何度か目の戦争
青白い光が晴れ、戦場が見える。
沢山の人が叫び、横へ別れていく。
時間を見る『59:58』
「始まった・・・」
「たろうが一番前、その次にみおとさくらで行って、ゆうきが着いていく。最後にみのりとゆきと俺だ!」
『了解!』
妙に統率された動きでみんなが叫ぶ。
前線三人は走り出す。少し遅れて後ろから着いていく。
ちょうど戦場の真ん中くらいで立ち止まる。敵の軍が見える。
「たろうは最前線へ!さくらは遠くから雨を降らしてみおはその前で待機!みのりは遠くで、音の壁を張り巡らせてくれ!全て、殺さない程度で!」
『了解!』
たろうはビクビクしながら前へ出て、その後ろでは紫色の雨が降る。その後ろでは黒光りする刃が蠢いている。
「ゆきはこっちで戦場の確認だ」
「んー」
敵地へ向かって右にある山へ進む。
そこには沢山の自チームの味方がいた。味方は俺達には目もくれず進んでいる。
強そうなものも、大多数に囲まれてすぐに死んでいる。中央を見る。たろうがしっかり壁となってくれている。
強者対たろうでいるため、明らかに劣っているが、たろうは不死の能力を持っているため傷を受けていない。
雨に突っ込み、痛みに苦しみ倒れる者が続出する。しかし、死んではいない。
目当ては相手の戦闘不能状態だ。
雨に当たらない人が何人もいるが、音の壁で潰されていく。
身体がバキバキに折れているが、前のように消え潰されてはいない。
俺は黒目の人を探す。能力を渡す能力者とSを探す。
敵地のフラッグの前にSがいる。Sは、笑いながらこちらを向き、手を振ってくる。
「場所はバレているがまだ来ていない。来る可能性もあるから、気をつけて」
「ん。どこにいるー?」
「あそこ」
俺は敵地のフラッグの前を指さす。
Sは、こちらへ向かって歩いてきている。
山の方は雨が降っていないため、山の上から向かうことが出来る。
Sは山の上へ向かう。流石に雨を通るのは諦めたようだ。
俺らは戦闘態勢に入る。
Sが消える。
後ろで銃の構える音が聞こえた気がした。
俺は右にいるゆきを右手で思いっきり押す。
「っ!?」
ゆきは驚く。
山と荒野に銃声が鳴り響く。
首の後ろに痛みが走る。
銃弾は首を突き抜ける。
死んでいない。銃のリロード音がなる。
俺は音がする方へ右の拳を向ける。
「アハッ!」そんな声が聞こえた気がした。
右足で回し蹴りをする。確実に決まった。
しかし、Sは視認出来ない。つまり、透明化か。透明は、特殊型じゃないのか。
ゆきが俺の右足へ近づく。
銃声が響く。ゆきは腹から血を出し、俺は膝を折られる。
『っ!』
足が軋み、首元にも痛みが走っている。
ゆきに指示を出す。
「ーーー!」
声が出ない。風を切る音がして、ゆきが鼻血を出しながら飛ばされる。
「アハハハハハッ!」笑い声と風を切る音、銃声、俺達を殴る音しか聞こえない。
俺の目の前に長い黒髪が見えた。
風が発生し、俺は遠くに飛ばされる。
山に生えている木にあたる。
生きている。しかし、声も出せず、痛みしか感じないため、死んだ方がマシだと思う。
しかし、今回こそ勝たねば。
ゆきが、上空へ飛ばされる。
ゆきは、Sの後ろへ瞬間移動で飛ぶ。
山に大きな穴が生まれ、二人とも消える。
多分、空へ飛び、能力を奪うつもりだろう。
俺は、その間に中央を見る。
戦闘不能になった敵が大量にいる。
死者もかなりいる。しかし、こちら側はかなり傷を負っているが、誰も死んでいない。
+114514点。
何かが落下してきた音がする。
落下してきた方をむくとゆきが倒れている。
ゆっくりとSは降りてくる。
「なかなかいい作戦だねぇ。「死に戻り」さん。でも、タイミングが悪い。掴まれて直ぐに能力が変えられるタイミングだからね」
俺はSを睨みつける。
「アハッ!いいねぇ!その顔!ゾクゾクする!」
ゆきの手がピクリと動き、どこかへ飛ぶ。
「あー、あの子逃げちゃったァ・・・どうするぅ?戦う?それともぉ、逃げるぅ?」
不気味な笑みを浮かべながら聞いてくる。
ゆきは戻ってくると信じ俺は、立ち上がる。
俺はニヤリと笑い、こう答える。
「上等だゴラァ!」
音になってるかは分からないが、しっかりと伝わっている。
「じゃ、やろっか!」
Sは笑い、見えない速度で飛び上がる。
地面を抉っていく。そこら中に穴が空いていく。
土が俺に飛び散って少し痛い。しかし、俺はしっかりと見る。
「ねぇ、知ってる?人って注意深く見るほど、しっかり見れてないんだよ?」
後ろから声がして、めちゃくちゃ雑な説明をされた。
俺は戦闘態勢を構える。
脇を引き締め、思いっきり腕を振る。折れた足が軋みながら、しっかりと右ストレートを、決めていく。
「決めるのだけは上手いんだ!」音にならない声を発し折れた足でもう一度蹴る。
俺は顔をすごい速度で殴られる。
能力で、多分飛翔などでスピードを高めているだけだろう。
Sの指が砕ける音がし、俺は吹き飛ぶ。
かなり頬が痛むが、受け身を取り立ち上がる。
すぐに戦闘体勢に入り、Sへ向かって突っ込む。
Sは、腰元から一丁の拳銃を取り出す。
生成系は、能力を変えても、物自体は残るようだ。
「楽しかったよ。じゃあね!」
銃声と金属音が響く。
「何してんだ!クロ!少しは俺たちを頼れ!」
黒光りする爪が見えた。
みおにお礼を言おうとしても、音が出ない。
「あっ!新キャラ登場!?いいタイミング!」
Sの腕から黒光りする爪が出る。五本の爪はそれぞれが違う動きをして、みおを襲う。
爪で全てを受け止める。
かなり大きな金属音がする。
Sは嫌そうな顔をして、笑う。
「ゆきちゃんだっけぇ?透明使ってるんだねぇ・・・」
Sは後ろへ離れ一本の木を切る。
足音がする。
透明化したゆきが飛んできたようだ。
「なんだあいつかなりやり手だぞ!」
「えへへ。まぁ、今更気づいても遅いけどね」
Sの爪の形状が変化する。変化した形はまるで、刀のようだった。
黒光りする刃が何本も刀の根元から出ている。
「さぁ、君たち数人対、僕。Sという男が一人だ。君達は勝てるかな?」
「勝てるに決まってんだろ?俺たちナメるな」
「そうだよSさん。私達を舐めてもらっちゃあ困るよ」
ゆきは透明化を解きながら言う。
俺はニヤリと笑い音にならない声で言う。
今度はしっかり聞いてもらえると信じて。
大きく息を吸い、俺は話しだす。
『さぁ、戦争をしよう!六人対、最強の一人と!』