第一話 事件
初投稿
2008年6月
東京都内にて連続殺人事件が発生。
犯行の手口や殺害された時間帯から犯人は同一人物であることが分かったが、「6名の被害者」「犯行場所」いずれも共通項はなくこれといって手掛かりも見つからなかった。当然、警察による捜査は難航した。
半年余りが経った頃、突如、捜査の打ち切りが決定された。
各所から不満の声があがったが、この事件は未解決として幕を閉じる。
2020年1月
季節外れの大雨が東京のアスファルトに降り注いでいる。
見た目30代ほどだろうか、1人の男が傘も刺さずに夜の道を歩き、そしてこう呟いた。
「必ず探し出してやる。」
2020年4月
『昨夜、東京都内○○区にて変死体が……』
テレビからニュースが流れる店内。
「喫茶アール」の店主である南雲 幸宏は孫の良太に朝食を作っている。
良太の父親、陽介は刑事で昨日から帰ってきていない。母親は物心つく前に居なくなってしまったらしい。
(バタバタバタ……)
「じいちゃんおはよう!」
2階から良太が勢いよく降りてきた。
「おう。」
「いただきまーす!!」
良太は急いでご飯をかき込む。
「今朝はやけに忙しないな」
「だって今日から高校生だよ。もうすっごく楽しみでさぁ。
あ!やべ、もうこんな時間?!じゃ、行ってくる!」
「気をつけてな。」
良太は家から出て行った。
その頃警視庁では昨夜の変死体事件の捜査が行われていた。
「南雲さん、今回の件どう思いますか?」
「とても人間がやったようには思えない。
遺体の損傷が激しい。身元の特定はできそうにないな。」
捜査を担当する陽介と後輩の吉田は頭を悩ませていた。
「幽霊とか未知の生物の仕業だったりして」
「まさか……とにかくもう一度現場を調査するぞ。」
(キーンコーンカーンコーン)
「みなさんもニュースで知っていると思いますが、○○区で物騒な事件が起きています。帰るときは十分に気をつけるように。」
学校も終わり、良太は熱心な部活勧誘をなんとか躱し、やっとの思いで帰路についた。
川沿いの道を歩いていると、鉄橋の下に同じ学校の制服を着た女子高生がいるのが土手の上から見えた。
「(あれは確か同じクラスの大川……美咲だっけ?)」
自身のクラスメイトであることを思い出し、なぜ彼女があんなとこにいるのか疑問に思う。
よく見ると何かに怖がっている様子である。そう考えていると、
「きゃあー!!」
突然、美咲が叫んだ。
すると、鉄橋の影から見たことのない化け物が現れた。
このままではまずいと思った良太は、躊躇わずに土手を下り降り、そのままの勢いで化け物に突進した。
だが、化け物はびくともしない。
「今のうちに逃げて!」
良太はなんとか美咲を逃したが、押している化け物は相変わらず動かない。
その刹那、良太の身体に衝撃が走る。凄まじい速さで殴られた良太は後ろに吹き飛んだ。
意識は朦朧としているものの、なんとか手放さずに済んでいる。何というタフさであるか。
しかし、無慈悲にも化け物はもう一度攻撃しようとしている。良太は逃げるも避けるも考えることができない。
唯一考えていることといえば、自身の腰に巻かれている石のようなベルトは一体いつ付けられたのかということだけだった。
化け物が手を挙げる。
すると、ベルトから神々しい光が放たれる……
光が収まると、化け物はいなくなっていた。
「一体なんだったんだ?」
そう口に出したと同時に良太は意識を失った。