『コーンポタージュ☆逆!』
誰もいない教室、シャープペンシルのノートを引っ掻き、叩く音だけが支配する。
疲れた、手を止める。
どれぐらい手を止めていただろうか、耳鳴りがし出した。ここは静かだ、寒い。
蛍光灯の青白い光も寒々しい。
冬の寒さを今更思い出したのか身体が身震いする。
どうしようか、もう帰ろうか?
すると遠くから足音が聞こえてくる。
反射的に勉強を再開する。
足音は近づいてくる。隣の教室だろうか?
ドアをゆっくり開ける音がする。この教室だった。
反射的に振り返りそうになるが、音を立てないようにした相手の気遣いに報いるために振り返らない。
「せ〜んぱいっ!」
甘ったるい声とともに俺の視界が塞がれた。
どうやら俺の気遣いは不要だったようだ、損をしてしまった。
「だ〜れだ?」
「知らん」
「ガーン、酷いですよぉ。かわいいかわいい後輩ちゃんが勉強を頑張っている先輩を労ってあげようと思って来てあげたのにぃ〜」
こいつは全く変わってないな。まあたかだか数ヶ月じゃ変わらんか。
「もういい時間だし、帰るか」
立ち上がって机の上ものを片付けにかかる。
「あああっ! ちょっと待ってください先輩っ」
大げさに声をあげる後輩。片付け始めようってのになんなんだ。少しは待てないのだろうか……
「どうし、た……?」
振り返るといつもおちゃらけた後輩がひどく真面目な顔をしていた。
思わず唾を飲む。
意を決したように後輩の口が開く。
「えっと、その、先輩っ」
心臓が跳ねる。
「おつかれさまです」
そう言って彼女が差し出したのは黄色い缶。
俺は一気に弛緩した、が、
「……おつかれさまのコーンポタージュ」
恥ずかしげに言う彼女のせいで身体が熱くなってしまった。
「お、おう、サンキュな……」
おかげでこっちまで恥ずかしい。
「オラ、駅まで送ってってやるよ」
片付けを終えた俺は恥ずかしさを誤魔化すかのように彼女の手を取って歩きだす。
「先輩っ、電気電気! それと私の下駄箱は向こうです」
そんな俺はとてもかっこ悪かった。
外は寒く、羞恥で火照った身体はすぐに冷えた。
「せ、先輩……、その、寒いので手、さっきみたいに繋いで良いですか?」
「お、おう」
また火照ってしまったので意味はなかった。
彼女の左手はコーンポタージュのあの黄色い缶よりも温かく、俺の身体を温めてくれた。
書いちゃった(ノ≧ڡ≦)てへぺろ
あとは裏と対偶だねー