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能力戦争  作者: 赤羽 千菜
第一次戦争
1/17

戦争の始まり

 俺は目を覚ますと、知らない天井を見つめていた。


「どこ・・・ここ?」


 ドアも、窓もなく、あるのは、よく分からない画面と、光の強い電気だけ。

 俺は画面に手を触れる。


『おはようございます。あなたは、死んだ存在となりました。』


「は?」


 青白く光る画面は淡々と説明をしていく。

 面倒くさい契約書のようにしか見えないので、読み飛ばす。読み飛ばしている時に気になる文字を見た。


『あなたは、『死に戻り』の能力を付与されました。』


 等という能力の説明を書かれた。

 ほかはすべて読み飛ばしだ。

 『同意する』ボタンを押す。いきなり画面が変わる。人の写真が出てきて、その人を触ると、人の情報が出てくる。

 名前、能力、年齢などが出てくる。これで何を知れというのだろうか。


「何してればいいんだ・・・?」


 隣の部屋かなんかから、大きな音がする。何かを破壊している音だ。

 攻撃系の能力者なのだろうか。

 画面には、いつの間にか時間が記載されている。『7:46』46から45,44と一秒ごとに1減る。から、七分三十何秒か後に何かがあるのだろう。

 破壊音や爆発音やよく分からない音が鳴る。その中で俺は何も出来ずにいた。何が何だか理解すら出来ていないのだ。

 『死に戻り』という能力なので、死なないと使えないのだろう。つまり、今は何も出来ない・・・


「死ぬか?」


 そう呟く。なにか傷つけられるものはないかと部屋を探すと、ベッドの下に何かあった。

 大きいものを取り出す。それは、茶色のトランクだった。やけにいいデザインをしている。トランクを開くと、中には、手帳が一冊と、ペンが1本。表紙にはAと書かれている。

 よく分からないが、とにかく考えをまとめていようかと思い、適当に考えを殴り書きしていく。

 能力について、部屋の特徴、画面についての細かいことを書いていく。

 時間は、『1:11』になっている。

 何が起こるのかは分からないが、かなり怖い。ノートの表紙に大きく「記録帳」と書き記す。

 気を引き締める。


「あと少しっ」


 『0:00』になった瞬間、目の前が青白く光る。今までいた部屋と似た部屋に飛ばされた。

 他にも沢山の人が青白い光に包まれ飛ばされてくる。

 さっきの部屋とは違い大きな画面が出されている。操作はできないが、一人五秒程度の速さで詳細が回されている。数字は『10:00』で止まっている。

 皆慣れていなかったり、初対面なのだからか、黙っている。静かな空間で皆が画面を見上げる。

 青白い光に包まれている人がいなくなった辺りで、俺も顔を上げる。『9:47』と記されている。全員が飛ばされて来たら、進み始めるのだろうか。


「みんなぁ!なんでそんなに暗そうにしてるの!元気出そうよォ!」


 誰かの声が響く。


「あたし、みのり!能力は、超音波!簡単に言うと、音で攻撃する能力だよ!」


 全員いきなり話し始める少女に困惑している。

 攻撃系の能力は、日常生活にも役立てられるものが多いのだろう。明らかに声が聞こえないくらいの距離にいる少女の声が近くにいるように聞こえる。かなり肌寒く感じる。ほぼ裸の人や、かなり着込んでいる人などがいる。服は、なんかの能力で、作って渡している人がいるようだ。配っている人がいる。

