三回目の戦争・・・?
俺は吐き気に襲われながら、目を覚ます。すごく、目眩がする。立ち上がろうとするも、倒れてしまう。
が、それより、殺された記憶はあるが、ほかを全て忘れていることに驚いた。
そして、見たことの無いはずのこの部屋に、不思議と既視感を感じる。そこにも不思議と違和感を感じる。デジャヴュと言うやつだろうか。
俺は見たことのあるような記憶を頼りにして、この部屋を探す。
「たしか、ベッドの下に、トランクがあったような・・・」
そう思い倒れた体を起こして、ベッドの下を覗く。
かなり大きなトランクがひとつ置いてある。
持ち手の部分を引くとすんなり動いた。
茶色がかっていて、ベルトのようなものが何本も付いているような形だ。なんとなく、いいデザインだと思った。しかし、下側には、タイヤがついている。ここだけデザインが悪い。-114514点。
そんな馬鹿なことを考えながら俺は金色に光るジッパーを開け、上部分を開く。
中にはペン。三冊の手帳が入っている。
一つは、Aと書かれた上に白い文字で『記録帳』と書き記されている。もう一つは、白い文字で『A→B 完全版』と書かれている。Bは元々書かれていたものを使っているようだ。最後の一冊は、Cとしか書かれていない。
「なんだ・・・これ。やけに綺麗だな・・・」
手帳は黒く、光を反射している。しおり代わりのオレンジ色の糸が出ている。俺はペンを手に取り、キャップを開け、Cの黒い表紙に『死に戻り
三回目』と書き記す。黒いペンなのに、黒に書くと、白いペンとして使えるなんとも不思議なペンだ。
いつの間にか吐き気もおさまっている。
俺は普通に立ち上がり、軽く汚れを落とす。
顔を上げると青白く光る画面が浮かんでいる。
障れるため、ホログラムというやつとはまた違うようだ。
画面の左上には黒い文字で『10:00』と書かれたまま進まない。
俺はAの手帳を手に取り表紙をめくる。
そこには、色々な考察や、色々なわかったことが書かれている。
時間や、戦争について、人について等。
しかし、人の見た目の特徴を文字だけで書かれるとなんとも分かりづらい。
みのりという少女は、ピンクのツインテールで、能力が、「音」で・・・
なんとも分かりづらいメモの仕方だ。
隣の部屋かなんかから爆発音のようなものが聞こえる。
俺は音がする方へ顔を向ける。
音がしたのは画面の方向で、画面の数字は、新たに数を刻んでいる。『15:46』
さっきの手帳には、『0:00』になると大広間に飛ばされると書いていた。一秒に一ずつ減るとも。しかし、この文字は一秒に一ずつ上がっている。
初めての体験であろう。俺は手帳Aに、メモをし始めた。
ペン先からは黒いインクが出ている。
見た目は、マッキーのような、太く、滲みやすいようなものなのに、書いた感覚。書いた文字はボールペンのように細くかける。
時間が上がっていくことを書き、顔を上げる。
時間は『19:55』あと少しで二十分だ。
そう思った時にはもうなっていた。
俺は赤黒い光に包まれる。咄嗟にペンと手帳Aを拾う。
服装が黒いタンクトップから、赤いタンクトップへ変わり、茶色いズボンは更に濃い茶色へ。
靴は、元々履いていないようだ。それにすら気づいていなかった。
目にかかっていた黒い前髪の色が薄くなる。
一瞬目に痛みを感じるが、なんともない。
俺は、大広間に飛ばされていた。
先程の部屋と似た、白い部屋だ。それを大きくしたような部屋だ。
ここにも、大きな画面が少し上に設置されている。
これは、五秒周期で、人の写真が変わっていくようだ。
遠くで「あぁ、久しぶりだなぁ!ワクワクする」「あぁ、俺もだ!毎年呼ばれるかでドキドキするもんな!」「あぁ・・・まただよ・・・」「のっうりょっく変わったかなぁ?」等と、もう一回体験したかのような話を皆している。結構賑やかだ。
高い位置にある画面を見上げる。
