第1話 説明と意外
目を開けるとそこはまるで海外だった。日差 しが目を少し刺激する快晴だが、今はそんなことを考えている余裕はなかった。
「は、はは、何だよこれ、ここは一体どこなんだよぉー!!」
トラックに轢かれそうだったのに目閉じて開けたらワープなんて笑うしかなかった。あまりにも突然のことに理解が追いつかなかったが、時間と共に冷静さは取り戻していく。
どうやら鞄は失くしてしまったようでポケットの中も何も入っておらず、学生服の無一文状態になっているた。
「誰か人いないのかな、ここがどこの国か聞きたいんだけど、海外の言葉はあんま分からないからなぁ」
とりあえず周りを見渡していると
「ねぇ、君そこで何してるのかな?
「うぉわ!」
後ろからの突然の可愛げな女の子の声に反射的に振り向く
「ここは魔物が少ないからいいけど、武器も持たず大丈夫なの?」
その見た目は声と同じで可愛らしい姿をしており、女騎士のような姿で髪は首元あたりまで伸びていて銀髪、サファイアのような深く綺麗な目をしており腰の左には剣が携えてあった。
「いやなんか、気がついたらここにいて俺も分からないんだ、ここってどこの国なの?」
魔物って言葉も気になるが今はここがどこかが最重要だ。
「ここ?ここはディファレントですよ?」
彼女は何をいってるんだと言わんばかりの顔で答えられた。
それにしてもディファレントなんて国や地域なんて、きいたことないぞ。
今自分の中で信じがたい可能性が頭のどこかをよぎる。
「ディファレント、ふ、ふーんそういえば君さっき魔物とかいってたけど、本当にいるの?」
「うーん、この辺ではあまり見かけませんが、ここにずっといると出会う可能性があるので、あの街に向かいながら話をしましょうか」
彼女が指差しす方向には確かに大きな街がある、が。
なんで塀に囲まれてるんだ?それに街の見た目も何世紀も前にありそうな雰囲気だし。
俺の心の小さな確信は次第に大きくなっていく。
「ボーっとして大丈夫ですか?ほら、早く行きますよ!」
「え、あぁ、はい」
気づけば彼女は少し離れた場所にいて俺が追いつくのは待ってくれていた。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してて」
歩きながら、簡単な言い訳で取り繕う。
「そういえば、まだ君の名前きいてなかったね。あ、俺の名前は神成 遥樹で学生だ」
「すいません、自己紹介がまだでしたね。私の名前はアルイラスト=ラルカ、それにしても学生なんてジョブきいたことないですが、私は見ての通り騎士です」
そう言った時の顔はとても誇らしげ、というよりも何かに憧れているようだった。さらに言えば騎士ってもっと硬いイメージだけど、これじゃ騎士のコスプレした女の子みたいだな。
それに…
「やっぱりここって俺の知ってる世界じゃないみたいだ」
小さな声で呟く。
もうわかりきっていたことだ。心も頭も異世界ということに疑問を持ってない自分がいるのだから。
「なんかいいましたか?」
「あ、いや何でもないよ、別に学生はジョブじゃないよってことと、ジョブって何があるのかなって思ってさ」
「それならもうすぐ街に着くので…ほら、あそこ」
考えてる間に街の近くまで来ていた。大きな出入り口からすでに街の賑やかさが見て取れる。
「おー、人がすごいいるな」
「この街バウシーは様々な人種や職業が集まるところですから」
この街はバウシーっていうのか、さっきこの子がいってたけど、少し見渡すだけでもケモナーっぽい子とかいろんな人がいて、賑やかさでいえばまるで東京みたいなところだな。
「さぁ、早くワーカーに行きましょう」
ラルカは俺の前を歩き案内してくれるようだ。
多分ワーカーってところがジョブを決めるとこなんだな。
それにして何になろうかな、やっぱかっいい竜騎士、それともすごい魔法が使える魔法使い、いやここは頭のきれる戦略家でもいいな…
そんなことばかり考えながらワーカーへ辿り着く。
両開きタイプのドアを開けると、中はまるで何世代も前の居酒屋だった。
「ヘイいらっしゃい!あんたにあった仕事与えるぜ」
筋肉すごめのオヤジの声はきいてるこっちが暑くなるようだ。
とりあえずバーのような、机を挟んだオヤジの前の席に腰かけた。
「ここなら君にあったジョブを自動で提示してくれるから、その中で自分がなりたいものを選んでね、じゃあ私は外で待ってるから楽しみにしてるね」
そういって彼女は店を出て行く。
この緊張の弾む心はまるで少年の頃の気持ちを思い出させる。
俺に合ったジョブがかっこいいものでありますように。
「アンタ…」
オヤジが口を開く。
「すでにジョブ獲得してるぜ」
「は?」
いやいやいや、そんなはずないだろ!俺はさっきこの世界に来たばっかなんだぞ?そもそも転移する前に神様とかとやりとりぐらいあるのが転移もののセオリーだろ!
