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眠い

 授業中とは眠くなるものだ。前日はしっかり眠れた筈だし、移動中もそれほど眠いわけではなかったのだが。


 まあ言ってしまえば、苦手な分野の講義だからなのだが。語学の講義はなぜか眠くなってしまう。


「私が代わりにノートをうつしてもいいのですが……」


 ノートは自分で取らないと意味がないが、寝落ちした時にはそうしてもらいたい。


 配布の印紙の隙間や空白に書き込み、それから自前のノートをとっている。書き込む量と場所の比率が変わったくらいか。別の教授はB4サイズの紙にB5の量の印刷をしてくれるので、後から見返すのがかなり楽だったりする。


 印刷紙をA4のサイズにするのはやめてほしい。クリアファイルからもノートからもはみでてボロボロになってしまうし、貼る時も少し面倒なんだ。


「相変わらず君は眠そうだね」


 選択授業の項目によっては、違う学年の人と講義が重なる可能性もある。例えば、サークルの先輩とか。


「……先輩、授業中に声をかけるのはやめてほしいと言ったはずですが」


「今日時間割が重なっているのはこの講義だけだし、サークルにも顔を出すつもりはないのだろう?」


「まあ、そうですけど。何か急ぎの用事でもあったんですか?」


「部長がたまには顔出せーって言ってたんだよ。サークル費用と場所を学校に申請する時、幽霊部員が多いと都合がよくないとかで」


 ちびマツリはフー、と犬のように先輩を威嚇している。先輩は見えていないから当然無視の形になるが。


「俺は部長に、幽霊部員でいいからって誘われたんです。数合わせの時点で部員としての義務は果たしているんですよ」


 まあそう言ったのは現部長ではないのだが、それを敢えて言う必要はあるまい。


「ちぇー。どうしても来てくれない? 主に部長と私が喜ぶんだけど」


「まあ、そのうち行きますよ。今日は行きませんけど」


 行ったら喜ぶ、と言われたら悪い気はしない。けれども準備も何もしていないし、マツリに連絡を入れることもできない。下宿先でも携帯電話で済ませてる……というかアレだな、マツリにも何か連絡用に買ったほうが良いのか。


「おや、何か用事でも?」


 彼女でもできたのかい? なんてからかうような態度だ。


「ちょっと、家で待っている獣がいまして」


 牛がいる、ともメイドがいる、ともいうことは出来ないので嘘にはならない表現にしておく。


「へぇ、獣ね。ずいぶんと変な言い回しをするみたいだけど、ペットじゃないの?」


「一応、拾ったのと、それから犬猫じゃないので。見た感じでは何かわからないので、飼うって明言は出来ませんからね」


 危険な動物だった場合は保健所に、という具合に勘違いしてくれたら良いのだが。


 実際に犬猫ではないし、メイド形態だと何かはわからない。一応何かは知ってるけど、自己申告だ。それと、飼う……このまま本当に家に置いておくかも分からない。


 いや、食事を用意してくれているのは助かっているから、手放したりはしないだろうけど。それは『飼育』ではないだろう。どちらかというと僕の方が飼われている。


「ふぅん? どんなのか気になるから、見に行ってもいいかい?」


「あいつ、嫉妬深いんで。たぶん郵便屋にも喧嘩売るレベルですよ」


 現在進行形で牙を向いているところだしな。僕が頭を撫でて抑えていなければ、そのまま突っ込んでいく可能性もある。


「そうか、じゃあ危険に突っ込むほどでもないか。面白い事になりそうだと思ったんだけどね」


 意味深な言い方をされたけど、この人は前からそういう事がある。地雷原には突っ込むけど見える壁には向かわない、という印象だ。


「僕が……じゃない俺が帰るのが遅くなったら、あいつは食事できませんし。もし出さずにいて冷蔵庫のモノ食われたら困りますからね」


「まあ、犬猫でもそれはありそうだしね」


「という事で先輩、今日は無理です。誰かしらに頼めるときにでも」


「まあ、いいけど。じゃあ今月中に1回だけでも来てくれたら助かる……と、とりあえずはそういう連絡。それから」


 先輩は言葉を区切り、ノートにメモを取る。


「私は個人的な理由で、顔を出して欲しい」


 思わせぶりなことをいつも言ってくれるのはやめてほしい。勘違いはしたくないのだ。


「理由というのは?」


「来てくれたらおしえてあげる。じゃぁねー」


 まだ講義中だというのに先輩はどこかに行ってしまった。


 まあ、腹痛やらで出ていく人はいるが、あんな風に堂々と出ていく人はいない。


「わたし、あの人嫌いです。変な匂いがします」


 ちびマツリが猫のような威嚇を続けている。いや確かに香水の匂いは強かったが……ああ、あれは化学物質だったりするから、動物には嫌な匂いだったりするのだろうか。


「ご主人、あの人と2人きりにならないようにしてくださいね。匂いをうつされたら困りますので」


 こちらとしては気にならないんだが、まあマツリ達が気にするようなものならば仕方ないか。


「ところで、ご主人は行かないのですか?」


 マツリの言葉に周囲を見ると、もう誰もいなくなっていた。ウトウトしている合間に講義が終わっていたようだ。


 ノートは半分程度がマツリの字だった。


 次の講義に急がなければ。起こしてもらえるという点とノートをとってもらえる事。ちびマツリがいて良かった。まあ、ノートの方は後で読み返さないとだけれど。


 次の講義は少し場所が遠いので駆け足で移動した。


 ちびマツリの御守り効果なのか、物や人にぶつかりそうにはならなかった。


 眠くてフラフラしていたけれど、随分助かった。



先輩の性別はどちらとも取れるように書いたつもりです。

主人公とマツリ達以外は、あまり焦点が向かわない感じに。


面白かったと思ってくださったなら、画面下から【ポイント】評価や【ブックマーク】などを貰えると嬉しくなってやる気が出ます。

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