丁度俺の写真に変わった。俺は、赤い髪をしている。相変わらずツリ目で愛想が悪そうな顔だ。能力は、「無し」と書かれている。
しかし、俺は、「死に戻り」だと知っているはずだ。手帳に書いてあった。
俺は、手帳を開く。前回しおり的なので挟んだ箇所から書き始める。
時間が上がる場合は、赤黒い光に包まれ、大広間へ飛ばされる。大広間には赤黒い画面に人が表示される。五秒周期。俺は能力が「無し」と記されている。髪色と服装の変化。
っとこんな感じかな。
みんなが一箇所に集まっている。俺もそこへ向かう。
何やら作戦会議をしているようだ。
「今までのところまでで質問、ありますか?」
参加出来なかった。
遠目に見えるリーダーのような人は、黒髪ロングで、黒目をしていて、綺麗な着物を着ている。しかし、目に光は灯っておらず、かなり不気味な第一印象が刻まれた。これも書いておく。
「では、最後に簡単にまとめます。今回初プレイの少数の方々と、三回目までの方々は、中央付近から攻め、それ以上のかなりの上級者は、横から攻めてください。もちろん味方に迷惑を掛けなければ、どんな戦い方でもいいですよ。それと黒い目の人がいる場合は、黒目のか方が対処してください。かなり特殊な能力者達なので」
俺は手帳に一言一句間違えずに写した。
「では、最後に・・・頑張りましょう!」
全員が敬礼する。俺も遅れて敬礼。
敬礼中に赤黒い光に包まれる。
戦場へ飛ばされる。
いきなり全員走り出す。左や右や、真ん中へ。
俺は言われた通り真ん中の道を進むことにした。
走っても身体が重く感じられ、そこまでスピードがでない。
中央付近に着くとそこはもう戦場と化していた。統率感のない相手と、ある程度統率が取れている味方。明らかにこちらの方が優勢だ。
大体、二三人で一人を倒しているようだ。
全員攻撃ということはなく、防御型と組み、大きなダメージを避けている。
赤黒い光に包まれた人が、大きな赤黒いドラゴンへ変化する。全長、俺の約二十倍ってところだろうか。
隣では巨人に変わる人もいる。俺の約十倍くらいのでかさだ。
『グラアアアアアアアア!』
巨人とドラゴンが叫び、羽を羽ばたかせ、足を大きく踏み出す。
巨人は腕を、武器を振り、人を飛ばしながら殺し、ドラゴンはかなり熱そうな炎を吐いている。これだけで殲滅させることが出来るんじゃないかというくらい。
数分後、紫色の雨が降る。大体俺のいる範囲だ。それはドラゴンの巨体を突き抜け、体を引き裂いていく。どうやら巨人は、その範囲にいないようだ。
逃げられない。そう思い俺はそこに座り込む。
体を痛みが走る。
体が熱い。痛い。苦しい。
それでも生きている。
怪我はかなり痛み、逃げたくなった。しかし逃げたところで変わらない。
俺はこの光景には既視感を覚えなかったが不思議な感じがした。
ピンク色のツインテールで、ピンク色の浴衣を着ている。丈は短くしている。
その子の周りはまるで陽炎のように揺らめいでいた。
何かある。そう感じ、後ろへ跳ぶ。
怪我をした体がかなり軋む。痛い。助けが欲しい。
そう願っても助けなどない。
ピンクツインテは、俺を睨む。しかし、陽炎のようなものが消え、赤髪の女の子に腹を触られ細かく分解されていく。
「あ、やっぱり音だったかー。いやぁ僕も音で良かったよぉ」
「ありがとぅ!でもそのドヤ顔やめろ!」
仲良さそうにしている。赤髪に、一切整えてないボサボサの短髪に、赤目の半袖短パンの女の子と、金髪に、整えた髪型で、少し短めで、かなり大きな灰色のパーカーを着ている。
そういえばと思い黒い手帳を取り出し、メモをとる。
取りきった時に、黒光りする紐みたいなのが飛んできた。
かなり細く、剣を引き伸ばしたような形をしている。
それは俺の右目にあたり、右目の視力をなくす。
黒光りする鉤爪をつけた紫色の髪、目の男の子に腕を差し出される。
頭に、入ってくる痛み。痛い熱い。そんなことをしっかり考えられずに俺の頭は軽くなった。