 飛んでいる人や瞬間移動などをする人がいる。羨ましい能力だ。


「よぉ。君はなんも能力使ってないけど、使わないの?」


 男か女かわからないくらいの人に話しかけられた。


「あぁ、はい。まぁ、私の能力目立たないからですね」


「あぁ...」


 これは(察し)という奴が着くやつだろう。


「えーと。ま、話せた記念に、自己紹介でもし合おう!私は、ゆき!まぁ、皆が名乗る名前は、設定されたものなんだけどね」


 設定なんてされていたのか。道理で名前が思い出せない。もうちょっと読み込んだ方がいいのだろうか。


「ごめん。俺名前のところ読んでないや」


「そっか。なら、私が名前つけてあげる!あだ名みたいになっちゃうけど、黒い髪で、黒い目で、黒い服着ているから、クロで!」


「あだ名みたいやん!」


 思わず突っ込んでしまった。


「アハハ。ごめんね。でも、分かりやすいでしょ?」


「ま、まぁね。名前つけてくれてありがと」


 名前をつけてくれただけかなり嬉しい。

 ゆきが、画面へ顔を向ける。俺もつられて向く。いつの間にか時間が、『1:15』になっている。


「そろそろ・・・だね!戦争かぁ。楽しみだなぁ。ね?クロも思うよね?」


「戦争?何それ?」


「えっ!?まさか・・・読んでないの?」


「うん・・・教えて?」


「簡単に言うと、ココに集まってるみんながチームで、相手は違うチームで、60分間戦うの。あと10秒ちょっとだしこれだけでごめんね」


「大丈夫。ありがと」


 深呼吸をする。画面の先では、時間が、『0:04』となる。

 青白い光に包まれ、飛ばされる。

 味方も飛ばされてくる。味方の周りは青く光っている。これで見分けるようだ。

 ある程度の人が飛ばされた瞬間音が鳴る。真ん中にある大きな球型の建物に数字が書かれる。『59:57』言われた通り六十分間の戦争だ。


「はぁい!みのりだよ!えっと、今、能力「指揮」の人が近くにいて、その人の、命令を伝えるからね!まずは皆!この戦争は、フラッグがやられたらダメだから、守り型の、能力者は、手前に沢山いて!もちろん、前線にも沢山必要。そして、攻撃型は、とにかく攻めて!以上!頑張ろう!」


 能力「指揮」なんて、本当にあるのだろうか。有り得なさそうな能力だ。あの子が頑張っているのだろう。

 フラッグと呼ばれる物の周りに黒く光る壁ができる。


「全員!いくぞぉぉぉ!」


『ぉぉぉぉぉぉ!』


 誰かが叫び、みんながひとつになり叫ぶ。

 空を飛び、炎をあげ、氷が作られ、銃弾や剣やナイフなどの武器の類が、飛び交う。

 全員が走る。早い人や、遅い人や、盾を持ってたり、色々な人がいる。どっちにしろ俺は押され、前線へ出る。

 相手も能力者が沢山いる。地面が割れ、人が落ちていく。後ろを見ると、ドラゴンのような者もいる。

 みのりと名乗る少女の声が響くが、雑音で掻き消される。

 巨人と呼べるような奴や、亜人のような者もいる。

 全員能力で変わっているものだろう。

 俺の右腕に強い衝撃が走る。大きな岩が刺さっている。ついに能力「死に戻り」が試せる。

 そう思うも、岩が消え、回復してくれる人がいる。


「大丈夫!今治すから!」


「ありがと」


 こういう会話以外何も出来ていない。攻めている者の中には、外側から攻めている者もいる。

 俺の足元に、死んだ者が残していった、剣が落ちてきた。こちら側が負けている。

 俺の能力は、一回目だと何も使えない。だから、戦況をしっかり見て、次の人生で使えるようにしなければ。

 そう思うも、前線の人たちが死にいく。あと少しで、俺も死ぬ。そう考えると俺の足は竦み、動かなくなっていた。

 俺は誰かに押される。

 後ろを見るとゆきがいた。口が動いていた。「バイバイ」と言っているようだ。瞬間。足がゆきを踏み潰す。

 俺の中は恐怖と悲しみでいっぱいになった。俺は叫ぶ。

 音にもならない叫びをあげ、上にいる巨人へ向かい、殺しに行く。膝の裏まで届くくらいの距離だ。膝裏を切りつける。巨人は、前のめりに倒れる。膝をつくだけだが、腰まで剣が届く位置まで下がる。

 鍛え上げてきた力でケツに剣を刺し思いっきり上げる。

 背中を抉る。かなり堅い肉体だが、俺の力があれば切れないこともない。流石に上までとは行かないが、かなり怯んでいる。

 だが生きている。首を切ればしぬだろう。

 そう思い、回ろうとすると、巨人の腕が飛んでくる。腕が折れるくらいの痛みが走る。

 だが、我慢出来ないほどではないため、まだ切りつけに行く。

 首を掻っ切る。

 さすがに切り落とせないが、喉を結構切ったため、呼吸困難になっている。

 何回も切りつける。

 やがて巨人は動かなくなる。

 俺は、周りを見る。明らかに押されている。

 音の壁や、黒い壁などに触れ、死んでいくものが多数いる。

 腕に黒光りする鉤爪のようなものを付けているものや、人間ではないものがこちら側は残っている。

 俺みたいに人間のようなものは少ない。

 俺みたいに弱いものは残っていない。

 俺は、陣地へ向かう。

 敵は、同じ人が何千人も攻めて来ている。分身能力だろうか。

 確か100vs100の試合だから、多分そうだろう。

 時間を見る。『37:46』


「ハハッ」


 もう笑うしかなかった。

 何をすれば、勝利に近づける?何をすれば死人を減らせる?何をすれば人を助けられる?何をすれば・・・何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば何をすれば・・・俺は、ゆきを助けられる?

