「終わった~? 行こうよ~」



「お疲れ、春宮」








 はは。



 あははは……。








「最後に言っとくわ。薬師寺にも原因あっから! 謝るからな? 一応ウチ謝るって言ってるからな? でもな春宮、あいつって何にも出来ないん知ってる? 喋んない、笑えない、目合わせない。んじゃ何出来んのってなるべ? これもうイジるしかねえなってなるべ? 一応つるんでんだし役割は必要っしょ? そんじゃあ学校に来なくなったって話だし、そんなもんじゃん。じゃな!」








 

 そんなもん……。











「しじが……薬師寺が、お前達とつるみたいって自分で言ったのか……?」



「いや勝手に入れた」










 プツンって、音がした。







「ふっっざけてんのかああああああああああっっっ」




「おっ」



「なにぃ!?」




「おま……ぇ、お前らなぁ、本気でそれ言ってんのかあっっ!? 真剣に考えてっ、何の迷いもなくそれ言ってんのかっっ!?」




「……ぁ?」



「ちょ、なに掴んでん…」




「芝居だよなあっ!? これ芝居でやってんだよな!? 俺怒らせるためにっ、煽るためにやってんだよなぁ!?」








「村上も南原も松山も中本もぉっ、俺に絡まれてっ、それがウザくて仕返ししてるだけだよなぁっっ!? おかしいっ、おかしいって! 素でそんなこと言えるわけないってっっ!」








「薬師寺がっ……薬師寺がどんな気持ちで学校来れないでいるか知ってるよな!? 自覚ないわけないよな!? なんでっ……なんでそんな言葉出てくんのぉ!?」








 いっ……。





 え?





「うるせぇよお前、マジ失神させんぞ。続きやんのか?」



「止め止めっ、蹴んなって! めんどいからっ」



「止めんなよ南原。さっきからピーピーピーピー喚いて、ウザくなんねぇの?」








 村上……。



 お前、どんな気持ちで……。






「薬師寺に……死んで来いって言ったらしいな……」



「あっ?」



「……な……村上、お前なに思って言った?」



「なにも? ビビるかなって思って。反応見るためじゃね?」








 ぁ。






「薬師寺がっっっ、家のマンションから飛んだことは知ってるかっ!?  お前らにイジメられて、辛くて、どうしよもなくなって死のうとしたことは知ってるかっっ!?」










 お願いだから。



 少しだけでいいから。







「……ヤバ」



「ちょお、そんな悩んでたのおっ?」



「絶対ガセだわ。あれで死ぬはない」






















「生きてんだろ。死んでから言えよ」









 

 


 もう、ダメだって思った……。





 自我を失うって、こういうことかって。



 目の前の光景が、映像みたいにただ流れて来て……身体は勝手に動くのに、頭も心もわけわかんなくて。






 気が付けば、村上の顔を思いっきり殴り付けていた。






「……ぃ」



「わっ」






 一発で止められるわけがなくて、もう一発。




 大声で叫びながら、誰の声だって。



 こんな声……出したことない。





 離さないよう村上に絡みついて、机も椅子も全部ぐちゃぐちゃにしながら押し込んでいく。




 バランスを崩して、一緒に倒れて、それでも終わりじゃない。




 すぐに立ち上がって……村上の上に……。

 


 両手首を掴んで、抵抗出来ないようにグッと地面に抑え付ける。





 こうしないといけない。



 こんなやつは、こうやって抑え付けてなくちゃいけない……。

 



 薬師寺のところに行けないように……。


 二度と同じ間違いを犯さないように……。



 

 暴力を使ってでも、封じ込めないといけない。




 お前らの遊びに付き合わされて死んでしまいましたなんて、一番あっちゃいけないことだから。





「……ってぇな。殺すぞお前っっっ」





 力ないな……俺。


 

 後ろから足で挟まれて、簡単に崩される。





「死ねよっ」




 顔面に、凄い衝撃。



 まともに蹴りが入って……あぅ……あう。







 あぇ?



 い、ず……?





「村上ぃい、もういいって! 止めろっ、それは止めろ! 置けって椅子! 流石におもんないってっ」




「殺す、殺す……マジ殺すこいつぅ。お前誰に手挙げてんの……なあ? 殺してやるよ」










 あぇ……?







