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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

腐魂咀鬼

作者: 呉武鈴

気づけば犯行を重ねていた。しかもたちの悪いことに止めようと思っても本能が止めることを許さなかった。理性と感情が食い違い、幾つもの矛盾を生じさせながらゆっくりと魂を腐敗させていく。自分で止めることが出来ない。ましてや他人が止められる訳がない。

改めて周りを見渡した。誰もいない路地裏ですぐそばに既に腹部に幾つもの刺し傷をつくり、頭部損傷・両足も使い物にならないだろう子供…いや、ただの肉塊が転がっていた。

―やはり愉しい…こんなにも簡単に未来を担うものが壊れて逝くのを見るのは愉しい―

快感…その一言につきた。人として道を間違えたが、そんなことは今はどうでもいい。この感覚さえ感じらればどうでもいい。

「愉しそうだな」

不意に後ろから声がした。急に自分の世界を壊されたことに怒りを覚えた。

振り向いて見ると立っているのは何処にでもいるような少年だった。黒一色の帽子に隠れて顔は見えないが大体歳は十五ぐらい。いつも殺している子供よりも少し大きいが、子供にはかわりない。自分の足元にはボロ雑巾より見た目も臭いも酷いことになっている塊が転がっているが全く興味を示していない。でも見てないなんてことはないだろう。口封じに殺さなければいけないだろう。

―これはこれで愉しそうだ…な?―

だがすぐに愉しさが疑問に塗り潰された。目の前にいるのは間違いなく少年なのに何故こんなにも恐怖が体の底から這い出てくるのだろうか。

「どうしたんだ?顔色が悪いぞ」

少年の口から漏れた声は疑問を確信に変えた。そこにいるのは少年ではない。人間が本能で感じる恐怖そのものだ。

「たかが俺みたいな子供に怯えてる訳じゃないだろ?小学生連続殺人犯」

迷いも恐れもなく軽く言った少年は被っていた黒一色の帽子を顔を隠しながら脱いだ。再び顔が見えたとき、そこには少年の顔はなかった。あるのは帽子と同じく黒一色の顔についている紅い二つの光とバックリと裂けた口、そして米噛みあたりから生えている羊の角だった。

「怯えなくてもいい。すぐに何も感じなくなるんだから」

そんなことを言いながら少年…それはゆっくりと近づいてくる。逃げ出そうにも足がすくんで動かない。一歩、また一歩と近づいてくる。悲鳴をあげようにも呼吸の仕方を忘れたのか息を吐くこともままならない。ついに目の前まで来た。目を背けようにも体が全く動かない。目を瞑ろうにも瞬きすら許されない。唯一動くのが許されてるのは命を繋ぐ心臓の鼓動と死の恐怖に怯えてる脳だけだ。

いつの間にか顔より大きくなったそれの手が顔を鷲掴みにする。

「さっきも言っただろ。すぐに何も感じなくなるって」

その言葉を最期に意識が唐突に途切れた。


「では次のニュースです。今日未明、××県∇∇町で地元の小学校に通う〇〇〇〇君(10)とみられる死体が路地裏で発見されました。去年の暮れから起こっている小学生続殺人犯と手口が同じのため警察は同一犯の犯行とみて調べを進めています。なお現場周辺には〇〇君のモノとみられる血痕と大人モノの上下服が捨てられており、犯人逮捕の手掛かりとしてこちらについても調べを進めています」


「そういやパッタリと起きなくなったわね〜」

妙齢の女性と少年がとあるマンションの一室でくつろいでいた。

「何がだ?」

女性の独り言に少年が律儀にも反応する。

「小学生連続殺人事件」

女性の返答に少年はどうでもよいかのように笑った。「はっ、そんなくだらない事件を何時までも引きずってんのかよ」

「だって毎月一回必ず起きてたのよ!」

ソファに寝転がっていた女性は力説しながら飛び起きて少年の方を見た。

「恐怖にすら勝てないようなヤツがする犯行だ。何時かは出来なくなんだろ」

少年のつまらなさそうな返答に女性は怪訝そうな表情をして、すぐに呆れ顔になる。

「…アンタまた何かしたでしょ」

窓際にいた少年は部屋の中でも被っている黒一色の帽子の下で紅い目を光らせ口を歪ませて女性の方に振り向いて心底愉しそうに言った。

「したが何か問題でも?」

なお、この作品は続編を意識して創られております。近いうちに投稿しますので興味がある人は気長にお待ちください。

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