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p.8

「じゃあ、私、正解じゃない?」


 彼の言葉に、私は小首を傾げながら、判定の是非を問う。


「そう! ほとんど正解。でも、もっと正確に答えるなら、気象庁によって、定義付けされていないので、区別をすることは難しいけれど、予め動きがわかる低気圧などの雲によって起こる夕立と違って、突然、雲が沸き上がるのが、いわゆる“ゲリラ豪雨”の特徴……かな。あとは、傾向として1つ言えるのは、ゲリラ豪雨と言う言葉は、気象庁が発表する『記録的短時間大雨情報』が出されたときに使われるケースが多いことかな」


 いつもよりも口数が多く、いつまでも天気の話を楽しそうにしている彼がなんだか新鮮で、彼の話している内容が分からないのに、私はただただ聞き続ける。


 そして、彼の声音にどっぷりと浸かる。低くもなく、高くもなく、早くもなく、遅くもなく、耳心地の良い彼の声に囚われた私の耳には、いつしか雷様の威嚇は届かなくなっていた。


「ねぇ? なんで、そんなに天気に詳しいの?」

「気象ってさ、地球の感情を知るみたいじゃない? 晴れの日は、機嫌がいいのかなとか、大荒れの時は、何をそんなに怒っているんだろうとか。子供の頃に、そんな事を思っていてね。天気の事を調べ出して、いろいろ知識を得て、天気のことが少し分かるようになったら、もっと知りたくなって……」

「あ〜、つまり、アレだ! あなた、天気オタクなのね!!」


 私の間抜けなツッコミに、彼は照れたように笑う。その笑顔がとても可愛くて、思わず見つめてしまう。


 私の視線に気がついた彼が、不思議そうに聞いてくる。


「何?」


 私も、天気の勉強をして、彼の話にもっとついていけるようになったら、彼は一体どんな顔をするかしら。


 そんな事を思いながら、私はにこやかに首を振る。


「ううん。何でもない。それより見て」


 私は、窓を指す。窓を激しく叩いていた雨はいつの間にか止み、薄日が差し始めていた。


「止んだね」

「うん。あなたの言った通り」

「パンケーキも食べ終わったし、そろそろ行こうか」


 私たちは、会計を済ませると店の外へと出た。雨によって少しだけ冷まされた熱気に混じり、土臭いような青臭いような、雨上がりを思わせる匂いが鼻をつく。


 彼はスンと鼻を鳴らしてから、空を見上げた。私も、彼を真似て鼻をスンと鳴らしてみた。


 私はもっと彼に近づきたくて、彼の真似をする。私は、天気オタクの()()()なのかもしれない。


「ねぇ、雨上がりの匂いにも名前があるの?」

完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


こちらは、『日常過ぎるラブストーリー ~ 5つのラブ ~』シリーズ作です。

他作品も併せてお楽しみ頂けると幸いです。

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