 ガンっガンっガンっ、ガンっ、ガンっ。



 ぶっ……え……うぇ、い……あえ?








 カッカッカッ、カッ、カッカッ、カッ。



 あっあっあっ……あぅ、あうっ。






 ガゴッ、ガゴッ、ガゴッ、ガンっガンっ。



 あぅ、あぅ、あぅ……あぅ………あえぅ。








 はひ……?


 はひはへせう?






「死ねっ、死ねっ、死ねっ。 今死ねっ! 早く死ねっ! 死ねよっっっ」






 ゴンッ、ゴンッ……ゴンッ。

 

 



 ガキッ、ガキッ。





 ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ。







 あぇ……、あぅ………。






 し、しぅ……。






「と、止めてよ南原っ。これ……こんなん絶対大問題じゃん……。てか中本も止めろ!」



「む、無理だって流石に……。今止めたら俺もヤバい」





 

 ドガッ、ドガッ。



 

 ガコッ……ガコッ、ガコンッ。






 おぇ……あっ……。






 あ、あぇ?







「ハァ、ハァ……ハァ。表出ろよ、学校中引きずり回してやる………あっ、こら? どこ見てんだよゴミっっ!」






 ぐべっ……。




 






 ………、


 



 



 ?







「やっぱり……。絶対なにか起きるって思った」










 ぁ……?



 あ、あがら?







「なにお前? なんでいんの? 出て行けよ、殺すぞ?」



「村上こそ出て行けば?」






















「竹さんこっちぃいいいいいいいいっ! 早く来てぇえええ!! 大変なことになってるからああああああっっ」









 ぇ……。




 えっ?








「デカい声出すなや……。とっくに来とるわ」








 た、たけ……んせぇ。






「ちょおっ……はぁ? な、なん相良と竹っ? えっ!?」




「えやあらへんやろ。なんや教室で揉めてるかもしらん言うから来てみたら……なんやコレ?」




「……あ、いや」



「ち、違うよ竹さん」




「なんやコレって」




「春宮と……いや、春宮先生と村上が言い合いになって、今俺達が」




「だからなんやコレ言うとんねんっっっっっっ」 




「ぃ……ひっ」



「……っ」








「大声出すなよじじい。春宮殺そうとしてんの、見てわかんねぇ?」




「あん? なんつったガキこら。もういっぺん言ってみい」




「何回も聞くなよじじい。耳付いてんのか?」




「………ええわ、もうええわ。村上、その椅子なんや? 下置けや」




「死ね」




「ぱっぱと置かんかいコラァッッッッッッッ」




「……っ………は、はぁ? お前が置かせてみろよ。殺すぞ?」




「殺す? お前今殺す言うたな? ええわ、やってみい。まず俺から殺してみい」




「それ……それ以上来たらマジでやるけど?」




「はよんかいっっっ!!」




「ぁ………はぁ、上等だ……。やってやるよ」










 はぇ?




 んで……なん、で?

 

 







「ウッ……ゼェ! ゼェッ……ゼェよお前マジ!!」




「なんやそれお前……ふらっふらやんけ……。武器持って振り回して、そんなふらふらか?」




「まれっ、ダマれっっ! らぁ……ああっ! うらぁっっ」




「アホかお前。こうやって椅子掴まれたらどないすんねん? のおっっっ!」








 どぅ、なっで……?




 むら、がみは……おれ、ど…。









 ぁ。






 あ、ぁ……。




 ば、ばい……、あだまが………。




 




「喧嘩したいなら素手で来んかい……情けない。ちょうどええわ、まずお前からやれ。椅子でも拳でも先殴らしたるわ」




「あぁああんっ!? なにがっ!? 殴らせる? 舐めてんのお前? 頭克ち割んぞっっっ」




「ええからはよ来い」







 ガンっ、ガンっ。



 ドガッ、ドゴッ……ゴンッゴンッ。







「はい暴力成立。次、オレの番な」

 



「おっ」




「のう村上、お前格闘技やってる言うとったな? 体育んとき空手や柔道がどうとか言うとったもんな?」




「……せっ、離せっ」




「受け身、取れんな? 受身取れよ」













 ばい、あばい……。




 いじぎ、が………あ、ぁぁ……。




















()()()、取れよ?」







「んどりゃあああああああああああああああっっっ」



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