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p.4

 彼は、着席時に店員によって出された水をコクリと一口飲むと、さも当たり前という顔で私の問いに答える。


「だって、通り雨だから」

「なにそれ? どういう事?」


 彼の答えが意味するところが分からず、私は間抜けな問い方をしてしまう。


「雨宿りは、カフェでって決めてるんだよ。僕は」

「えっ? 決めてるって……もしかして、マイルールって事?」

「うん。まぁ、そうだね」


 そう言いながら、彼は、恥ずかしそうに、片頬をポリポリと掻く。そんな彼をポカンと見つめていると、恥ずかしげに視線を逸らしながら、彼は言葉を足す。


「それに、今日は、君と一緒に居るからね」

「私?」

「そう。君といるから、尚更カフェでなくちゃダメだったんだ」

「なんで?」

「だって、コーヒーショップやバーガーショップって、手頃な価格だし、いろいろな所に店があるから、利用しやすくて、晴れていても、結構人がいるだろ?」

「うん。そうね」


 そうなのだ。コーヒーショップもハンバーガーショップも、いつも沢山の利用者がいる。時には、レジ前に列を成しているところを見かける事もある。


「利用しやすいということは、雨宿り目的の客で、店内が混雑することが予想される」

「まぁ、そうね」


 彼の予想は、それほど的外れではないだろう。私も、彼にカフェと問われて、パッと思い浮かべたくらいなのだ。それほど身近で利用しやすいのだから、雨が降り出せば、すぐに多くの人が店へ駆け込んでくることだろう。


 そんな場面を想像して、私はコクンと肯く。


「つまり、満席で席に座れないかもしれないだろ。それに……」

「それに?」

「人が多いと、騒がしくて、君とのおしゃべりを楽しめない」


 イタズラっ子みたいな笑みを向けながら、そう言う彼の言葉に、途端に、私の顔は赤くなる。


「な、何言ってるのよ! もお〜」


 慌てて、ツッコミを入れるも、それ以上なんと言っていいか分からず、1人アタフタとしてしまう。


 そんなところへ、タイミング良く、店員が、パンケーキと飲み物を運んできたので、会話が中断された。思わずホッとため息を吐き、彼に刺激された心をなんとか落ち着ける。


 彼は、いつだって、今のように、突然、私を動揺させる事を、サラリと言ってくる。


 そんな彼の言葉に私は慣れなくて、すぐにドギマギとしてしまう。慌てる私を見て、彼は、心底楽しんでいるようだった。


 彼を軽く睨みながら、私は、少し頬を膨らませ、軽く口を尖らせる。

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