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早い

文章の量を少し増やしたほうがいいか、今のままでいいか気になっています。

 次の講義が終わる頃には、ようやく眠気が覚めていた。とはいえ今日の受講項目は2つだけなので、これから帰ることになるのだが。


「次からはお弁当を用意した方がいいのでしょうか」


 ちびマツリはそういうが、その辺りをすぐにイエスと言ってしまうのは早計だろう。


 片付けを増やすのも良くないし、弁当箱だって買わないといけない。それと、その日の体調次第で食べる量を好みに変えられるのは結構便利だったりする。


「私達としては残されても大丈夫なんですけど、まあそのあたりはそうですね」


 一応貧乏学生だからな。バイトはしばらくの間休みだからこそ、節約していきたい。


 一応食い扶持も増えた訳だしな。


「あ、私達はご主人からの接触があれば食事は基本的にいらないですよ? 敢えていうなら、身体を洗う為の水道代と、料理とかの準備につかったりするその他の光熱水費くらいですかね?」


 その辺りなら変わらないだろうか。次の支払いが5000円も一気に増える、なんて事は流石にないだろう。


「まあ私達が稼ぐのもありかもしれませんが」


「それは、なんかやだな」


 完全にヒモになってしまうし、自分の知らないところでトラブルに遭われてしまうのは困る。それにそもそも人間ではないから戸籍もないし、危険な仕事しかできないような気もする。


「そのあたりは、まあやりようはありますよ。でもご主人がそういう事をしなくていいっていうなら、私達は特にそう言ったことはしません」


「とりあえず、そういうのはもう少し困ってからで」


「何かの御伽噺で鶴が機織りした様に、私達も何かを作って売ることはできますよ。この時代なら販売できる場所も多いでしょうし」


「身体の一部を使う様な事はあまりして欲しくないんで、どんな事ができるのか一応聞いておこう」


 一応、である。


「木彫りの仏像とかマリア像が作れますよ。手先は器用なんです」


 少しばかり予想外の答えだった。


「彫刻道具や木材はないのだけれどもな」


「でも、どうしようもなくなった時に身を切るという程でもありませんし」


「仕送りはある程度貯めてるから、月末にバイト入れたら大丈夫」


「その『バイト』の代わりになると思うんですけどねぇ。無用なトラブルも飲み会も回避できますよ?」


「そのあたりは、確かに」


 面倒なオッサンの対応をしなくて済んだり、あるいは疲れているタイミングでの飲み会をしなくて済むのは非常に助かる。


 あの飲み会がなければその分の資金がどうにかなるのに、と考えることも多い。その分の浮いた資金も……と。


「でも、ヒモになるのはなぁ」


「良いじゃないですか。もし心理的抵抗が大きいなら、その分の代価を私達に払ってくれたら良いのですよ。そもそも現状の私達には、お金はご主人の為に使うものなのですし」


「給料代わりの供給を増やしてくれ、という事か?」


「そういう事です」


 ヒモになるというのは、もう少し先になってから考えるか。


 ならない、と考えていたのに陥落するのが早すぎるんじゃないだろうか、僕は。


 帰りの電車は、ちびマツリと直接話しながらでも問題ない程度には人がいなかった。ちびマツリの方は何かに警戒するみたいに周囲を見ていたが、電車が事故を起こすという事はさすがに起こらないだろう。


「ご主人、私は本人の方にいろいろ伝えたいので、少し早めに帰りたいです」


「寄り道するなってことね、りょーかい」


 もともとサークルの方も無視している状態であるわけだし、もともと早く帰るつもりではあった。理由もつけて直接頼まれたわけだし、コンビニに寄っておくつもりだったがそのあたりは後回しにしておこう。


「まあ、マツリがトラブルに巻き込まれないかは心配だっていうのもあるし」


 急に人の気配が昼間でもあるようになったら、下宿先の安アパートでももしかしたら何か言われるかもしれない。9畳程度しかないあの部屋でも……と、そういえば。


「マツリはどこで寝ているんだ」


「メイドはご主人のいないときにサボるものです。夜は眠らずの番をしていますよ」


「現代社会でそんなことをする必要があるとは思えないのだけれども」


 いや、ないよな? 一応マツリと出会ったきっかけの出来事が思い出せない以上、何かある可能性は否定できないのだが。


「大丈夫ですよ。私達がご主人の事を守りますし。平穏のままでいられると考えていてください。本当に困った時だけお願い事をするかもしれませんが」


 ちびマツリがそう言う間に、下宿先に到着した。


「おかえりなさい、ご主人っ。やー、今日はけっこうはやいんですね? というか連絡を入れていただけたら、お迎えに上がりましたのに照れやさんなんですか?」


「いや、単純に連絡手段がないだけだったんだが」


 魔力が繋がっているとか言われても、そもそもそのあたりに関しての知識がない。使うこともできないし、そのあたりで通話ができると言われても分からないままだろう。


「その子と念話ができるでしょう? 同じ感覚で……と、もしかして」


「バレましたか。教えていなかったのです」


「式神の癖に大元に逆らいますか。この」


「逆らってはいないですよー? ただ指令の範囲外だと判断したので伝えなかっただけです」


「まあまあ。とりあえず、家に入ってからにしよう、な?」


「んむぅ、ご主人がそういうなら……」


 ちびマツリが俺に教えていなかったことに関してマツリが怒っているようだが、じゃれあいのような印象も受けた。僕と話せなかったのは残念なのだろうが、怒りは本気ではないのだろう。


 急に同居人が増えたが、なんだかんだでこういうのは楽しいものだ。

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