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(仮)

作者: ゆきのり

「そうだ!母校に挨拶しにいこう!」そう言いだしたのはユキヒロだった。

私とユキヒロは同じ職場で働いている。

私は、その職場の過酷な環境に耐えられず、鬱病と診断され、休職している。

そんな俺を気遣ってか、はたまた面白がってか分からないが、そんな提案をしてきたのだ。

私も自宅療養とはいえど、ずっと籠っているのも宜しくないな。挨拶がてら散策でも楽しんでみるかなと思い腰を上げ、出掛けることにした。


ユキヒロは鬱病の私とは対照的で、朝5時半の始発で出かけようという。


私は何もそんな早くから…と思いつつも、母校は観光地に建っているから、朝早くだと人のいない所をゆっくり見て回れるよな。案外悪くない提案だと思い直し、翌朝4時半に目覚めた。


そう言えば、待ち合わせの場所と詳しい時間を決めていなかったな。とLINEで連絡してみるとユキヒロから返ってきた答えは、「8時に出るよ!」だった。


それならば私もと、8時に出ることにした。

出てみたものの、まだ早いかな?とスタバに立ち寄り、ユキヒロに「スタバで休憩中」と送ってみた。


「では、スタバで合流しよう」と返事が返ってきたものの、ユキヒロは一向に姿を見せない。

「あいつ、8時に出ていないな…」

ユキヒロが、約束通り8時に出ていれば30〜40分で着くはずなのだが、一時間以上の時間が経過している。


学生時代から、そうだったがユキヒロは女との約束には遅れて来ない。

しかし、相手が野郎となると途端に時間にルーズになる。


待てど暮らせど、ユキヒロはやって来ない。


9時を過ぎて、しびれを切らした私はユキヒロに

「待ってられんのでもう出るわ!」

とLINEした。


直ぐに返信が来た。

「今、橋の上におるんやけど?」


橋の上だと?俺のいたスタバは駅直結。

改札を出て直ぐ右で、誰でも分かるようにデカデカと案内も出ている。


なのにそれをスルーして地上に出たと言うのだから呆れたものだ。


しかも、現時刻は9時半になっていた。




予定より遅れたが私とユキヒロは嵐山に到着した。


久しぶりの嵐山は一部店舗の入れ替わりはあるものの、在学中とそんなに変わりはなかった。


あまりにも暑いものだから、中国人観光客に混ざってジェラートを購入するも直ぐに溶け始める。


ジェラートを地面に落としてなるものか!と急いでかきこんだ。


それでも、あつさはやわらぐことはなく、私は「暑い、しかし暑いなあ」と連呼していた。


それを聞いていたユキヒロは

「うめさん、この先の嵐電嵐山の駅に夏の間だけ冷たい飲み物がうられているよ。知ってる?」と言い出した。


私は「冷たい飲み物」と聞き、横目で見ていた、元コロッケ屋がおにぎり屋に変わっていることに触れることなく、先を急いだ。


駅に到着するとユキヒロの言っていた飲み物がビールであることが判明した。


「さすがに朝からビールは…」と躊躇していると、ユキヒロが「何言ってんのさ、今飲まないでいつ飲むのさ。うめさん、帰宅したら家の用事で運転するやろ?今、飲んでおけばアルコールは六時間ほどで抜けるから夕方には運転できるよ!」


気がつくと誘惑に負けた私は黒ビールに喉を鳴らしていた。


汗をかきながら母校に到着。

仕事を紹介してくれた先生に

「こんなことになって申し訳ない」と報告しようとした時、ユキヒロは「先生、この人酒飲んで来ましたよ!」と言い出した。


先生は「飲酒した人を入れてはいけないってきそくがあるんですけど!!もう、やめて〜」


「やだなぁ先生、冗談ですよ!」

と誤魔化そうとしたのだが、ユキヒロは空気が読めず、「え!飲んでたやん黒ビール」


「こいつめ…」



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