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p.3

 彼に手を引かれ、目当てのハワイアンカフェには、あっという間に着いた。いつもよりも早足で歩いたために、多少呼吸が荒い。立ち止まると、ジトリとした湿気が肌に纏わり付いてきた。


 息を整えるため、一度大きく空気を吸い込んだ時、視線が空へと向いた。先ほどまでそこにあった夏空は、いつの間にやら、黒い雲に飲み込まれている。


 私の隣に立つ彼も空を見上げてから、大きく息を吐いた。


「ふぅ。間に合った」


 そう言いながら、ニコリと私に笑いかける彼は、もういつもの彼だった。


 店の扉を押し開けて中に入ると、陽気な音楽が店内に鳴り響いていた。その音楽に負けじと、底抜けに明るい「いらっしゃいませ〜」と言う声とともに、太陽もビックリのキラッキラの笑顔で、女性店員が直ぐに案内へとやってくる。


「お二人様ですか〜?」と言う、ちょっと鼻にかかった明るい声に頷くと、「あちらのお席へどうぞ〜」と、窓際の席を勧められた。


 上から下まで全面ガラス張りの窓際の席は、晴れていれば、太陽の光が燦々と降り注ぎ、とても開放的な気分になれそうだ。


 しかし、ちょうど席についた時、ポツポツと、雨が窓を叩き出した。


「雨、降ってきたよ。この後、近くのコンビニで傘を買わなくちゃね」


 席に座りながら、何気なく彼に声をかけると、彼はニコリと笑った。


「じきに、晴れるさ」

「そうなの?」


 そんな会話をしていると、店員が注文を取りに来た。私がアレコレと悩んでいると、彼が優しくアドバイスをくれる。


「パンケーキをゆっくりと食べたらいいさ。食べ終わる頃に、雨は上がるだろうから」

「え? あ〜、うん。じゃあ……」


 注文を終えたタイミングで、新しい入店者があり、店員は、「いらっしゃいませ〜」と、また底抜けに明るい声を張り上げて、私たちの席を離れていった。


 私たちが入店した後から、何組かの入店があり、席が徐々に埋まり始めている。


「お客さん、増えてきたね」

「みんな、僕らみたいに、雨宿りが目的だろうね」

「ホント、降られる前にお店に入れて良かったわ」


 そんな事を言いながら、お互いに目を見てクスクスと笑い合う。確かに、言われてみれば、席についたばかりの客たちは、濡れた髪を拭いたり、服や鞄の滴を払ったりする動きをしていた。


 それから、ふと気になって、彼に聞いてみた。


「そういえば、どうして、コーヒーショップやハンバーガーショップじゃなくて、カフェだったの?」

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