 まずは、ゆき。そっから、助けられる人を増やしたい。

 俺は今出来ることをするしかない。分身が出てくる方向へ向かう。何個かある山の一つの洞窟から、出て来ている。

 多分俺は止められないから、次で、頑張ってもらおう。

 外側は人が少ない。

 そのかわり強い人が集まっている。

 しかし、攻めきれていない。逆に攻められているくらいだ。そういうところを固めるのがいいのだろう。


「あっ、敵チームじゃん!弱そうじゃん!倒そ倒そ!」


 見つかった。赤い髪の少女だ。


「俺は強いが、倒せるのか?」


 剣を構える。


「まぁいいよ。負けるわけないから。この能力で・・・」


「へぇ、なんの能力?」


「そうだね。教えてあげよう!私の能力は、「分割」さ!どんなものでも分割できるのさ!ところで君のは?」


「戦ってる最中に気づきな!」


 脚、腕に力を入れ、思いっきり走る。剣で切りつける。

 その子は一歩歩くだけで、かなり遠くへ離れた。


「今のは、距離を分割したのさ!だから、実際、最初に取りに行くことは出来るけど、つまんないしね。それより!君、速いね!身体能力の向上が能力?」


「そうかもね!」


 切りつけるも離れていく。


「でも、つまらないなぁ・・・もう殺しちゃおうかな?」


 赤髪の少女の能力は、「分割」で、距離を分割できる。たぶん、他人の体も出来るのだろう。


「いいぜぇ?殺しても・・・!」


 俺は彼女から離れるように逃げる。

 少女は俺の結構前に現れる。つまり、細かい距離は測れないということだ。

 距離は約十五メートル。さっきまでの距離は約三十メートル。つまり、少女は毎回約五十メートルを、自分の歩幅分に分割しているのだ。

 次は、クールタイムを見図ろう。

 俺は逆側に走る。


「あれれぇ、逃げるだけぇ?」


 五十メートル近く離れた辺りで飛んでくるであろう場所を切りつける。丁度飛んできた。少女は一歩下がるが、飛ばずに、腹を切られる。


「なんで、分割・・・されなっ!」


 すぐにできない。つまり、クールタイムはある。

 少女はすぐに何歩も下がる。次に切りつけた時には飛んでいた。

 約二秒。

 クールタイムは、二、三秒という所だろうか。

 飛んだ後、二秒近く後に飛んでくるため、多分あっている。

 俺は折れた腕で砂を拾う。

 また切りつける。手のひらに当たった瞬間に剣が崩れる。


「ぐぅっ!」


 手のひらを自分へ向けてくる。何やら痛みを耐えているようだ。

 手のひらからの分割は、体力を使う。もしくは、クールタイムなしで撃つと体力を使う。と考えるのがいいだろう。

 手のひらへ向け、砂を投げる。

 砂は消えていき、少女は叫ぶ。


「クソがァァァァァっ!」


 俺は少女の腹を思いっきり殴る。

 少女はものすごく軽い。少女は、俺に飛ばされる。

 動かない。気絶したのだろう。


「案外俺も戦えるな。」


 少女の身体の様子を見る。ボロボロなのは主に腕だ。

 クールタイム無しに分割を使うと、使った場所が痛むのだろう。じゃないと、不便すぎる能力だ。

 切られたはずの箇所はあまり傷を負っていない。痛みや、怪我の分割をしたのだろう。

 俺は遠くに一人の人を見つけた。体の周りが赤く光っているため、敵なのは間違いない。

 その人は俺が瞬きをした瞬間に目の前に飛んできていた。


「うっ!」


 強い衝撃が走る。ガードした腕からは血が大量に出てきている。

 横腹が爆発した。


「・・・っ!」


 耳が聞こえなくなった。モスキート音が鳴り響く。

 世界が反転する。

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