「はぁ〜あ、せめてゲームみたいに『確認』とかできたらなぁ…」
首をガクッとし、まさに落ち込んだ状態だった。
「まぁいいや、俺は平民として暮らそうかな…て、うぉなんだ何だ?」
気を取り直そうと立ち上がるとオヤジの頭の上に長方形が浮いていた。
見ると何かかいてあるようだ。
「もしかしてオヤジの名前ってオスマン・ディオス?」
「あっ?兄ちゃんなで俺の名前知ってんだ、誰かからきいたのか?」
ホントにオヤジの名前だったのか、他にもいろんなことがかいてあるが、今はいいや、とりあえずこれはオヤジのステータスってことか。
「あー、いや何となくそうかなーと思っただけで、それよりさ俺の頭に何か見える?」
「頭の上、て何もねぇぞ、どうしたんだいきなり」
どうやらオヤジには見えてないようだ。
「いや、ならいいんだありがとオヤジ、それじゃ」
逃げるように店を出て行く。
「あ、ハルキどうだった…て、ちょっとどこ行くの!」
ラルカの制止を振り切り俺は人気のない街の裏道に駆け込んだ。
「よし、ここなら誰もこないだろうし、誰かに見られずにいろんなことが試せそうだしな」
なぜ急にステータス表示がされたのか、さっきのことを思い出して見る。
多分何かの言葉に反応してると思うんだが、おそらく『確認』って言葉だろうかな、ゲームとかでもよくあるコマンドだしな。
だが今気になるのは俺自身のステータスだ。
「それじゃ、いくぜ『俺自身のステータスの確認』」
すると、俺の目の前にウィンドウが現れる。
「なになに、カミナ・ハルキ年齢17歳って見てくと俺の個人情報だらけだな」
ポリシーもへったくれもないなと思い、手を伸ばして見ると触れるようで下の方へと画面を動かしいくと。
「お、あった俺のジョブは…GM…ゲームマスター…ゲームマスター!」
一瞬思考が止まった。
ゲームマスターってあのゲーム内とかのまるで神のようなあれか、それが俺!
驚きしかなかった自分なんかがそんな能力を手に入れていたなんて。
「じゃ俺は神なのか、この世界で最強チートものじゃないか!」
もう、あんなことやそんなこと考えていると。
「あっ、やっと見つけた!もうこんなとこまで来て、探すの大変だったんですから」
「ふっふっふっ、ラルカちゃんどうやら僕は神になったみたいだ、その剣で俺を斬ってくれないか」
もう調子乗りまくりだった。
「いいんですか痛いですよ?」
「ふっ、今の俺にそんな攻撃効かないのさ、ほらカモーン」
片手を前に出し煽るように手の甲を向けクイクイっと動かす。
途端ピッと、手の甲にから何やら熱い感覚が走る。
まさかと思い手を180度回してみると。
「いっっってぇ!」
「だからいったのに」
なぜだゲームマスターということは無敵ということではないのか!
「そもそも急にどうしたの、まさかそういう職種についたとか?」
「ちょっと違うけど、まぁそんなところかな」
「あの…」
ラルカが何かいいかけたその時。
「おうおうそこのカップルさんよ、邪魔して悪いがあり金全部置いていってもらうぜ」
「痛いめあいたくなかったら早く逃げたほうがいいぜ」
すごく雑魚キャラっぽそうな輩A、Bが現れる。
「あっそうだ、君のついた職種でこの二人やっつけてみてくださいよ、いざとなれば私が助けますから」
そういわれ前には出るが。
これどうすればいいんだ俺能力把握してないぞ。とりあえずなんか構えだけでもとっておこっと。
そして左を前にしてボクサーのようなファイティングポーズをとってみる。
「何だこいつ?変なポーズとりやがって、そんなに痛いめにあいたいのなら仕方ねぇ」
腕や首を動かしゴキゴキと鳴らしながら近き、目の前で腕を大きく振りかぶる。
「オラァ!」
降りかかる拳を俺は俊敏な動きで回避。
「ッ!」
などできるはずもなく、喧嘩経験のない俺は直撃を受け地面に倒れこむ。
「何だこいつ殴ったら一発で倒れやがったぞ」
俺の無様な姿を見て二人は大笑いしていた。そして再び、ゆっくりと近づいてくる。
嘘だろ!マジのパンチってこんな痛いもんなのかよ。どうする、逃げたいけど足はまともに動いてくれそうにないぞ。
そう考えている間に男は目の前に立っており、俺の学生服の胸倉を掴み俺の体を起こさせる。そして今一度腕を振りかぶる。
やばい、また殴られる。頼むから止まってくれ、頼む!
心の中で何度も叫ぶ。その思いは極限まで達してついには…
「頼む、『止まれ』!」
その思いは口から吐き出る。
すると俺の目の前で拳が止まる。
「な、何だ?」
最初はの俺のこわがる顔を楽しむためなのかとおもったが、男の方も何が起きたのか理解できてない様子だ。
「テメェ、何しやがった。体が動かねぇぞ!」
「おいおい、何やってんだよ、てあれ?俺の体も動かねぇ」
二人ともなぜか動けなくなっていた。
もしかして俺の『止まれ』って言葉に反応したのか?
そう思いながら、服を掴んでいる手を振りほどいて、男に向かって殴りかかる。
「なんかわからんけど、これはさっきのお返しだ!」
容赦無く顔面の真ん中を射抜くと、男は受け身も取ることなく地面に叩きつけられた。
どうやら今ので頭を打ったのか気を失っているようだ。
「な、何だお前近づくな!くっ、何で体が動かないんだ!まさか、拘束魔法か!」
恐怖している顔に俺は手をゆっくりと伸ばす。男はその恐怖からか目を閉じる。
「拘束魔法なんて凄いものじゃないよ」
俺はその顔面めがけて。
「いっ!…?」
軽くデコピンを繰り出す。
「あんたは別に俺に何もしてないし、動けるようになったらそこの人連れていってあげてね」
口も動かないためか返事はなかった
「どうだラルカ、俺だって意外といけるんだぜ」
ラルカは黙って俺の顔を見ている。何か言いたそうな顔だった。
「あの…わ、私と」
いつもの明るい感じと違い何か恥ずかしそうだった。
もしかしてこれは告白パターンか。だとしたら意外だ、まだここに来てまだ数時間しか経ってないのに。
「私とパーティ組んでください!」
「へ?えぇー!」
それはまさに、意外な告白だった。